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2013年06月24日 ブル島の金採掘

 インドネシア東部にあるマルク州の州都アンボンから、フェリーで3時間、西に進むと、ブル島に到着する。初めて訪れたのは、2005年、マルク州での紛 争 直後のまだ黒焦げの住居が残っている時期であった。面積は約9500平方キロメートル、豊かな漁場があり、サゴ椰子やココナッツ、丁子の木やカユプティの 薬草が生い茂る、自然とともに過ごす長閑な村々が散在していた。このブル島は、スハルト政権中「監獄島」として知られていた。1965年以降、スハルト政 権による共産党員への徹底的な弾圧の中で、共産党員でなくても同調者も含め大量の政治犯を生み出し、裁判もなくブル島に送られた。その数は1万人以上に上 り、その中には、文学者のプラムディア・アナンタ・トゥル氏も送られ、そこで生まれた大作『人間の大地』4部作は有名である。スハルト政権の人権侵害が国 際世論の非難を浴び、政治犯は徐々に釈放され、最終的に1979年に監獄は廃止された。ブル島は、現在10万人程の人口であるが、土着の人々は人口の三分 の一程度で、残りは国策であるトランスイミグラシ政策や自発的にやってきた移民が占める。また、ブル島では政府主導のコメ作りが進められ、移民たちが従事 している。1999年1月から始まったマルク州でのいわゆる宗教紛争の火種も、ブル島まで飛び火し、いくつかの町が焼き討ちとなった。紛争後は、再び平穏 な島に戻りつつあったのだが、一変して2011年ごろからゴールドラッシュで大混乱が起きている。
 ブル島にとってゴールドラッシュは喜ばしい ニュースになっていない。カユプティの薬草が生い茂っていたボタック山近辺は、少し掘れば金が埋まっているという話を聞きつけた人たちが大量に押しかけて きた。宿泊施設がない島であるため、集まってきた大量の人たちが野宿をし、付近は異様な風景が広がっているという。また、金をめぐって殺し合いが起こり、 治安の悪化が著しい。ブル島の住民も、一攫千金を目指し農作業をせず金採掘に専念し、コメの生産が激減したとの話も聞いた。また、子供たちも学校を休んで 金採掘に従事させている例が多いという。さらに、金を精錬するための水銀を垂れ流し、環境上も大きな問題となっている。ブル島の金採掘は、現在、不法採掘 という位置付けであるため無法地帯と化しており、最近になって「早急に法の下に管理すべきだ」との意見が出されはじめた。2009年に制定された新鉱業法 では、新規の鉱業事業許可(ブル島の場合は、小規模事業者用市民鉱業許可であろう)を取るためには、中央政府がまず鉱業区域を定めなければならず、この区 域指定がブル島の場合未だ行われていないのが現状である。他地域でも新規の鉱業区域指定は進んでいない。インドネシアは資源が豊富であるため、ブル島のよ うなことはどこにでも起こり得る。治安のためにも、環境のためにも、また、今後日本が新規鉱業事業参入を行うためにも、政府に対し速やかな対応を要請して いくべきであろう。

堀場明子(Current Asia)

 

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