PTS市場は主市場の補完

PTS市場は主市場の補完

カブドットコム証券 代表執行役社長 齋藤 正勝 氏



――御社のサイトおよびビジネスの概要は?

齋藤 現在、社員が69名で顧客約51万口座を管理しており、1日に15万人強から20万人が弊社サイトにログインして取引に関わる行為を行っている。弊社が特化しているのはシステムのデザイン性、機能性という点だ。ネット証券他社は総じて大手証券会社のシステムをOEMで利用している。これに対し、弊社は7年前よりすべて一からシステムを手作りし、自動売買の特許も取得している。他社よりすべての面でシステムが優れるということではないが、少なくとも差別化が図られており、あとの評価は顧客が下すことだろう。また、コールセンターもアウトソーシングではなく自社で行っており、約定報告などは人による案内ではなく機械音声化により、効率化・品質向上を図っている。我々のコールセンターの水準が金融機関すべての中から選ばれて最優秀賞を受賞した実績もある。

――ネット証券業界は、し烈な手数料の引き下げ競争が起こっている…

齋藤 当社の手数料はすべて平均すると約7.5べーシスポイント、最も安い同業他社の水準が約4.5べーシスポイントであり、ネット専業証券大手の中での価格競争では中間を維持している。だが、大事なのは手数料の差分以上の付加価値をつけることだ。また、我々は自前のシステムを用いており、損益分岐点を超えればほとんどが利益となる。顧客総数が増えると「還元」という形にしやすく、09年の株券電子化のころには弊社が手数料でも最も安くできるのではないか。最も流動性の高まる株券電子化のタイミングで一番良いサービス、一番良いブランド、一番低い手数料を提示できれば勝てるというビジョンだ。

――三菱UFJ証券との連携は?

齋藤 対面証券とネット証券の主力商品が明確に分かれてきた。弊社は株式、株式先物オプションなどオンラインの特性が生かされる短期のリスク商品を主力商品として取り扱っているが、私はこれらをデジタル金融商品と呼んでいる。これらは顧客への説明の必要がない商品であり、また原資産といえる。これに対し、三菱UFJ証券の強みはヘッジファンド、仕組み債、変額年金保険や投信といった、原資産ではなく2次加工後の金融商品だ。これらはアセット商品であり、一回の成約金額が大きく、運用も長期を前提にしている。また、株式と違って今日や明日といった単位での値動きは少なく、焦って買う必要が無いことからも、これら商品には高度な説明が求められる。そういった意味で当社と対面型証券会社との補完関係は明確であり、今後もこの関係が続くだろう。また、手数料の面では、対面型証券会社は価格競争に巻き込まれにくかった。それは投信の運用実績などに見られるよう、対面型証券会社では他の証券会社と商品の差別化が図りやすかったからだ。ネット証券のビジネスモデルは扱う商品で他社と差別化を図りにくいため、どうしても価格破壊の方向に成長した。ネット専業証券の立ち上げ時から大きく変化したのは、顧客も我々の性質を理解し、取引したい商品によってすみ分けを行っていることだ。我々はそれぞれの強みをそのすみ分けに対応させ、また同時にシステム・事務・経営などで提携しながら、MUFGという総合金融デパートを成長させていくつもりだ。

――御社がこのほど発表したPTSは、当局が制度を解禁してから時間を要したが…

齋藤 PTSは一言で表わすならば、取引所そのものだ。そのため、参入障壁の次元がネット証券とは違う。ネット証券のシステムが大手証券会社からOEMで系列証券会社に供給されることは一般的な現象だ。また、ネット証券を含む証券会社の設立は99年の証券ビッグバンで登録制となったため、証券業登録を行い、システムをそれら大手・準大手の証券会社から調達すればよい。加えて、それを専門に行うコンサル会社などもあり、うがった言い方をすればネット証券スターターキットという商品が存在する。一方、取引所は登録制ではなく認可制だ。PTSは証券会社の中でも一定の条件を満たさないと当局からの認可は下りない。加えて、そのシステムは大手証券会社の中にも未だ確立していない。もちろん、東証やJASDAQからOEM供給というのも実現は困難だろう。一つの選択肢として、同分野で先行している海外からのシステム輸入という手法もある。しかし、板寄せや成り行き注文というオークション形式は日本独特のシステムだ。米国ではマーケットメイカーが主流とするシステムを輸入しても事実上、作り直しとなるだろう。我々は7年間システム開発を行ってきたノウハウ、福岡でのBCP(事業継続計画)のノウハウを活かし、04年くらいから水面下で準備してきた。その結果、ようやく7月に認可を受け、その翌日、速やかに我々の想定するサービスのあり方とともに開示させていただいたというのが現状だ。また、我々のプレスリリース後からPTS認可に向けて準備という発表が他社から相次いだ。しかし、後発企業は模倣が可能という優位性を加味しても、システム開発には相当の時間がかかり、半年や1年でPTSを開設できるものではないだろう。

――今後、東証やJASDAQとの関係は?

齋藤 PTSのPはproprietaryの意であり、公的な物と対照的に私有される物としての意味合いが強い。我々は公的性格を強く帯びる取引所が受け付けられない注文執行条件を補完するサービスと考えている。我々の提唱する夜間取引は東証やJASDAQのような主市場では現在、実現し辛いサービスだからだ。例えば東証が夜間取引を始めたならば、我々が早朝や昼休みに回ってもかまわない。要は我々のサービスは主市場のニッチを補完する物であるということであり、競争をするわけではない。だからこそ我々は取引所との人材交流も多く、認可も下りるのだと考えている。そもそも私設の取引所であるわけだから、必要な投資家だけ集まればよいだろう。

――サービスの開始時期は?

齋藤 8月以降と発表したが、システムが完成して監査も受けた後に認可を受けたわけで、実質的には7月から行うということも可能だ。しかし、金融庁とも意見を交わした結果、ある程度反響を確かめる緩衝期を設けた。外部からは実際にどのような懸念や意見・要望が寄せられるかを見極め、ルールや手順、そしてシステムの見直しなどを行う期間だ。実際に予想外の反響が出ている。我々はこのサービスに最も関心があるのは個人投資家であると想定していた。ところが蓋を開けてみると、海外投資家が異例ともいえる関心を寄せてきた。もっともな話で、日本の夜は特に欧州系の投資家が活発に活動している時間帯だからだ。また、ヒアリングしてみると弊社のシステムは当日約定であり、彼ら海外機関投資家が日本の前場および後場でどうしても処分できなかったものを当日処理できる点が評価されたようだ。一方、個人投資家は基本的に買いから入ることが多いので、ここでは売り買い双方の意向が比較的マッチしている。その一方、グループ以外の国内機関投資家はお手並み拝見、といった様子見スタンスと準大手証券の意欲的な参加スタンスとに分かれている。こういった予想外の反響もあり、緩衝期を設けたことは非常に有意義であった。我々はより広範な参加者が集まることで昼間の取引時間に近い取引を提供できると考えており、今後は、個人投資家の方々にも私設取引所のメリット等についてアピールを続けていくつもりだ。