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2015年11月24日 国営企業・ファンドを活用した公共投資が鍵

第105回〜ASEAN

 三井住友アセットマネジメント バランスファンド運用グループ シニアエコノミスト 佐野 鉄司 氏


――米国の年内利上げ観測が台頭しているなか、ASAEN諸国の通貨は…。

佐野 通貨が下落している国で、アジアで最も懸念されている通貨はやはりマレーシア・リンギットだ。リンギットの下落要因は大きく分けて3つであるが、その一つは原油価格とのリンクだ。産油国であるが故どうしても原油価格下落とリンギット下落は切り離せない。二つ目の問題が政治であり、ナジブ首相の政府系投資会社1MDBの巨額不正疑惑問題だ。この問題に関しては、マレーシア国内ではすでに熱は通り過ぎたようだが、外国人投資家、特に先進・西側諸国の投資家は依然として厳しい見方をしている。また、政治問題に関係して国民によるキャピタルフライトが起きやすい。そして3つ目が短期の対外債務残高で、外貨準備高とほぼ同額と高水準であることが嫌気されている。外国人投資家の目からすれば、アジア危機当時にマレーシアはIMFに駆け込まずに資本規制を敷いたが、これは市場参加者から「やるべき改革をやっていない」との見方がされている。こういった意味では、タイ・バーツやインドネシア・ルピア、韓国・ウォンはかつて「IMFが入り、やるべき改革を実行した」という実績があり、確かに同3国の対外債務残高は昔に比べて激減している。3点のマイナス要素があるが、米国利上げに絡んで不透明要因となるのは、短期の対外債務残高だろう。短期でロールオーバーしていた取引に関して、仮にロールオーバーできなくなり、決済することになれば、一気にリンギット安が進行する可能性がある。短期の対外債務残高について、現地では問題ないという見方もある一方、取引の詳細が不明であるため、外国人投資家の間では、警戒的なイメージがマレーシア・リンギットに根付きやすいのではないか。

――ペソが6年ぶりの安値を付けたが…。

佐野 フィリピン・ペソに関しては、中央銀行は黙認している。現在、アジア各国の中央銀行で自国通貨安を警戒している国は、やはりマレーシアとインドネシアの2カ国。同2カ国が考えているのは、通貨安になると、キャピタルフライトが起りやすくなり、景気センチメントに悪影響を与えるという恐怖感がある。だからこそ、同2カ国の中銀は8月の通貨安の局面で積極的な自国通貨買い介入を実施した。通常、外貨準備高は有限であるため通貨買い介入、マーケットとけんかすることは控えるはずだが、この2カ国にとって通貨の安定は非常に重要な課題であるため、外為買い介入をしてでも通貨安を止めたいといった考え方だ。一方、フィリピンは短期の対外債務残高が少ないため、格付機関は管理が出来ているということで、次々と投資適格級に引き上げた。こういった国の場合、資金がどんどん出ていくということは考え難い。また、仮にペソが安くなっても、インフレが異常に低い上に、原油市況も低迷していることから、輸入インフレに伴う国内インフレへの影響は限定的だと考えている。インフレが異常に低いのは、電力料金の引き下げを行ったことが大きい。フィリピンは島嶼国家で規模の経済性も無いため、電力料金は日本と同等の高水準となっている。また、電力会社マニラ電力(メラルコ)は施設のリノベーション費用の調達のため、電力料金を引き上げる方針を掲げていたが、電力料金は政府によって管理されているため、なかなか引き上げられないでいる。そんな状況だが、来年の5月に大統領選挙を控えており、国民の支持をえるために電力料金の引き上げはまだ行われない可能性が高く、また原油安が続いている現状を考えると、来年いっぱいはCPIがインフレターゲットを超える心配はない。

――各国中央銀行の対応は…。

佐野 マレーシアとインドネシアの中銀は通貨安への警戒感が強く、まず自国通貨の安定を優先するだろう。必要であれば、引き続き自国通貨買い介入も辞さないだろう。マレーシア中銀は現時点では金融政策を変更する必要性を認識していない。一方、10月以降、マレーシアリンギットと比較するとインドネシアルピアは比較的安定しており、また、インドネシアのインフレ率は年内にターゲットに収まる可能性が高いことから、インドネシア中銀がルピア安定に自信を持てば、利下げを含めた金融緩和を進展させるだろう。フィリピン中央銀行はこれまで、ペソ安によるインフレ上振れリスクを言い続けているが、実際にはインフレ上振れリスクは限定的にとどまりそうだ。また、7-9月にペソ安が進展したにもかかわらず、同期間にフィリピンの外貨準備高が横ばい圏で推移したことから、積極的なペソ買い介入の状況証拠はない。そのため、ペソ安に対する警戒感はフィリピンやマレーシアほどには強くない。仮に米国が利上げし、ペソ安が進行したとしても利上げをしてでもペソ安を止めるという事態にはならないだろう。同様なことはインド準備銀行にも当てはまるだろう。インドルピーの下落は一般論としてはインフレ懸念をもたらすが、実際のインフレ率が準備銀行の想定通りに推移し、ターゲット内に収まるようであれば、準備銀行は金融緩和姿勢を続け、追加利下げも行いうるだろう。他方、“金融政策は内需の刺激のためよりは、輸出促進のためにある”と割り切っているのがタイと韓国だ。タイ中央銀行は前回の金融政策決定会合で「バーツ安が輸出競争力の向上に繋がっている」と明言した。また、韓国中央銀行も「金融政策と言うのは為替を通じて輸出に働きかけることができる」とした。タイ・バーツも韓国・ウォンもリンギット、ルピア、円と比較をすると割高感が出ていた通貨であり、中銀は年央まで輸出競争力の面で劣勢を強いられていたとの認識を持っていた。両中銀は自国通貨安を景気刺激策の一環だと考えている節があり、通貨安はむしろ歓迎といったようにも見受けられる。もし金融政策で次のアクションをとるとしたら、米国との金利差によって通貨安が進展する局面を狙うだろう。時期としては、中国が来年もう一度下降局面に入って、自国景気の下振れが確認できた時に実行する可能性が高い。。

――各国の今後は…。

佐野 7~9月の金融ショックを受け、各国政府・中央銀行が感じていることは中国ショックの再来であり、来るべき時に備える必要があると同時にズルズルと景気回復が遅れることは避けたいと考えている。このなか、景気に対して直接の刺激策となるのは利下げよりはむしろ公共投資だと彼らは認識している。公共投資はセットアップに時間がかかると言われていることから、今のうちに将来の事業案件も前倒しして進めようとの判断をし始めているようだ。また、財政規律が厳しい国では、政府予算に裏付けられた歳出には上限がある。しかし、国営企業や国営ファンドを有効活用すれば、政府予算の不足分を埋めることが可能になる。場合によっては国営企業などの2017年度の投資計画を2016年度に前倒し執行することもあるだろう。ASEAN各国は政府予算だけでなく、それ以外の幅が広く、公共投資に占める国営企業などの割合はタイでおよそ5割、マレーシアに至っては7割弱に達している。中国ショックや米国の利上げといった外的要因に対し、国営企業なども有効活用した公共投資が景気回復のカギとなる。

 

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