全天候型のポートフォリオ構築

全天候型のポートフォリオ構築

信金中央金庫 理事長 中平 幸典 氏



――先ず、信金中央金庫の業務の現状は。

中平 ご承知の通り、信金中央金庫(以下、信金中金)は、信用金庫の中央金融機関と呼ばれている。現在、信用金庫は全国で二百九十六あるが、信金中金は、この信用金庫が会員として出資して作っている金融機関だ。今、信用金庫全体では、一〇八兆円ほどの預金があり、その六割弱は各信金で貸し出している。その他、自ら有価証券などに運用する。それ以外、全体のほぼ四分の一を、信金中金に預けている。これは、額にして二十数兆円。この二十数兆円に、信金中金が発行している金融債などを併せて、全体で三十一兆円の資産を信金中金では運用している。この三十一兆円という資産を運用し、収益を上げ、それを信用金庫にいろいろな形で還元していくという役割を信金中金は担っている。また、自己資本の充実の観点から、普通出資のほか、優先出資証券を出している。株式と同様の性格をもったこの証券は、議決権はないが、東京証券取引所に上場しており、広く一般個人にも購入してもらっている。配当利回りは二・三%程度となっている。こうした調達もあり、自己資本比率は今年三月末で一五%程度を保っている。

――信金業界における信金中金の役割は。

中平 バブル崩壊後、多くの銀行、金融機関が不良債権問題に直面し、金融界で合併、再編が進んだ。信用金庫業界も、一〇年くらい前は、その数が四〇〇を超えていたが、現在では二百九十六まで減ってきている。こうした金融システムに吹き荒れた嵐のなかで、都銀をはじめ、他業態では公的資金に頼るところも少なからず出たが、信用金庫業界では公的資金を一切使わなかった。「信用金庫経営力強化制度」を作り、経営困難を克服するための合併等を支援するため、信金中金は個別の信用金庫に資本を提供してきた。あらゆる業態の中で、公的資金を一銭も使わなかったのは信用金庫業界だけだ。今年四月のペイオフ全面解禁も無事乗り越え、この合併・再編の大波は、ほぼ収束したが、今後も経営力強化のための合併などは起こり得る。それに対して我々は、この制度を使って支援をしていかなければならない。これが大きな役割だ。そして、最近の動きとして、これまで縮小路線をとってきたメガバンクや地銀が、ここに来て一転、攻勢を強め、信用金庫の得意先である優良中小企業に攻め入ってくるケースも増えている。これに対して、信用金庫もシンジケートローンやベンチャーファンド等、いろいろな新形態の融資を使って対抗しなくてはいけない。個々の信用金庫では対応に限界もある。そういった際に、信金中金が業務支援を行うことも大事な役割だ。投資信託を販売するにあたっても、信金中金が全体のシステムを作り、そのシステムを通じて、各信用金庫の窓口で販売できるようにする支援をしていく。業務機能補完、業務支援だ。 信金中金は、信用金庫のために貢献をし、そしてその信用金庫の活動を通じて、中小企業、あるいは日本の地域経済の発展に貢献をするという、非常に重要な、信用金庫の中央金融機関としての役割がある。同時に、信金中金としても、こうした支援が十分出来るだけの収益を上げなければならない。三十一兆円の資産を上手く運営して、いかに収益を上げるかがポイントになる。

――収益確保の方法は。

中平 資金運用の面において、環境変化は激しい。日本経済も上を向き、直近では、長期金利も上向傾向にある。更に、米国では短期金利が上昇を続けているため、長短の金利差も急速に縮小してきている。そうなると、今までのままの同じ資金運用のやり方を続けていては、十分な利益は上げられず、収益構造の革新・改革をやっていかなくてはならない。そこで、資金運用面でいうと、金利とは相関関係の薄い金融資産、例えば、エクイティの運用、また、海外へのグローバル運用など投資対象の多様化をすすめ、中長期的には全天候型のポートフォリオの構築をしていかなければならない。これまでと比較して、より様々なリスクに分散をするということだ。これには、相当のノウハウを蓄積していかないといけないし、また、リスク管理体制を強化していくことが必要である。こうした段階を踏みながら進めていく。

――融資の面ではどうか…。

中平 以前は、信用金庫を通じて資金を貸し出す代理貸付でかなりの収益を上げていたが、今や状況は大きく変化し、新たな形態の融資に積極的に取り組み、いろいろなフィービジネスを強化していかなくてはならない状況だ。 幸い信金中金の経営指標はとても良く、格付けも日本の金融機関の中ではトップクラスに入っている。自己資本比率には余裕もあるので、今後、自己資本をもう少し有効に使い、リスクをとり、多少、自己資本比率が下がっても収益機会を得る方向で考えていく。収益を確保して、我々の会員である信用金庫の、さらには優先出資証券の保有者などの要望に応えていかなければならない。

――グローバル運用ということになると、それなりのネットワークが必要だ。

中平 NY、香港、ロンドン、上海と、グローバルなネットワークはすでにある。国際的な金融センターにアンテナを張り、適切なグローバル運用をする努力をしていく。

――郵貯の民営化については。

中平 信用金庫にとって、郵貯民営化がどうなるかは大いに注目すべき点だ。郵便局と信用金庫の関係は、地方に行けば、ある面では競争が激しく、ある面ではとても親密だったりする。将来これがどうなっていくのかは今の段階では何とも言い難いが、信用金庫がそういう環境変化に対応していくうえで、信金中金がサポートするといった場面は、今後、増えこそすれ、減りはしないだろう。そもそも政府保証のついたこんなに巨大な預金や保険を持つ国は先進国では日本くらいだ。今後十年かけて民営化を進める中で、これを改めていくことになるのだと思う。また、そうしなければならない。戦後の長い歴史の中で、地域の経済、中小企業を支えてきた信用金庫などが存在する意味は、とても大きなものがある。各地域の中小企業に対する大手銀行などの融資姿勢は、時によって大きく変動したが、信用金庫は、その地域地域の中小企業とずっと付き合ってきた。日本の地域社会を支え、二十一世紀の日本経済が力強い活力を持てるか否かは、地域経済、中小企業がどれだけ活力を持つかどうかに大きく関わっていると思う。外を見渡せば外資主導で発展する経済もあるが、日本は、しっかりと根を張った中小企業が経済の足腰を支えていくことが大切だ。その中小企業を支えている意味において、信用金庫のような協同組織金融機関の役割・機能は極めて大事であり、また、それをサポートするのが我々の役割だと肝に銘じて、これからも地域に根ざした信用金庫をバックアップしていきたいと考えている。