総務省は地方債で明確な対応を

総務省は地方債で明確な対応を

参議院議員 大久保 勉 氏



――市場公募地方債に関して、質問主意書を政府に提出された…

大久保 公正取引委員会は今年6月時点において、地方公共団体が発行する市場公募地方債に関して、「共同してシ団の代表者と条件交渉を行う現行の方法には市場に明らかな弊害があるとは認められず、直ちに競争政策上問題となる恐れは無いとともに、独占禁止法に違反しない」旨の見解を採っていた。しかし、8月14日付で同委員会から出された「市場公募地方債の統一条件交渉方式について」と題する文書では、市場公募地方債の発行条件の統一条件交渉方式の廃止に向けた具体的な検討が行われることが望ましい、と前述の見解を覆す内容が示されている。同委員会の文書はかなり強い表現であり、事実上、一年以内に改正が行われなかった場合は、さらに踏み込んで摘発等を行うとの意思表示と見られる。これを受け、総務省は同日、9月債の発行以降は、個別条件交渉方式に移行し、発行額、条件交渉、決定日、払込日、発行条件等について各発行団体がシ団と協議のうえ、自主的に決定するよう検討願う、との事務連絡を発出した。このようにわずか2カ月で当局見解が一転し、またその改正に翌月から取り組むことを求めるのは、発行体泣かせだ。この経過も不透明で、関係者にとっては何が起こっているかの把握もできていないというのが実態だろう。

――確かに性急な方向転換であった…

大久保 最も重要なことは総務省が個別条件交渉方式への移行を検討願う、との事務連絡がなされてから、市場公募地方債の発行条件において、発行利回りに差が生じていることだ。利回り格差は、市場が各地方公共団体の財務内容に基づきデフォルトリスクを織り込んだ値付けを行っていることに他ならない。そして、これを受け政府が地方公共団体のデフォルトを認めるか、認めないかということがポイントになる。市場がデフォルトを織り込んでいることは厳然たる事実であり、私は政府がこれを当然認め、しかるべき対応を採るべきだと考える。ところが、総務省が地方債の購入を検討する投資家に対して発行している案内書を参考にすると、各自治体財政状況の良し悪しにかかわらずデフォルトは無い、との説明を投資家に対して行っている。これは自治体財政が困窮しても財政措置を行うからデフォルトは無い、との見解と受け取れる。予算措置を行うには国会の承認が必要である。総務省が立法府に対する超権行為を行っているのではないか。

――このままでは投資家が被害を蒙る可能性も…

大久保 財政措置も果たしてデフォルトが相次いだ場合に可能なのか、数兆円規模ともなり得る財政措置を総務省がコミットできるか、こういったあいまいな部分を実態と付き合わせると、場合によっては虚偽ないし誤解を招く広告と受け取られてもおかしくない。マーケットにおけるデフォルトの定義では約束した利払いが払われない、つまり期日を遅延すればデフォルトとなる。また、発行体のリストラクチャリングなどもデフォルトだ。夕張市の財政再建プロセスは格付機関の定義するデフォルトに当たる可能性は大といえる。こういった投資家保護の観点に欠けた説明を総務省が目論見書に表記することは金融商品取引法上も違反となる恐れもあり、金融庁の見解を尋ねたい。こういう意味で総務省は護送船団方式であった十数年前の大蔵省に似た、非常に旧式な側面を持っている。

――総務省自体が市場のルールを理解していない…。

大久保 銘柄による格差は市場からのメッセージに他ならない。自治体のガバナンスを強化し、健全財政を促すシグナルと受け止めるべきだろう。こういった市場監視のためのルールが地方自治体の周囲では確立されていない。ある自治体の例だが、その子会社が埋立事業を行っている。地元の金融機関が同社へTIBOR+推定3%という高スプレッドで貸し出しをしているが、これは市の債務保証付きだ。つまり、総務省の言うデフォルトのない2,000億円の貸し出しに高額なスプレッドという形で年間60億円が市の財政から銀行へ移るという状況がずっと続いており、モラルハザードが起きている。選挙で現市長を銀行や土建屋が後押しするなど、利権構造が築かれていることが多い。本来はこれだけ高いスプレッドを受け取っているなら、必要な際は債権放棄をもって自治体の財政再建に協力してもらうなどする健全なリスクとリターンの関係であることが適切だ。

――自治体で財政に対する危機感がまひしていることは大きな懸念だ…

大久保 銀行にはかつて不倒神話が存在した。例えば長期信用銀行の利金債は長銀、興銀、日債銀全く同じ金利水準で売買されていた。その背後にあったのが銀行はつぶれないという前提だ。ところが不良債権問題が浮上し、日債銀と長銀のスプレッドが拡大した。スプレッドは一反拡大すれば二度と戻らず、結局はスプレッドが開き出したことで不良債権問題もさらに明らかになり、銀行のデフォルトが実際に発生した。このような状況が地方債にも起こりつつある。

――12月にかけて公営企業金融公庫をどうするかという議論もある。

大久保 まず大事なのは地方自治体のディスクロージャーを行い、バランスシートを複式簿記、発生主義で作成し、市場のチェックを受けることだ。市場ルールを政府の仕組みにも取り入れなければいけない。例えば、政府が債務を保証する場合はしっかり保証料を取るべきだと財務省とは話している。公営企業金融公庫もいくつか行っているサービス業務で、形式程度のものでもよいから、手数料を取る。同様に引受や保証行為に対しても手数料を取るということを行うべきだ。地方に対して手数料が負担増となるなら、その分は予算化して補助金・交付金で地方に渡してもよいだろう。要はリスク保証行為への対価をしっかりオンバランス化(一般会計で予算化)して、各自治体の財政の健全化に向けて意識を高めることが大事だ。

――各自治体に対し、市場の監視能力を高めることが大事だ…

大久保 行政の担い手や議員が毎日、各自治体の財政状況をウオッチすることはできない。これは市場の専門家に任せるべきで、政治家はその監視を可能とする体制を作ることが大事だ。市場が自治体の財政状況を評価して、運営が悪いと判断したら調達コストが悪化して改善を要求するといった仕組みだ。もちろん、地方には税収格差などが存在するが、それを地方交付税・公付金で是正していくのが国の果たす望ましい役割だろう。