メガバンク、国際的な統合へ…

メガバンク、国際的な統合へ…

元メリルリンチ日本証券 副会長 今井 光 氏



――金融再生後の、日本のメガバンクの方向性は…。

今井 不良債権処理が一応終わり、金融危機は回避され景気も底を打った。今後、メガバンクがどういう風に業務転換、戦略展開していくのかが日本の金融の一番の課題だ。もちろん旧来業務は、懸念される金利高になっても、価格転嫁をしていければ利益は順調に伸びていくだろう。しかし、例えば、合併して大型化する三菱UFJ銀行が、総資産一八〇兆円をもっと効率よく、最適な利益を生み出すことが出来る体制にあるかというと、まだ、これからだ。こういったメガバンクの成長モデルは、今後、日本国内だけでは描けない。しかも、郵政の二一〇兆円というメガ金融機関が参入するとなると、日本国内でメガバンクが成長していくという図は、より描きにくくなり、それ以外のマーケットを含めた形の戦略展開をしていくという視点、観点が必要になる。

――国内で成長モデルが描けない理由は…。

今井 成長できるとすれば、今まで大手銀行があまり重点を置いていなかったリテール展開だろうが、リテールにシフトするには、まだ体制が整っていない。また、例えば住宅ローンに関しては、各社がしのぎを削って競争しており、他社の資産を奪い取る以外で今後大きく伸びるにはかなり限界がある。そこで今後は、リスクを取りに行くようなハイリスク、ハイリターンのビジネスに転化していけるのか、ということになる。

――一生懸命、消費者金融などを傘下に治めてはいるものの、巨額な資産の有効活用はなかなか難しい…。

今井 買収などで消費者金融を取り込んでいくか、あるいは、レピュテーション(世評)の問題があって、参入にちゅうちょしている商工ローンを銀行の中にあるモデルに取り込んでいけるか。いろいろやってはいるが全体の規模に比べてまだまだ実験的な動きだ。これを全体の三〜四割にするには、もっとドラスティックなモデルチェンジが必要だ。また、大量の預金と投信とを相殺してバランスから大幅に落とすのも難しい。そうなると、今、有効に活用されていない資産は、海外に求めざるを得なくなる。

――今後、行財政改革で国債が減ると、さらに海外へ向かざるを得ない…。

今井 現実にはこの十五年、日本の銀行がリストラをしていく中で海外の資産を売ってしまった。それを売って利益が出たということは、再生のための源泉となったということであり、海外投資は必ずしも失敗だから撤退したわけではないということだ。今まで自粛モードだった海外投資が、そろそろまた、買収モード、国際展開モードに切り替わる可能性を見せ始めている。一部はヘッジファンドを通して、リスクの高い市場性商品に投資するというやり方もあるが、既に世界的に相当資金のだぶつきがあるため、潜在的リスクも高まっている。このため、今後の海外展開では、リアルな事業を買いに行くという点で、メガバンク同士の国際的な再編統合が考えられる。

――海外に投融資するには、やはり海外のネットワークが必要になる…。

今井 日本のメガバンクが海外の支店を通して、個々の企業に融資をこれから拡大していくことには規模的に限界がある。すでに欧州と米国の間では金融機関のM&Aが相当進んでいる。日本は金融危機の対応に追われていたのでむしろ遅れた。ただ、これからM&Aで展開する場合は気をつけないと一番高値をつかむような可能性もある。

――どの辺りの国との合併が考えられるのか?

今井 資産ではなく、会社を買収していくというスタイルであれば、日本の場合は欧米しかないと思う。アジアについては、日本企業のアジア展開における資金供給というところで国際展開を進めてきたが、企業を買収することになると、きちんとした法制や会計体系の整備があるところでないと非常にリスクが高くなる。そして、それに応じた法制、例えば、ストック・フォー・ストックといったような、日本企業が株で海外の会社を買えるような法制の整備が必要となってくる。

――国内的にリテールの競争が激しくなる一方で、欧米の銀行との合併が予想される…。

今井 リテール業務というのは、それぞれの国の文化の問題があり、海外で日本型のモデルを展開しようと思っても難しい。国内でリテール、海外では法人ビジネスといった展開が予想される中、商業銀行が法人金融部門をいわゆる投資銀行と称して変換しようという動きも出てきた。しかし、これはかなり難しい。自力で投資銀行に変換出来るといっても、商業銀行と海外の投資銀行とのカルチャーの違いがあり、日本の商業銀行が提供できるものは限界的なサービスになるだろう。

――その理由は?

今井 そもそも、銀行が企業に対して債権者という立場をとっている時に、投資銀行業務というのは、顧客や株主の利益のためには債権者の利益を損なうようなことも提言しなくてはならない。その利益相反をしてまでも、全体の利益のために戦略的に投資銀行業務を進めてはいけないだろう。日本の銀行の場合は、あくまでも債権者としてのリレーションを一番重視しており、それを補完するような形の投資銀行サービスに限定されると思う。一方で、外資系が日本で行ってきたこれまでの投資銀行サービスにも限界がきていると私は思っているが、日本の金融機関が、いわゆる外資系の投資銀行の旧来型ビジネスをこれから模倣するのは愚行であるとも思っている。本格的にやるのであれば、内部変革ではなく、外のものを取り込んで融合していかなくてはならない。近道は、日本の金融機関が海外の投資銀行を直接買収する事だ。

――外資系の投資銀行が、今後日本で展開していくことに限界がある理由は?

今井 外資系が日本で成功してきた背景には、圧倒的に商品や情報の優位性が今まではあったからだ。かつて投資銀行業務というものは、概念としては日本に伝わっていたが、実態のあるサービスとしては確立していなかった。その日本のマーケットに外資系投資銀行が入ってきて、この一〇年、二〇年と徐々に広がり、一九九七年の金融ビッグバン以来、急速に日本の金融市場がグローバル化することによって、そういったサービスがリアルなものとしてやっと認知されてきた。ここが外資系が一番伸びた時期だ。ところが、昨今のライブドアや楽天の動きに見られるように、海外ではあたりまえだが、日本の国内においてはありえないとされてきた事が続々と起きてくると、今までの非常にミステリアスなヴェールが一気に剥がれ、外資のサービスの競争力が急速になくなってきた。例えば、いわゆるM&Aのプロとはやされていた外資系の執行力の分野においては、日系と差が無くなり、むしろ日本企業の方がフィーも安く、安心で使い勝手がいいという状態になってきてしまった。

――外資系の競争力が、相当、落ちてきてしまった…。

今井 これからは、横に広げた多様な金融サービスのスペクトラムにおいては、より戦略的コンサルティングに近い、付加価値のあるオリジネーションを提供していかなければ顧客から評価されてこないだろう。一方、多様な金融商品を並べた縦のスペクトラムにおいては、よりリスクを取ってくれる金融機関の方が法人顧客にとって重要になってくる。したがって、受ける側の金融機関はリスクをいかに市場に転嫁して利益を出していくかだ。金融技術を駆使することでリスクを回避し、顧客の大きなリスクを受けていけるように変化していかなければ、国内メガバンクとしての競争力を失うだろう。そして、それは外資系も然りだが、不整合な日本リスクはとりきれない。その両者を補完する意味で国際的な統合へと発展していくのではないかと見ている。