公庫職員全員で改革を推進

公庫職員全員で改革を推進

住宅金融公庫 総裁 島田 精一 氏



――RMBS(住宅ローン担保証券)の発行額がここ最近非常に大きくなってきている。これは国債に次ぐ大きさだ。

島田 発行残高も、このままのペースでいけば三月末で三兆二千億円程になる。RMBSは平成十三年三月に第一回目を発行し、発行額が大幅に上昇したのは今年度からだが、とりあえず売れ行きは良い。これを進めながら、将来はCMO(コーテライズド・モーゲージ・オブリゲーション)などの新しい商品も出して行き、商品の多様化へ取り組んでいきたい。

――政府系金融機関は官から民へという流れに向かっている…。

島田 住宅金融公庫には、現在約五十兆円の融資残高がある。日本の家の四〇%ほどが住宅金融公庫からお金を借りており、政府系金融機関の中で一番大きい組織だといえる。住宅ローンは一般の金融機関が五年前程前まで見向きもしなかったリテール向け商品だ。というのも、金利リスクの問題やALMの問題で、民間銀行はこの長期個人向けローンをあまりやりたがらないからだ。実際に住宅ローンを組む半分以上の人は十五年以上の長期固定を望んでいて、三八〜三九歳の人が三十年〜三十五年で借りるケースが多い。一方で、昨年公布された独立行政法人住宅金融支援機構法により、来年四月に、住宅金融公庫は廃止され、新たに「独立行政法人住宅金融支援機構」に位置づけられる。今までは財務省理財局から郵貯などの資金を原資とする財投資金を借りて国民に直接融資していたが、これを原則廃止し、金融機関と提携して十五年以上三十五年以下の長期固定の住宅ローン債券を買い、証券化してRMBSで資金調達する方向で進むというシナリオに代わった訳だ。RMBSについては、五年程前から少しずつ積み重ねてきた。今年度の発行額も二兆円を超える程で、かなり本格的になってきている。

――最終的にはどの位まで発行されるのか?

島田 毎年大幅に伸びていくことを想定している。先ほど述べたが、発行残高はこの三月末で三兆二千億円程で、来年度末には五兆円超と見込まれる。もちろんフラット三五(民間と住宅金融公庫が提携した長期固定金利住宅ローン)の伸びがどこまでいくかにかかっている。フラット三五は、今年度の買取申請件数はすでに五万戸を超えてきており、今年度目標は昨年度比四倍以上の七万五千戸あたりを見込んでいる。さらに来年度は一〇万戸と、今後五年位でフラット三五から生まれる手数料で単年度黒字にするような計画を立てている。今までは赤字を国家予算で埋めてもらえばそれで良かったが、来年四月一日に独立行政法人に変わり、仕事内容も直接融資から証券化支援事業へと大きく変わる。新しいビジネスモデルで、第一期五年間の中に単年度黒字を達成させなければならない。そして、次の五年で繰越損を一掃するというのが今の計画だ。

――シナリオは出来ている。

島田 五年間で赤字をゼロにして、財投資金を使わず、政府の支援も受けずに長期固定ローンを民間の金融機関と提携して、住産業や国民のために引き続き提供していく。それが、民間出身の私の役目だと思っている。

――どんどん買い取りが増えて来て、黒字も見えているのでは?

島田 累積が五〇万戸になれば採算分岐点だろう。同時に、独法一期中に一般管理費のカット、人員を一〇%減らす計画も立てている。現在公務員数の削減が国の大きなテーマになっているが、その一環として我々も減らしていく必要がある。私の役割は独法一期の一般管理費を削減することだ。去年の十月からBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)という業務改革のための委員会を立ち上げ、組織改革と業務改革を行っている。政府系金融機関の改革のサクセスストーリーの第一号という責任もあるため、何とか頑張っていきたい。

――とても夢のある仕事だが、目指すところは…。

島田 米国にファニーメイという機関があるが、住宅金融公庫はこれを目指している。ファニーメイは民間企業で株式も上場しているが、政府との特別な関係があるため、政府支援企業と呼ばれている。一番大きな利益の源泉はディーリングと借り換えで、それが利益の面ではメインになっている。ファニーメイでは一九八一年にRMBSの発行を開始したが、我々は、今やっとRMBSが本格的な流れになりつつある段階だ。米国とは二十五年の差があるわけだ。言うまでもなく証券化市場において日本は大変遅れている。今、巷では財政の健全化のために日本の国有財産の一部を証券化したらどうかという話もあるが、私はこれはとても良いアイデアではないかと思っている。

――住宅という分野はある意味、構造改革の要だ。

島田 日本の住宅ローンの残高は、住宅金融公庫が約五十兆円、民間が約百三十兆円。両方併せて約百八十兆円もある。年間約二十兆円という住宅ローンは非常に大きい市場だ。また、住宅産業においては、セメント、木材、家具、内装、そして、建設関連業者などの労働力の雇用を創出し、ありとあらゆる産業が関係している。家を建て直せば自動車も買い替えるという住宅も多く、そうすると、また自動車ローンが必要となり、さらにエレクトロニクスや内装などの産業へと広がっていく。そういう意味において住宅というのは一番裾野が広い。

――国のお金で公共投資はもはやできない。民需をいかに育てるか。そして、そこには住宅がある…。

島田 日本で災害が起きると、家が壊れ、住宅建て替え需要が出てくる。しかし、実際そのような時に民間の銀行ではお金を貸しにくい。そんなリスクは背負いたくないといって貸さないところがほとんどであろう。耐震偽装問題などでも見え隠れするように、日本の住宅業界の一部には信用に問題のあるところもある。だからこそ、住宅金融支援機構の存在は必要だと思う。郵政が本格的に民営化するには、あと一〇年はかかると言われているが、公庫は独立行政法人化の中で、まずは意識改革や生産性のアップが必要だ。私が民間で一〇年以上前からやっていたことを、今度は官の世界において、若手の活力に期待しながら、みんなと一緒に成功に導いていく心づもりだ。

――そのために、住宅金融公庫で初の民間出身トップに就任された…。

島田 政府系特殊法人から独立行政法人への移行と、直接融資から証券化支援による融資という大改革だけに、今までとは全く違った改革手法が必要だ。小泉内閣の方針通り、民間人トップが、民間での経験を政府系財政機関の改革に生かしていくことが、有効な手段ではないか。

――新しい考え方に対して消極的になっている旧体制の人達の意識を変えなくてはならない。

島田 日本経済の高度成長という成功体験をもった人は、なかなか新しい改革が出来ない。バブルが崩壊し、もはや失うものがない今がチャンスだ。民間の意識はすでに新体制型に変わっている。意識さえ変われば役人の方々が優秀であることは間違いない。これからどんどん日本は変わっていくのではないかと期待する。

――最後に、一言。

島田 私はいつも周りの人たちに「トップはビジョンを示し、責任は全部とるが、実際に実行するのは皆さんだ」「組織が変わって職員一人ひとりの意識が変わるわけでなく、職員一人ひとりの意識が変革することによって組織が変わるんだ」と言っている。この組織は幸いなことに、官でありながら「つぶれる」という危機感があった。その危機感をどのように前向きなエネルギーに変えるかが必要で、私の今までの経験を生かし、公庫職員全員で改革を推進していきたいと思っている。