投信の運用規制、海外並みに緩和を

投信の運用規制、海外並みに緩和を

東京青山・青木法律事務所 弁護士 小野 雄作 氏



――私募投信が日本でも増加している…

小野 足元では機関投資家向けの私募投信が増えていることと並行し、私募投信についてディスクロージャーなどの面で懸念をもたれる方も増えている。確かに少人数私募の場合は、一般の方が投資家になることもあり懸念は残るが、適格機関投資家向けの私募投信に関しては完全にプロの投資家相手の商品であるため心配には及ばない。このたびの金融商品取引法への改正では、適格機関投資家に対して厳しすぎた従来の規制を緩和する方向に進んでいる。一般投資家と適格機関投資家の間には厳然たる差をつけることによって商品設計で柔軟に対応しようとする姿勢といえるだろう。適格機関投資家は原則として金融機関に限るという前提があり、金融庁の監督下にある。従来まではいわゆるプロ私募に対する規制が強すぎた感があった。

――日本の公募投信はどうか

小野 日本の公募投信ではやはりまだ様々な運用の規制が存在している。日本の国内投信では、投資信託協会が存在し、その運用規制はかなり厳格だ。外国投信に関しては証券業協会が自主規制機関となっていて、その規制は比較的に緩やかとなっている。ただ、一般投資家にはドル建てで資産を運用することに対しての為替リスクを回避したいという需要もあり、国内投信の運用の規制緩和を望む声は高いと思われる。外国投信と国内投信の間で規制の度合いが違うというのはおかしな話だ。例えば、外国投信に投資するファンド・オブ・ファンズの場合、仕組みとしてはほとんど同じであるにもかかわらず、国内投信を日本で販売するよりも外国投信を日本で販売する方がかなり規制が緩やかになっている。双方に適格機関投資家向けと一般投資家向けの投信が存在するわけで、それぞれのレベルにおいて同等の水準の規制を課するようにすべきではないか。

――外国投信との規制面で端的な違いは?

小野 一例だが、株式のロング/ショート戦略を用いて運用する際にも、日本の私募投信などでは借入が禁止されているため、レバレッジを利かせることができない。そういった戦略を採用したい場合はどうしても海外のファンドにそのような運用手法を採用してもらわなければならない。

――自由化と監視監督機能の強化は表裏一体であるはずだが…

小野 日本はファンドごとに仕組み規制を課すことが多かったのだが、海外では多くの場合業者規制といった形で、業者を規制することにより間接的にファンドを規制する形を取っている。日本でも金融商品取引法で大きくその方向へと変わっていくことになる。実際には、増加し続けるファンド一つ一つの仕組みについて検討・調査をおこなうというだけの人的・時間的資源は監督官庁にもない。そこはやはり海外と同じような方向でよいのではないかと思う。

――投資信託は免許制で行われているが今後は…

小野 今までの投資信託委託会社が今後は投資運用業という分野になっている。金融商品取引業を行うものはすべて、登録という形を取ることとなる。投資信託委託業も認可制から登録制へと変わることによって、規制および監督力が弱体化するのではないかという懸念をもたれたりする方もいらっしゃるが、実際には登録にかなり厳しい要件が課されており、また定期的な報告義務も発生する。そのため、現在の投資信託委託会社に対する規制が弱まるとは考えておらず、あまり心配していない。同じ登録制でも金融先物業者などと比べると規制水準はかなり厳しい方だろう。また、今回は金融商品取引法の適用対象とならなかった商品についても、個別の法律で同様の規制がかけられることとなっているため、あまり大きな問題とはならないのではないだろうか。

――投信の多様化が進むこととなる…。

小野 金融商品取引法の有価証券の定義には一般条項的なもの(集団投資スキーム)ができている。そのため多様な種類のファンドをすべて、見なし有価証券として金融商品取引法を適用していくということになる。今までの法律では考えられていなかったようなファンドもすべてそこに組み込まれていくこととなる。今後はイノベーションに富んだ商品の組成も可能になり、また金融商品取引法によってそれを規制する体制も整ったといえる。

――秋から来春にかけて政省令も検討される…。

小野 政省令の例を挙げるならば、機関投資家としての認定を受けるための要件などは、未だに全く見えておらず、政省令に任されている。また、見なし有価証券については募集の概念が変わってきて、以後は500人の投資家がいないと公募にならない、という形になる模様だ。そうすると、従来が50人であったことと比べ、かなりの規模の投信までもがディスクロージャーを要求されないということになる。そこは懸念が残る部分だ。というのは、これまで私募投信がディスクロージャーを必要としない、という理由のひとつに挙げられていたのは、発行者と投資家の間になんらかの人的関係等がある場合が多く、その場合、投資家は直接発行者から必要な情報を入手することができる、ということだ。500人の場合ではこの議論は通用しないケースも多くなるだろう。適格機関投資家の場合は、自らが情報を収集して投資判断できるので、人数制限は設けていない。また、従来は勧誘ベースで投資家を数えているが、以後はみなし有価証券に関して投資の実行ベースで投資家がカウントされる。そういう意味では従来の私募投信は50人しか勧誘できなかったが、みなし有価証券となるファンドの場合、今後、もっと大掛かりな勧誘が行えることとなる。

――投信に関して最も頻繁に寄せられる法律問題は?

小野 運用と販売の規制に関する問題が主だ。また、日本の投信が海外のファンドへ投資を行うファンド・オブ・ファンズに関する規制もよく問い合わせがある。具体的に言うならば最も多い仕事は外国籍の私募投信に関してだ。日本で外国投信を私募で販売するためには原則として、投信法上の届出が必要となる。我々プロが行っても3週間近くかかってしまうような書類作成が必要となる。これについてだが、適格機関投資家はプロだから保護は必要がないという見方もある。金融商品取引法の施行以後は適格機関投資家向け私募投信に関しては投信法上の届出を免除するという例外条項が盛り込まれてもよいのではないかと思う。

――内外の投資信託を見て特に思うところは…

小野 投資信託が国内の個人投資家にまだまだよく知られていないというのが最も大きな問題と考える。投信は個人投資家が分散投資を行う方法として非常に優れた方式だ。その利点が広く認識されていないことは残念だ。また、投資信託は長期投資の器として用いることが最も好ましいのだが、証券会社が歴史的に販売を主導したこともあり、短期売買を行う風潮がまだ根強く残っている。日本の投資信託に関しては基準価格が上昇するにつれて解約が多くなってしまうという傾向がある。ここには販売手数料が手厚くなっているという手数料体系や、証券会社が回転売買で利益を得なければいけないという体質にも原因があるのだろう。この状況は銀行が窓口販売を行うようになった後も、あまり改善はされているとはいえないようだ。むしろ信託報酬などを厚くして販売手数料を低くすればそういう問題も少しは解消されるのではないかと考える。また、日本ではファンドの解約に対する手数料をとらないことが多いのだが海外のファンドは解約手数料を徴収して、その分はファンドに還元させている。こういったファンドが長期的かつ安定的に存続できるような工夫については、投資信託委託会社も見直すべきところだろう。