ネット証券、第二幕の幕開け

ネット証券、第二幕の幕開け

ジョインベスト証券 取締役社長 福井 正樹 氏



――野村の伝統的な対面営業とインターネットトレードの差別化は可能か?

福井 我々はビジネスモデルが違うと考えている。野村證券は対面、コールセンター及びネットを通じて総合的な金融サービスを行っているが、ジョインベスト証券はインターネットが中心で能動的にお客様の背中を押すことはできない。よって、お客様が、それぞれの投資に関するリテラシー、ニーズおよびリスク許容度などに併せて自分に最も適している商品・サービスを自発的に選択できるようなサイト構成にすることを心掛けていく。この従来とは質の異なったサービスを気に入ってくださるお客様もいるだろう。

――今までの野村の「ホームトレード」とは全く違う?

福井 野村ホームトレードは、店舗で取引可能な商品をすべて取りそろえようとしている。しかし、インターネットがベースのジョインベスト証券では根本的にビジネスロジックが変わってくる、そういった意味で全く別物になるだろう。野村證券のお客様に移ってもらうのではなく、野村グループがリーチできていなかった新規のお客様を開拓して、グループ全体ですそ野を広げるのが狙いだ。

――野村のアドバイスだけ受けて、取引はこちらのインターネットで始めるといったケースもありえるのでは?

福井 我々はそういったお客様を拒むことはできないし、また、それを促進する狙いもない。口座数では〇七年の三月末に五十万口座、収支は〇八年三月期に黒字化を目標にしている。だが顧客に関していえばメインターゲットは現在他社のインターネット取引を使っていらっしゃる方や、新たに株式取引に興味をもたれた方だ。こういったお客様の中にはアドバイスを受けることよりも、自ら情報を取捨選択して投資判断を行いたいという希望を持った方が多い。

――アドバイスを受けたい方は野村ホームトレード、自主的な取引を好むお客様にはジョインベストという認識でよいか?

福井 そうとっていただいても良いだろう。

――野村・ジョインベストと二つの違う組織となるが、取り組みのバッティングなどはありえるのでは…

福井 社員のおよそ半分くらいは野村から出向してもらっているが、もう半分くらいは外部からの登用を行うことで、人材はバランスよく整えている。またビジネスロジックが野村とは大きく変化していることもあり、そもそもグループ内で取り組みのバッティングのようなことは起きないだろう。

――野村の手数料が下がるというようなこともありえるのでは?

福井 野村證券の手数料についてはコメントする立場にないが、手数料はサービスに対する対価としてお客様の満足していただけるもの、という基準によって決めていくべきことだと考えている。

――開始当初は株の売買が中心だが将来は投信や外債行う…

福井 今年末までに進める計画には三つの方向性がある。一つは商品の多様化、二つめに株取引における機能向上、そして利便性・効率化の追求だ。それら三軸がそれぞれ独立しているわけではなく互いに絡み合わせて考えている。その方針に基づき、今年末までに新たに商品として投信・外国株・カバードワラントなどを扱っていきたいと考えている。それ以外の二つの軸も計画に沿って進めていく。機能向上に関していえば注文執行機能の拡充・モバイル発注、そして利便性向上に関しては外部のネットバンキングの活用・IT基盤増強・資産管理サービスといった取り組みを予定している。これらの三つの軸を同時に、順を追って進めていく計画だ。

――IPO・POにおいては野村が数多く主幹事をやっている分有利だ…

福井 お客様のご期待に応えられるよう、野村グループ内で検討中だ。

――現在の社員は何名ぐらいか?

福井 二十数名といったところだ、将来的にも五十名程度で抑えたいとは考えている。アウトソースでコストを下げながら社員にはクリエイティブな仕事をしてもらいたい。

――米のインターネット取引のシステムが日本より先駆けているとの話もあるが?

福井 いや、今やそれはないだろう。先行した他のネット証券会社のシステムなどもフロントは当初米国のものを輸入したが、結局現在はこちらでつくり直したものを使っているといった経緯がある。私は米国よりは日本の方が進んでいるという認識にいる。取引機能だけ見れば韓国が一番進んでいるのではないか。

――新規参入の勝機はどこにあると見るか?

福井 手数料体系はまだ決定していないが、業界最低水準を目指すつもりだ。投資情報サービスについては表面的に見えるところで差別化を図るのは難しいだろう。だが、いわゆる企業・銘柄の選択についてもう少しわかりやすい情報をお客様に届けたい。そのために生活に密着した話題ということをキーワードのひとつとして掲げている。例えば何らかのニュースが出た際に、どのような関連企業が該当分野で活躍しているか、どの分野にマイナスか、どの分野にはプラスに働きやすいか、などの話題提供だ。とりわけ初心者の方にはスクリーニングなどといっても難しい、それよりも企業を好きになって中長期的な投資に向かっていただきたい。それが差別化のひとつの方向性だ。ウェブサイトの構成についてもこうした視点に基づいて考えていく。シンプルで明快なものを目指していく予定だ。

――長期の差別化戦略では?

福井 今後の差別化戦略には三つある。野村グループの一員としての信頼を十二分に活用すること、IT基盤の処理能力・個人情報保護を高めていくこと、そして何より今後のサービス展開のスピードを活かすことだ。特に事業展開のスピードには自信があり、来年の三月には他社と遜色ないサービスが展開できるだろうと予測している。

――インターネット取引は、東証の過剰流動性など負の部分もあるが…

福井 市場の厚みという意味で個人が市場で果たしていく役割はまだ大きい、流動性の高まりを悪いこととは考えていない。去年の十月末時点で百十万人ほどの投資家がネット取引に参加している。百万人まで来たという事実がひとつある。そして株式の委託売買状況をみるとネット専業大手の売買シェアは実に個人投資家分の約六割に達する。この六割の人が市場でアクティブに行動している。そのため流動性への拡大の寄与は非常に大きかったといえる。一方、今年に入って一、二月の二カ月間で約五十万程度の新規口座がネット証券を通して開設された。この中には中長期的な資産形成を考えている人が増えてきている。そのため過剰流動性がエスカレートし続けるといった認識は少ない。こういう人たちが増えていくと市場のすそ野そのものが広がり、ネット証券の果たす役割が変わってくる。我々はネット証券の第二幕と読んでいるが、お互いに切磋琢磨するによい環境が整ってきたし、競争は市場にとってもプラスと考えている。