1〜2年で3000億円程度の買収提案

1〜2年で3000億円程度の買収提案

ベスター・ジャパン・アドバイザーズ 代表取締役 佐治 大祐 氏



――ベスターの行う事業は…

佐治 米・ベスターは1988年に設立され、18年間で5号ファンドまでの累計設定額は約1兆円となっている。フアンドサイズとしては中規模ながら、MBOの分野では全米トップクラスに入るプライベートエクイティ・ファンドだ。現在、日本でのM&Aは年間に約3,000件、そのうち15%が我々のようなファンドの絡んだM&Aだ。今や日本における再生型のMBOは一巡しており、これからは戦略型のMBOが進んでいくことになろう。

――国内企業のMBOは次の段階を迎えている…

佐治 ベスターは1990年代に米国が不況期から脱する段階で多くのMBOを手掛けてきた。ジョブレスリカバリーと呼ばれたこの90年代の景気回復過程で他のファンドも多くのMBOを手掛けた。当時、それぞれのプライベートエクイティ・ファンドのマネージャーたちは米国経済の活性化のために、と頑張ったわけではなく、もちろん、彼らの利益を上げるために努力を払った。だが、後からマクロ的に分析すると、プライベートエクイティ・ファンドは当時の米国経済の再活性化に大きく貢献した、と言われている。日本の景気はすでに失われた10年からの回復を果たしたが、日本の今の景気を持続させていくことに我々のようなプライベートエクイティ・ファンドは貢献することができるだろう。

――ターゲットの規模や想定する手法は?

佐治 向こう1、2年では、キャピタルベースで2,500億〜3,500億円くらいの買収を考えていくつもりだ。すかいらーくの例のように上場会社がファンドによる買収を通じて非上場会社化するデリストMBO(Delisting MBO)を我々の典型的なビジネスモデルの一例としてわが国でも根付かせていきたい。これは非上場会社化を通じて、よりドラスティックに企業をブラッシュアップ、筋肉質にすることを可能にする手法だ。ただ、すかいらーくの2,600億円という規模は我々の想定する規模と比較して少々大きく、分散投資の観点からも、買収対象となる企業の企業価値は一社当たり300-400億円程度のものを想定している。収益力がEBITDA(利払い・税金・減価償却前利益)ベースで15〜35億円の企業であつても柔軟に考えていきたい。

――出口は再IPOで求めていくのか?

佐治 通常であればそうだ。我々が一部のアクティビスト・ファンドと決定的に違うのは10年のコミットメントを投資家からもらっていることだ。ヘッジファンド等の短期フアンドであれば一年ごとに結果を出さなければいけないが、我々は長期的視点に立つことができる。キャピタル・コール方式を採用しており、買収案件に際して資金が必要となったときにコミットしている投資家から資金を集めるといった形になる。ただ、教科書的な考え方で言うと、5-7年程度でのエクジットを展望し、エクイティベースでのIRRがプロジェクション(想定)ベースで年率20%程度あると判断した場合には、案件を進めるという判断だ。

――外資による株式交換方式の解禁も控えている…

佐治 株式交換での買収が可能となることで外資による敵対的買収が容易になるのではないかとの懸念から、新会社法を作成した際にも1年間の猶予を持たせたとの背景認識が広くある。しかし、これはマスコミが危機感を煽った感がありはしないか。株式交換の認可と外資による敵対的買収の増加が直結するとは考えていない。そもそも株式交換は制約的な買収手法だ。その理由としては、株主総会の承認がないと成立しない、という制約が挙げられる。このため、敵対的買収の件数が株式交換によって増えるというようなことは無いだろう。 日本のM&Aのインフラは概して米国の20年前と同じであった。敵対的TOBを例に挙げるならば、日本において敵対的な買収と友好的な買収を区分けするのは何か、それは対象企業(内部)の経営トップや取締役会からの賛同表明の有無、ただそれだけだ。昔はアメリカもそうだったが、現在は全く違う。TOBをかけられたら必ず中立な特別委員会を設け、社外取締役が多数を占める場で決定がなされる。アドバイザーもこの委員会が雇い、TOB案件について評価を下したうえで、意見の表明を行う。現社長であつてもこの委員会の意見を無視すれば訴えられる、という構図だ。中立的な委員会の意見が主導となるならば、よりフェアではないか。

――どういう形で投資した会社を運営するのか…

佐治 MBOを行った場合、会社を非上場化させ、現在の取締役に外部取締役を加えた新たなガバナンス体制を構築、社内の有能な人材を執行役員等に起用して運営して行くといった形が典型的だ。また、ファンドは経営陣とともに策定した企業価値向上のための経営計画達成に向けて、さまざまなアドバイス、資金協力をして行く。さらに、経営計画の達成度合に応じて経営陣に合計で15-20%のストックオプションをインセンティブとして付与する。この方式で経営陣が再上場の際にキャピタルゲインを取れるようになる。

――どのあたりが活性化の対象になりそうか。

佐治 どの産業が活性化されるべきというようなおこがましい意見を述べるつもりはないが、有形資産を多く持った、いわゆるオールドエコノミーに属する製造業において活性化の機会は多いのではないかと考えている。というのも日本の製造業における技術者のレベルとポテンシャリティーは非常に高い。彼らの組織的な制約にメスを入れればもっと高いパフォーマンスを上げるだろう。そのためにもデリストMBOだけでなく、ノンコア事業の分離・暖簾分けやオーナー企業の事業継承、海外進出など幅広い事例に目を向けて、ソリューション的なバイアウト、共同出資といった事案を提案していきたい。

――日本で資金を集める予定は?

佐治 ファンドは既に米国に存在し、現在はそれを基本に考えている。ただ、ファンドが高いパフォーマンスを示し、日本で我々の趣旨に賛同する方々が増えるならば、6号ファンド以降で日本エリアに特化したファンドを作る可能性もゼロではない。すべて結果次第だ。成功モデルを示すことができれば、賛同も十分いただけるだろう。そして、我々が資金よりもほしいのは日本の元気な団塊世代が持つ経験とネットワークだ。団塊世代の持つ人的経営資源を活用できれば、ベスターの日本における投資効果は飛躍的に向上するだろう。そのため、我々はオフィスを拡充し、それら世代をインダストリアル・アドバイザーとして迎え入れる場を提供していくつもりだ。