円の総合金融ブローカーの中核に

円の総合金融ブローカーの中核に

東京短資 取締役社長 服部 總一郎 氏



――ようやくゼロ金利が解除された…。

服部 無担保コール翌日物金利が0.25%前後まで引き上げられたとは言え、上限となる公定歩合が0.40%となったため、金利裁定取引をするにしてもすぐに上限金利にあたり、裁定がやりにくくなっている。利上げ幅については日銀が非常に気を配ったうえでの判断であったとは理解しているが、通常であれば翌日物と公定歩合の間には0.25%程度の幅があっても良い。海外を見渡すと0.5%や1%の開きが大半だ。

――当預残高はなかなか減らない…。

服部 多少は減少して現在は9兆円弱といった規模だが、やはり一時期減らした時期に市場の金利が敏感に上昇反応を示したこともあり、当預残高の引き下げに慎重になっているのではないか。今後は郵貯の動きなど不確定な要素もあるほか、準備預金対象金融機関なども0.25%という金利ではあまり気にせず日銀当座預金においているようだ。このあたりの動向が明確にならないうちはなかなか減らしづらいだろう。

――5年にも及ぶゼロ金利の終了に周囲がこなれていないと言うこともある…。

服部 確かにそういった面があるだろう。それに金利上昇局面ということになると、およそ13年間にわたり無かった環境だ。地銀や中小金融機関では利上げ局面の市場を経験している人材は非常に少なく、マーケットが再構築される過程で、市場取引での慣れが必要であろう。一方、この数年間のゼロ金利で短期金融市場の空洞化が進んだ。コール市場への参加者数がそろうことに加え、参加者が短期マーケットに携わる人材やシステムを整え、それに慣れていくには、やはり時間がかかるだろう。

――御社はスムーズに市場参加できるようなサポートを行っている…

服部 ゼロ金利は当初は緊急避難のような、短期の異例臨時措置だと我々は思っていたが、予想外に長く続くこととなった。我々はその期間の中でも、少なくとも06年にはこの措置が終息すると見込んで、ゼロ金利解除に向けた準備を着々と行ってきた。我々の側からサポートなどと言うことはおこがましいが、もちろん、さまざまな側面からお手伝いさせていただくことは充分にできる。

――ゼロ金利下で短資会社は生存のためさまざまな対策を採った…。

服部 当グループは平成15年にホールディングカンパニー制度を導入し、グループの中にデリバティブや証券などを扱う関連会社も有しており、「円の総合金融ブローカー」として強固な競争力を有している。この中で円の短期金融市場の仲介を担う当社は、ここ数年間はインターバンク市場からの収益の落ち込みを、CPや株レポ取引など業務の多角化により下支えしたが、グループ内のほかのマーケット仲介会社に比べて、やはり収益力は見劣りしていた。しかし今後は金利水準の上昇とともに当社は本来の機能を発揮することで、収益的にも機能的にも、グループの中核会社としての役割を果たすことになろう。現在、デリバティブや証券業務で、世界最大のブローカーであるICAPグループと合弁会社を作り、当社を含め東京マーケットにおける「円の総合金融ブローカー」を目指している。当社の経営に関しては、一時は採用も絞りこんだため、ここ数年でかなり人的にはスリム化してきた。ただ、我々のビジネスは人がもっとも貴重な財産なのでマーケットの復活に併せて、このところ優秀な若手、新人を積極的に採用している。一人ひとりのスタッフが質の高いサービスを提供し、マーケットに貢献することが、システムの高度化と並んで、今後取り組むべき課題と考えている。

――ゼロ金利解除後の短期金融市場に変化はあるか…。

服部 プレイヤーがほとんど刷新されたという印象を受ける。従来は主に取り手は都銀、出し手は投信、地銀といった、はっきりとした色分けがあった。これは出し手から取り手に資金が一方通行で流れ比較的分かりやすい構図だったと言える。当時は我々もそれに応じた仲介スタイルだったわけだが、現在は大規模な合併によるメガバンクの誕生、また資産管理系の信託の出現などもあり、マーケットの構造が大きく変化した。都銀のスタンスも出し手のみでなく取り手のサイドに回ることも多く、マーケットの本質が変化してきている。その結果を反映するように現在は我々の顧客の中で、外銀や証券が大きな取り手となってきた。

――顧客が取り手と出し手の双方のニーズを持つようになった…。

服部 従来は、日本の金融の構造的な部分までを我々が仲介していたということだったのだろう。現在は日本の短期金融市場が、出し手と取り手が相場に応じて機動的に動く、短期の資金調整の場としての本来の姿に近づいたわけだ。今後はさらにきめ細かく顧客のニーズを汲み取っていく必要がある。

――今後の金利上昇に対する見通しは?

服部 日本経済の回復と併せて金利は上昇する傾向だが、問題はそのスピードと上昇幅だ。現在はどの程度が中立金利かという議論が盛んだ。潜在成長率と消費者物価の上昇の和を中立金利とするならば潜在成長率は少なくとも1%台だろうし、消費者物価の上昇も来年には0.6%から1.0%程度になってくるのではないか。来年以降の金利は現状からするとかなり高い水準となってくるだろう。その点で2000年のゼロ金利解除から見ると環境が全く変わっている、そのときは銀行に不良債権がまだ大量に残っていたうえに、物価上昇率は低迷していたことから見ても、今回は前回のゼロ金利解除のような事態になることはないだろう。

――都銀のダイレクト取引など、新たな要素が短期金融市場の構造に与える影響は?

服部 ダイレクト取引は今に始まったことでは無く、従来から存在はしていた。ダイレクト取引と短資会社の市場取引はすみ分けをしながら共存することになるだろう。市場取引との比較で、ダイレクト取引は相対取引であり、市場取引とかけ離れているわけではないが、一方で市場取引には市場を通じた透明性と公平性が確保される優位性がある。また、短期金融市場の参加者数も金利上昇につれて増加していくだろう、そうなった場合にはやはり我々のような市場の仲介役が存在することが市場の運営に不可欠となってくる。

――短資会社の今後のビジョンは…

服部 短資会社が構造的な部分を担っていた時期はコール残高の規模は40〜50兆円近かったが、その規模に戻る可能性は少ないだろう。当面20〜30兆円の水準に落ち着くのではないか。その規模を前提に、今後もCPなど若干のポジションを取るような業務とバランスを取りながら収益を上げていくことになるだろう。金利が上昇して市場がようやく機能する状態となってきたこともあり、ここでもう一度短資会社としての本来の役割をしっかりと果たしていくことが大事だ。金融とは人間の身体に例えれば血液のような物で、その循環の仲介役として質の高いサービスを提供し続けていけば、市場からも必要とされ続ける。こういった当たり前のことを、当たり前に行うことが大事だ。