インターバンク市場の再構築が急務

インターバンク市場の再構築が急務

上田八木短資 取締役社長 守田 道明 氏



――インターバンク市場はゼロ金利政策で市場のまひ状態が続いてきた…

守田 当社としてもそうした状況に対応するためインターバンク・コール取引にフォーカスしていたビジネスモデルを修正し、業務分野の多様化を図ってきた。その過程で、当社が債券、CP等のディーリング・ポジションを持つことも行ってきた。そうした努力でインターバンク・マーケットがほとんど死に体となった状況でも何とか泳ぎきることができた。3月19日の量的緩和政策解除以降もゼロ金利政策が続いているが、マーケットではごくわずかながら金利がつくようになってきた。金利がつくようになれば、金融機関は市場資金部署にディーラーを呼び戻したり、取り手に対するライン設定を進めるなど、インターバンク市場取引回帰の体制を整え始めている。来るべきゼロ金利解除が、マーケットの出来高増加に結びつく兆しが既に出てきている。

――インターバンク市場の停滞期の事業の柱は?

守田 今回の長期にわたる金利低下、ゼロ金利の局面で先行して柱になったのはオープンマーケット商品だ。TB・FB、2年債といった短期債券の売買、国債のレポ取引、CP、CD、信託受益権証書のディーリング、ブローキングが収益の下支えとなった。永年のインターバンク取引で培ってきた金融機関を中心とする顧客ネットワークを活かすことができた。あわせて、必ずしも従来から短資が扱ってきた業務ではなかったのだが、株券のレポ取引の分野にも進出し、3短資中では高いシェアをいただいている。さらに、従来ならば証券会社の世界であった投信の販売も開始した。海外のファンドを国内の金融機関向けにアレンジして私募投信として販売しており、その残高は既に一千億円を超えている。証券会社に比べれば当社は後発であるし、営業力も脆弱であることは否めないが、その分商品の差別化を追及してきたことから、結果として、顧客金融機関のリスク・リターン指向にマッチした高い独自性を持った商品を同時に複数提供することが出来るようになってきた。これは社内の投資信託部に人材を揃えることが出来たことに加え、欧米の有力専門家をアドバイザーに迎えることが出来たことが大きい。商品開発、デューデリジェンス、商品管理等を通じた顧客との関係維持を非常に丁寧に行っているため運営コストは高めであるが、ここまで残高を積み上げることが出来ると損益分岐点を越えてきており、当社業務のもう一本の柱となりつつある。

――いろいろな工夫をされてきた…

守田 ゼロ金利下での必要に迫られての工夫だった。そして有難かったのは、当社の八十八年の歴史の中でしっかり自己資本を積み上げてきたことだ。本業のインターバンク取引が赤字基調に陥った中でも、その自己資本が新たな事業展開の元手となった。先般日銀は量的緩和政策を解除し、金利政策に回帰した。これからは経済の状況に見合った金利形成が期待される。マーケットでは金利があってこそ資金が循環する。ゼロ金利では、いかに手許余資が積み上がろうともわざわざ手数料を払ってまで資金を放出するインセンティブが沸いてこない。市場が機能停止してしまう所以だ。金利があるからこそ資金が回る。金利機能の回復にともない効率よく資金が循環するようになる。ゼロ金利解除への市場の期待は大きく、少しでも予兆があれば金利は上振れするような状況だ。ゼロ金利政策が解除され金利がつくようになれば、当社の本業であるインターバンク取引における手数料収入の回復が、取引ボリューム、手数料率の両面から期待される。

――長く耐えてきただけに、金利上昇の追い風があれば短資会社は第二の黄金時代もありえるのでは?

守田 そう期待したいところだが、短期的にはなかなかそういかないところがある。と言うのは、5年に及ぶ量的緩和政策の下で、インターバンク市場はほとんど機能停止の状態になっていた。また、その間にマーケットの構造自体が大きく変わってしまっている。従ってその再建・再興はそう容易でない。例えば、市場参加者である金融機関の数が統合再編により大きく減っている。昔は都銀13行が恒常的な取り手としてずらりと並んでいたが、今や少数のメガバンクに集約され、しかも必ずしも取り手ではなくなっている。その一方で、従来はマーケットのメジャープレーヤーではなかった外銀や外証が大口の取り手として登場することも少なくないのが現況だ。地銀、生損保など従来の資金の出し手は、この間のゼロ金利下で資金ディーラーを削減したり、取り手に対するクレジットライン設定を見送ってきた。また、ダイレクト取引というマーケットを経由しない取引も増加した。

――なるほど…

守田 再びマーケット取引を活性化させるためには、すべてのマーケット参加者がマーケットの現状を理解し、自らの体制を整えるよう促していく必要がある。また、ゼロ金利政策解除に向けて日銀が超過準備を吸収していく過程で発生する市場の摩擦現象を抑制するためには、そもそも市場で厚みのある取引ができる環境を整えることが求められる。短資を含むマーケット参加者における体制整備、日銀のオペレーション運営面での一段の工夫が求められよう。

――インターバンク市場の再構築が必要だ…

守田 短資を含めてマーケット参加金融機関は、再興されるべきインターバンク・マーケットの新しい構造に慣れ、フォワードルッキングに資金の運用調達体制を整え、ラインの整備を図らねばならない訳で、やるべきことは沢山ある。また、例えばコール取引の決済は日銀の口座を通じて行われるのだが、その日銀ネットは、量的緩和政策の始まった平成13年以降RTGS化(即時グロス決済)されている。それまでの時点集中決済方式と異なり、RTGSの下では取引を一本一本決済するので決済用の流動性ニーズが大きく出てくる。量的緩和政策で流動性が過剰に存在したときには全く意識されなかったことであるが、過剰流動性の吸収が進みつつある今日、短資会社としては日中流動性の確保にも格段意を用いて、コール市場の決済がスムーズに行われるようにしていくことが求められる。日銀は日銀ネットの次世代化(流動性節約機能の導入)を市中協議に付しているが、その実現はまだ先のことだ。決済という面に限らず、有短コールの取引仕法改善、レポ取引T+3の短縮化などマーケットをこれからどうするか、日銀や参加金融機関を交えての議論が必要になっている。 しかし、いずれにしてもインターバンク市場は日銀の金融政策遂行の場、金融調節オペレーションの場だ。そのインターバンク市場を再構築していくことこそ当社の本業再興の途であり、またそれが同時に日本の金融経済の発展に資することになると考えている。