オペレーションの強いファンドに

オペレーションの強いファンドに

キャピタルアドバイザーズ 代表取締役社長 大西 喜多郎 氏



――どのような事業を?

大西 当社は、不動産ファンドの運営・管理を行っているアセットマネジメント会社であり、一般的な不動産ファンドが投資対象とするオフィスビルやショッピングセンターではなく、現在、当社が運営・管理を行っているファンドは、投資対象として賃貸マンションとホテルに特化している。そのため、ファンドの運用資産規模で比較してみると、上場済みの運営会社では数千億円を超えているが、当社では、500億円弱程度となっており、中堅くらいの位置にいるのではないかと認識している。当社のファンドの特徴としては、競合が激しい賃貸マンションだけでなく、小規模な新築デザイナーズマンションにも投資している点、ホテルについては、ビジネスまたはシティホテルを対象に、その不動産部分だけの投資ではなく、M&Aや営業譲渡によって、運営を行っているオペレーター会社を、当社の傘下としてグループ化し、一体的にホテルの事業再生を行う体制を構築している点などが挙げられる。特に、該当ホテルの事業再生については、ハイレベルな経験・ノウハウ、対応能力等が求められることから、参入障壁が高く、ホテルのファンドを手掛けるプレーヤーが比較的少ない状況となっている。今後とも、現状のスタイルを通じて積極的な事業拡大を図っていくつもりだ。

――ファンドとしてはユニークだが、その背景は?

大西 97〜98年に日本の金融機関の不良債権処理が始まり、不良債権の担保価値の査定に当たっては、米国流の収益還元法が導入され、急速に広まった。昔からの日本の不動産業界で行われていた慣習・ルールが劇的に変わり、この10年でしっかり定着した。そうした中で、不動産と金融の融合が欧米並に進んできた。欧米では、5年〜10年国債と比較した際のリスクプレミアムで不動産の利回りが決定される。こういった相対的な値段の付け方は、従来の日本の不動産業界では、全く見られなかったことだが、不動産と金融の融合が急速に進んでいる。今後は逆に、不動産・金融とホテルという労働集約的な事業との融合を図ってみようというのが当社グループのスタンスであり、この分野でのビジネスチャンスはまだまだ多いと考えている。

――ホテル事業はその他の不動産商品と一概にくくれない…

大西 ホテルが、その他の不動産商品と違うのは、事業そのものであることだろう。オフィスビルの場合は、テナントの賃料による部分が大半で、テナントの信用に応じて契約を結べば、ある程度の年数の収入が見えてくる。しかし、インフレ基調時には、契約期間において賃料が固定されていることで、収入が目減りするマイナス面もあり、その逆もまた然りだ。こう見ると不動産の価値は、昔は土地だったが、現在はテナントの価値といえる。その一方で、ホテルは不動産をもとにしているが、ホテル事業そのものであり、その価値の尺度は事業価値に帰結し、ホテル事業そのものの価値がいかほどかということが不動産の上乗せ部分の価値を決める。つまり、事業価値であるから、大きく上ぶれすることも十分にありうる。また、ホテルの収益である顧客のコミットメントは、極端な話、一日で終わってしまう。アパート家賃の場合が数カ月単位であることなどと比較すると、短期的な日銭商売でもある。日銭商売のメリットとして、インフレ時には収益が反映されやすい。その代わりリスクは比較的高い。このため、ホテル業はその他の不動産とは趣が異なった不動産業であると言える。日本の場合は、ホテルも不動産価値で評価する習慣があるが、そもそも土地や建物の価値を対象としてきた鑑定会社に、ホテルの企業価値を含めた鑑定を求めるのは非常に難しい。一方で米国では、ホテルの鑑定は会計事務所が事業価値の観点から、評価をおこなってきたという背景がある。

――ホテルのファンドは事業再生の側面もある…

大西 ホテルに投資するということは、ホテルのブランドを変えることも含めて、事業再生に近い。事業再生で必要なのは、業務および財務リストラであるが、もっと必要なのは、新たな資金を注ぎ込むことによる活性化だ。しかし、計算上は、資金を追加すればするほど、IRR(内部収益率)は悪くなる。ホテルを通常の不動産と同等に家賃収益から成り立つものだと評価している人からすると、追加投資をせずに目の前のキャッシュを取りにいってしまう。しかしホテル事業でそれをやると、事業価値はどんどん毀損されてしまう。さらにリスクをとって資金を投入し、リニューアル等の工夫を行わなければ事業としてなかなか再生できない。バランスシート上では、当該物件の資産しかないが、その価値を上げるには、事業をテコ入れするしかない。財務リストラだけでなく、業務リストラも必要だ。そのため損益計算書が解っていないと事業価値は上げられない。重要なのは、誰が、ドライバーズシートに座るかだ。当社グループは、ホテル事業のオペレーティング会社を傘下に保有しており、本社サイドは40名弱だが、ホテルの従業員を入れると200名弱程度の人員となる。ホテルに投資する際にも、業務改善のノウハウを内部に蓄積してきたことはアドバンテージになるという認識だ。

――従来、ファンドは資金だけを蓄積していたという一面的な印象も根強い…

大西 歴史は繰り返すというのが私の見方だ。米国におけるS&L(貯蓄貸付組合)の破たんから再生まで約7年、その間にRTC(整理信託公社)による不良債権の証券化による処理があり、まずプライベートエクイティファンドが参入した。その所有権が売却されるに至り、機関投資家が参入した。この関係は一次卸、二次卸、小売りのようなものだ。日本でも同様なことが起きる可能性を考えていた。その予兆は97年の不良債権処理開始であったのだろう。東京三菱銀の不良債権のバルクセール(まとめ売り)があり、その年から、外資系証券を中心とした一次卸の時代がきた。不良債権は、金の出し手の数も限定的で、対象物件がディスカウントされる傾向が強く、儲けやすい。その後、市場が平常に戻ってくると、資金と運営のコンビネーション、つまりはエクイティのコストと誰がサービスを行うかが重要になってくる。また、そこでは資金の出し手も増加し、力関係が逆転してくることから、オペレーションが強い会社が優位性を増す。米国の7年周期を参考にしても、もう、資金規模だけで儲かる時代は終わっているだろう。当社グループの経営スタイルには、このような認識が前提にある。