倍新首相就任で日中関係は『晴天』に

倍新首相就任で日中関係は『晴天』に

中国社会科学院 近代史研究所 王 也陽 氏



――中国の歴史家を代表して日中の歴史観の差異を研究されている…

 訪日して各界の方々とお会いし、日本の歴史観についての理解が深まった。日本は、名所・旧跡などに対する保存態度や各地の歴史博物館などから見ても、自らの歴史を誇りに思い、慈しもうとする精神が非常に強い。このような国民性は日本人の美点として賞賛されるべきで、批判を加えられる部分ではない。歴史上の過ちを反省することはどんな国民にも難しい。中国にも多くの認めがたい誤りがある、歴史家として反省がいかに困難かということは理解している。これは人類にとって普遍的な欠点ではないか。日中間の争議のどこに問題があるのか、を学者として研究すると、さらに一歩踏み込んだ回答が必要とされるだろう。政治家であれば、態度をあいまいにする作戦をとることもできる。しかし、学者としては、さらに踏み込んだ問題解決の答えを出していかなければいけないだろう。

――多くの日本人は戦争が過失であったと認識しており、首相の靖国参拝への批判も多い…

 日本の半数の民衆は前首相の参拝に反対であることは私も気づいている。また、同時にその家族を戦争で失った家庭も多い。彼ら戦死者が無駄に命を失ったと見なすことや、全く参拝を行わないことは感情的にも難しいだろう。これは理解できる部分だ。

――小泉首相の行動は死者への敬意を表したという理解か?

 私は一般の方が敬意を払うことも、靖国参拝するのも良いことだと思う。ただ国家の指導者である首相には大きな政治的意義が含まれる。そのため、私は小泉前首相の参拝が良い行為であったと意味しているわけではない。

――小泉前首相は第二次大戦への反省および戦争再発の否定をしているが…

 中国人からすれば、彼の演説と行動には一致していない部分もあるように見受けられる。私は遊就館に二度訪れたが、あそこで示された歴史観では第二次世界大戦において日本に間違いはなかったとしており、中・韓・その他アジア諸国にも受け入れがたいものだ。中国人は遊就館の歴史観と靖国神社の存在を絡めて認識し、それを靖国神社の歴史観であると理解している。このような状況下で日本の指導者が靖国神社を参拝するということはそういった歴史観へ賛成しているように受け止められる。

――その半面、若年層はむしろ小泉首相に賛成するものも多い…

 戦後の日本教育は小学校から一貫してこの辺りの近現代史を熱心に教えてはいないようで、若年層では当時の歴史の多くの部分は空白となっている。そういった若年層は中国が日本へ歴史問題を持ち出すほど反中意識を増す、という事態も理解できる。そのためにも私は今後の若年層が問題解決のために、どのような歴史観を持っていくことが正しいのかという研究を行っている。明仁天皇(今上天皇)は2005年12月23日、「過去の歴史は時代の発展にしたがって正確な理解を与えるよう努力すべき」との発言をされている。「時代の発展にともなった理解」というのは非常に重要な理論だ。しかし残念なことに日本のメディアはこのような発言や考えを大きく取り上げようとはしていないように思われる。戦後と戦前は全く違った時代となっていることを教えねばいけない。歴史哲学の観点からも、第二次世界大戦というのは時代を二分する最も大きな分岐点であった。同大戦以前の人類数千年の歴史は征服をもって富国強兵の手段とするという時代であった。それが戦後、特に90年代となってからは征服を特徴とした人類の歴史は完全に終結した。安倍首相が2006年8月3日に東京―北京論壇で「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法治主義、日本人は戦後60年間これらを基礎として、一度たりと武力を行使したことは無く、また積極的に国際社会に貢献してきた。日本はこれからもこの原則を徹底的に貫いていく」という発言を行っている。自由・民主・人権はすでに普遍的な世界の原則となっており、征服という手段は完全に世界から拒否されたといえる。戦後にもイラクのクウェート侵攻しかり、旧ソ連のアフガン侵攻しかり、具体例はあるが国際社会には受け入れられなかった。戦前を具体的に継承することは不可能であるし、またすべきでもない。もしかしたら抽象的にとらえることが日本の難題の解決となるかもしれない。歴史には具体的・抽象的と二つの態度が取れる。国家のために犠牲を払ったという精神を理解するのが抽象的な態度だ。しかし彼らの具体的に行った個々の事例に関して肯定し、継承するのは間違いだろう。

――政治家が歴史観を悪用して軍事力拡大などを考えることは懸念される…

 その懸念の回避にも日中間は対抗するような協力関係ではなく、より友好的なマインドが醸成されるようにしなければいけない。例えば日本では中国の軍事費拡大が注視されている。しかし、中国人からこれを眺めると、その予算規模も日米と比較すれば非常に少ないものだ。そのうえ、中国の軍事予算拡大の際に懸念されているのは台湾問題だ。日本に圧迫をかけるつもりはない。中国の今回の北朝鮮の核実験問題への迅速な対応・態度からも中国は最もアジアならびに世界の平和を望んでいるといえないだろうか。

――いかなる国家といえど他国侵略は難しい現状での軍費拡大は実を結ばないのでは?

 中国の軍事費の拡大は設備・装備を現代的なものに刷新するためのものだ。経済発展の無かった時代に中国はその分野で出遅れ、日本とは比べるべくもない。使っている装備は19世紀となんら変わりないものであったといえる。また、軍費拡大の大きな部分となっているのは兵士・軍人の人件費の増加が背景にある。

――日中間は経済を主体とし、北風より太陽の関係を進めることが重要だ…

 中国は最も日本と友好関係を築きたい国家であるといえる。安倍首相就任後の訪中の際に我々の首相:温家宝が「青山遮不住、畢竟東流去」と古詩をひもといて発言したように中国の東に向かっての流れ、つまり日中関係の潮流は止めることができない。(中国の代表的河川はみな東に流れ、山々を以ってしても妨げることはできないことから)学者として発言するならば、時代はすでに変化している。この新たな時代の特徴は「一体化」だ。日中両国は東アジアを進める原動力となる国家だ。生産力の性質がグローバル一体化によって過去とは完全な別物となっている。欧州の連合は新時代の向かっている方向の一例だ。日本の最大の貿易相手は中国となっており、貿易額は2,000億ドルを超えている。日本の現在57カ月連続となる戦後最長の景気拡大に中国の寄与した部分も大きいだろう。日・中・韓は東アジアの一体化に向かう潮流にあり、個人や一部の人間が変えられるものではない。一部、古い観念の方も残りはするだろう、小泉前首相などにも多少そういった部分が見られた。しかし、一方で安倍首相は特にその発言の中に何度も新たな時代という表現を用いている。彼は年齢も若く、こういった概念を受け止めていけるのではないか。日中韓はそれぞれ東アジア協同体へ関心を集めえており、安倍首相就任以後の日中関係は晴天をさえぎる雲が無くなったように明るくなったと認識している。