投資家に信頼される市場を構築

投資家に信頼される市場を構築

社団法人 不動産証券化協会 理事長 岩沙 弘道 氏



――4月25日の理事会で第2期中期事業計画が承認された。第1期の3年間を振り返ってどうか。

岩沙 第1期中期事業計画では、「不動産証券化市場を成長軌道に乗せる」を目標として、市場の拡充に重点を置いて活動してきた。その結果、J−REIT、私募ファンド等を中心に順調に成長を続けており、特にJ−REITは、本年3月末時点で時価総額が3兆円を超え、今後も益々成長が期待されるところである。また、不動産証券化市場の成長に合わせて、資金調達面でもノンリコースローン、投資法人債、CMBSなど多様な手段が確立している。これは、不動産が証券化商品になったことで情報開示が進み、幅広い投資家層から信認された結果ではないか。
 しかし急速な成長の反面、人材不足や投資対象不動産の供給不足、また景気回復による外部環境の変化や不動産投資のグローバル化への対応など、更なる市場の成長への課題も多い。協会では、今後も引き続き積極的に活動していく。

――J−REITは金融機関に限らず一般投資家にもすっかり浸透した。

岩沙 確かにJ−REITは、機関投資家から個人投資家まで幅広い投資家の信認を得て成長してきている。これは、ポートフォリオの的確な運用から安定したキャッシュフローをREIT各社が実現させてきたことにより、REITが投資家に信頼されてきたからだろう。また、ファンド・オブ・ファンズを通じて個人投資家の保有率も高まってはいるが、認知は十分とは言えず、協会では今後もさまざまな機会をとらえてJ−REITの認知が高まるよう努めるとともに、IR活動を通じた投資家の理解を深めるREIT各社の努力にも期待したい。

――最近、不動産価格のバブル化や、反対に日銀の量的緩和解除から利上げ圧力が高まり不動産価格に影響を与えるという議論がある。

岩沙 バブルの再来とは考えていない。1980年代のバブル期においては、キャピタルゲイン−土地価格の更なる上昇を見込んだ投資が行われ、収益性を度外視した取引が繰り返された。
 現在は、収益還元価値による不動産投資の考え方が定着しており、特に投資用不動産は投資家やレンダーなどの市場参加者に対し、情報の開示、高度な説明責任を求められており、同時に厳しいチェックを受けている。将来のキャッシュフローについて見方の差はあるものの、取引水準は合理的な範囲でなされていると考えている。
 また一般的には、金利の上昇は不動産価格にマイナスの影響を及ぼすと言われているが、現在のような景気回復に伴う金利の上昇局面では、賃料の上昇も期待される。また、リートや不動産会社の多くは金利の長期固定化などの手当てを講じており、金利上昇がそのままキャッシュフローや業績に大きな影響を及ぼすことはない。

――今年もJ−REITをはじめとして着実な拡大が期待されているが、第2次中期経営計画について。

岩沙 先ほど申し上げた通り、市場の更なる発展のためには課題も多い。不動産証券化商品の供給元である事業者に対する幅広い投資家層からの信認や投資環境の整備が益々重要になるとともに、人材育成、投資対象不動産の供給、ビジネスモデルの安定化、国内外からの安定的な投資資金の流入といった要素がバランスよく整備されていくことが市場の更なる発展には重要である。そのような観点から、第2期中期事業計画と今年度の事業計画では、その足固めをする重要な期間との認識のもと「公正で透明性の高い、厚みのある市場の構築」を目標として取り組んでいく。
 具体的には、まず、投資家への情報発信など市場の情報インフラの整備として、J−REITの公開情報を基にしたJ−REIT・プロパティ・インデックスの公表である。このインデックスの算出式は、米国で最も普及している実物不動産投資インデックス“NCREIFインデックス”の算出式に準じており、当指標が、グローバルスタンダード基準を満たした日本の不動産の収益を示す新たな指標として広く利用されることを期待したい。不動産投資にかかわる指数には既に東証リート指数があるが、当協会が公表するJ−REITの不動産投資インデックスは現実のキャッシュフロー、鑑定評価額等の開示基準に基づいた、実物不動産に関する日本初の指標である。欧米並みにインデックスを充実させることで、国内外からの安定的な資金流入を促したい。 続いて、不動産証券化に大きな影響を及ぼす法制度の制定や改正が数多く予定されており、それらに対して適切な提言を行い、ビジネスモデルの安定化を図りたい。さらに、投資家保護策として、会員各社の「自主行動基準」の徹底に引き続き注力するとともに、本年度より創設したマスター資格制度においても、マスターの「職業倫理規程」の遵守を徹底し、市場に対する投資家の信認に応えていきたい。

――最後に今年の抱負について

岩沙 今年は、J−REITが創設して5周年を迎える。現在、銘柄数は32投資法人、時価総額は3.4兆円だが、いよいよ、市場規模10兆円到達も夢ではなくなってきた。今後も、不動産証券化に代表される不動産投資産業が果たす役割は、ますます大きくなっていくと思うが、そのためには、投資家に信頼される多様で魅力ある不動産証券化商品を提供し、国内外からの安定的な資金流入を促すことが必要だ。それにより、さらに都市再生や地域再生を促進し、わが国経済の力強い発展が実現すると確信している。これからも、当協会への期待の大きさと、不動産証券化の発展を支えていくという責任の重さを真摯に受け止め、私自らが先頭に立ってまい進していきたい。