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2014年02月10日 ウー・ベイン橋と文化財保護

  湖の対岸に向かって、古いチーク柱を連ねて造った木造橋が伸びている。乾季のただ中であるだけに、湖の水位は大きく下がり、地表に直接立てられた柱の基部 は露わになっている。その側に下り立って、雨季には湖底となるはずの地表から空を見上げると、古びて所々が風化したチーク柱の巨大さに驚かされる。柱を2 本、左右に立てて、その間に床を架けただけの造りの橋である。これ以上ないほどに素朴な造りだが、そのためか、周囲の牧歌的な風景とよく調和して、来訪者 を見飽きさせない景観を織りなしている。

 とりわけ、夕焼け空にこの橋はよく映える。リズミカルに連続する柱の上に往来する人々の姿。それ らが夕焼けに照らされてシルエットだけとなった様は、写真愛好家の格好のモチーフである。最近、日没時になると、彼らを乗せた手漕ぎボートが、湖上に大量 に密集するようになった。
 ミャンマー第二の都市マンダレーの南郊に位置するウー・ベイン橋は、このような独特な景観が好評を呼び、多くの観光客 を呼び寄せるスポットになりつつある。タウンタマン湖上を全長1キロ以上にわたって延びるこの橋は、総数1086本のチーク柱から成る。建設されたのは 1850年代のことで、およそ160年の歴史を誇る。建設を担当したベインという人物に因んで、ウー・ベイン橋と呼ばれている。
 近年、ミャン マーへの観光旅行客が急増するのに合わせて、この橋の周辺環境整備も続けられている。タウンタマン湖の沿岸には、ウー・ベイン橋へアクセスするための車道 が建設され、橋のたもとには観光客用のトイレが設置された。自動車を駐車できるスペースも少しずつ増加し、連日、大勢の観光客でにぎわい始めている。
  しかし、そのような観光地としての活況とは裏腹に、橋そのものの状態には不安が残る。柱の老朽化に伴い、耐久性の不足が生じているためだ。ひっきりなしに 訪れる観光客の一団とともに橋上を歩いていると、まるで吊り橋上にいるかのように、激しい揺れ方をすることがある。床に穴が開いていたり、傾きがあるのも 珍しいことではない。地表から橋を眺めると、一部の柱の下部が細くなってしまっている様子も容易に確認できる。連日、大量の人が通行することは、橋の構造 に大きなストレスを加えていることだろう。
 歴史的文化財を呼び水とするミャンマーの観光地は、観光開発と文化財保護をどのように両立させるか、そろそろ真剣に検討しなければならない時期に差し掛かっている。早急な対策を施さなければ、急増する観光客に対応しきれず、損なわれる文化財が現れ出すだろう。
  ウー・ベイン橋の上から眺める夕景は、時にこの世のものとは思えないほどに美しい。しかし一方で、湖上に並ぶカメラの砲列を目にすると、かつてないほど大 勢の人がこの橋に押し寄せているという現実を痛感させられる。果たして、ミャンマーの観光開発は、適切な道を見いだせるだろうか。
上智大学大学院 石川和雅

 

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