中小企業向けサービスを多様化

中小企業向けサービスを多様化

ニッシン特別顧問 網屋 信介 氏・NIS証券代表取締役社長 水木 健盛 氏



――ニッシンの業務内容は?

網屋 ニッシンはもともと中小企業向けの事業者ローンと消費者金融が主力商品の会社だったが、現在は舵を変えて中小企業を専門に金融サービスを行っている。これを証券・リース・保険・債権回収・中国事業支援など中小企業のための金融ワンストップ・サービスの提供者と位置づけている。中小企業は必ずしも銀行から融資を受けられるわけではなく、融資額も必要額を満たしていない。それら技術力は優良だが、財務的に課題を抱えている企業が展開する時に、我々は資本や株式を注入したり、グループの持っているリースや不動産事業などを活用したりして総合的にサポートを行っている。

――中国事業というのは?

網屋 ニッシン本体の中国担当の常務は上海出身で、今は現地法人の社長を兼任している。上海の日本企業では最も早くリース業の免許を取った。他にも日本企業と地元との折衝役や不良債権、中国での投資、中国企業の東証への上場サポートなどを行っている。

――事業の発展が非常に多様だ…。

網屋 消費者金融・事業金融を永年行ってきて中小企業の持つ多様なリスクを分析してきた経験が背後にある。ローンの営業はもともとプッシュ型の営業スタイルだが、数年前から提携会社を通じての案件が増加している。USENさんが良い例だ。USENさんは日本中で120万の顧客を有しているが、このうち飲食業を中心とする中小事業者が金融サービスを必要とする場合に紹介していただく提携を結んでいる。

――グループは全体では何社か?

網屋 ニッシン本体が東証一部に上場しており、現在12社以上の子会社が存在する。そのうちニッシン債権回収については上場も果たしている。その他の子会社の上場についても積極的に考えている。

――ローンについて大手銀行は金融庁の方針から大きく外れることが出来ず、市場の変化に対応できていない…

網屋 金融庁の方針といえども禁止はされているわけではないが、大手銀行にはリスクを取る手法が確立してないから弾力的な融資が行えないという面がある。我々はメガバンクに彼らの取れないリスクを我々が取ることで相互補完できる提携を提案している。我々がローンを出すのではなく、ローンを保証するという形でも良いだろう。我々は形にはこだわらない、金融版OEMでよいと考えている。提携先のブランドとして売り出してもらえばよい。

――バブルのときは担保貸しが一大ブームとなったが、現在は担保ローンは当局の方針から外れている。担保価値の低い今こそ担保で貸すべきではと考えるのだが…

網屋 その通りだ。今我々の担保ローンは900億円を超えている。だがその際、長期ローンはあまりやっていない。例えば五年の不動産担保ローンなどは市況がどう変わるか分からない。基本は1年以内のローンだ。

――不動産市場も価格の透明性があり、マーケットが整えば担保ローンも復活するだろう。

網屋 我々は基本的には担保に対して融資するわけではなく、あくまで債務者の返済能力に対して融資している。プロジェクトの出口をちゃんと見つけてから融資するようにしているから、担保を低く見積もって、うまくいかなかった際に担保を取ろうというような姿勢とは一線を画している。そもそも今般の不動産担保のデフォルト率は0.1%で、ほとんどありえない。

――商品を増やすことに強い意欲を感じる…

網屋 品ぞろえをするというのは金融状況の変化に応じて商品を変えるなど、顧客に応じたサポートを可能にするためだ。例えば子会社にバーズアイ技術投資という会社があるが、ここが技術に対してはお墨付きを与えたある企業で、売り上げが伸び悩んでいた。分析すると資金繰りが悪く、大量生産が難しかった。そこで我々が売掛債権を保証すると年間売り上げが数倍に伸びたという例もある。

――本来ならばそれは都市銀行や地方銀行が行うべきなのだろう。今隆盛な消費者金融に対して都銀が二十年前にこの視点を持っていたら経済は変わっていたかもしれない。

網屋 消費者金融は、われわれとはまた違ったノウハウを持っている。一番の違いは、我々は目的を定め、プロジェクトを見極めてから貸すが、消費者金融は無担保で用途が不明という点だ。零細企業は事業者も個人が重複することが多いが、消費者金融は貸し手が資金用途を把握できないために無計画に使われてしまう危険性が存在することも否めない。

――金融技術が急速に発達する一方で、中小企業の発展は国の大きなテーマだ。

網屋 なぜそれを銀行がやらないかということだが、やれないという側面もあるだろう。ひとつはまず、今まで担保主義で来た時間が長すぎたものだからキャッシュフローに対するリスクを取る手法が確立していない。ちゃんと返済能力を分析して貸すことが大切だ。もう一つはデフォルトを1件も許さないという前提があることだ。零細企業であればデフォルトの可能性は排除しきれない。我々は3%〜4%のデフォルト率ではあるが、リスクとリターンのバランスを考えたうえで融資している。

――今後、金融ワンストップ・ショップとして伸ばしたい分野は?

網屋 今は不動産担保ローン、中小企業支援、リース、株を含む証券。これを結びつければ大きな商売になる。多様化を図ることだ。各分野の好不調に応じてビジネススタイルを変えられるような体質が大事と考えており、バランスよく伸ばしていきたい。

――証券業務については…

水木 NISグループはゲームポット・健康コーポレーションのIPOで主幹事をつとめてきた。150社程度の企業・ベンチャーに融資・出資しており、ファイナンシングあるいはコンサルティング等も含めてクライアントを広げていく。それとともに機関投資家や地域金融機関、あるいは事業法人等ともファイアーウォール等を考慮しながらグループの総力をもって最大限のシナジーを図りたい。

――企業金融のスペシャリストの証券会社が出てくることは、市場全体にとっても刺激になる。。

水木 その点ではユニークといえるだろう。私はかつて外資系でCMBSやCDO、REITやノンパフォーミングローンを扱っていたので、グループ企業とシナジーを効かして互いに発展できる余地は大きいと考えている。クレジットデフォルトスワップやメザニンローンといった形でリスクを取って、またそのリスクを外部へと売買するということを考えている。単純な株の売買も、続けては行くが中心ではない。株式においてはMSCB等の案件やブロックトレーディングなどに力を入れていくつもりだ。

――今後のニッシンの方向性は?

水木 今からニッシンはイメージ戦略が必要になってくる。現在、東証の分類的には消費者金融と並べられているが性格的には違ったものだ。我々が外部から入ったことで新しいことをするというイメージが生まれた。例えば中国で最も進んだ日本企業というイメージを構築する用意がある。債権回収なども北京オリンピック後のスイングバックが懸念されている中で需要が出てくるだろう。そして何よりクレジット・デフォルト・スワップ、アセットバック、あるいはモーゲージ、これらは金融の中心であるウォールストリートからグローバルな展開を伴って、日本・アジア全体にまで多少の時間差をもって広まっていく。欧米がすべてにおいて良いわけではないが、グローバルスタンダードになったということだ。そのタイミングに遅れないよう、金融テクノロジー・スキルを伴って当社の発展を図っていきたいと考えている。また、現在は韓国・中国・ベトナム等の企業から日本市場への上場等のIPOの相談を受けている。それらを含め、アジアと日本、あるいはアジアとグローバル市場の架け橋となる希少な証券会社を目指していきたい。