目指すはオンライン総合証券

目指すはオンライン総合証券

SBIイー・トレード証券 代表取締役 執行役員社長 井土 太良 氏



――IPO関与率でトップとなっている…

井土 当社はIPOに関して非常に力をいれて取り組んでいる。もともとIPOの抽選割り当ては当社が業界に先駆けて99年に始めたものだ。当時、当社はインターネット売買は行っておらず、コールセンターだけで対応していたが、我々が想像していた以上に大きな反響をいただいた。その当時はIPO銘柄はプレミアム商品ということで一般の個人投資家の手に届きにくい、ごく一部の大口投資家の対象であったが、現在では誰でも買える状況になり、これもまたオンライン取引の大きな成果であると考えている。当社は2006年4月から9月までのIPO引受関与率で1位となったが、その背景にはもう一つ当社が業界1位となっている株式委託売買代金が関係しているだろう。これは証券会社としての力の源とでもいうべき指標で、お客さまへの販売力を如実に現すものだ。販売力のある証券会社を引受シ団に加えることは発行体にとって条件的に有利になる。ブックビルディングの件数が多ければ、需要の状況をみて決定される公募価格も上昇し、発行体の希望にも沿う可能性が高まるからだ。このため販売力の高いネット証券をシ団に組み入れたほうが有利という理由から、当社の販売力を高く評価いただき、ご指名いただいているようだ。以前はネット証券がシ団に入るといえば、「寄り付きですぐ売られるような結果になるのでは」という意見が大手証券から出ることもあった。しかし、今ではネット取引の拡大と浸透もあり、そういった意見を聞くことも少なくなった。逆に今は大手証券からも発行体に対してネット証券をシ団に加えたほうがいい、とのアドバイスをしていただけるようになっている。

――販売力の実績が評価につながっている…

井土 それだけではなく、引き受けの分野は人間関係といった面も重要である。また大企業といわれている企業へのネット証券のシ団参入は充分とは言い難い。昨今のIPO案件では当社を含めたネット証券をシ団に組み入れるケースが9割を占めているが、残り1割には大企業が多いという傾向がある。伝統的な産業であればなおのことネット証券を組み入れた方が良いと考えており、今後よりご理解いただけるよう努めていく。

――売買代金とIPO参加率が相乗効果を生んでいる…

井土 当社は従来からプライマリーとセカンダリーは車の両輪だと考えている。IPO銘柄の取り扱いが増えればお客様も増え、お客さまが増えるとIPO銘柄の取り扱いもまた増える。また、もう一つ考えられるのはネット販売と対面販売という両輪だ。IPOでシ団に参加しても、IPO以降のファイナンスにも貢献していかなければ意味が無い。IPOはネットで完結できるのだが、POになると対面の販売力が多少必要となってくる。当社の場合はSBI証券と販売提携を結んでおり、対面での販売力につなげている。

――来年にかけて主幹事実績も増えていく…

井土 IPOの主幹事実績は現在3件だ。取引所の審査が厳しくなったこともありIPOの全体的な日程はやや遅れ気味にはなっている。しかし現在進行中の案件もあり、来年以降は増加していくだろう。また、POの主幹事も行いたいと考えており、現在多数の企業に対して働きかけている。IPO案件の場合は該当する未上場会社の管理体制などの見極めが審査の主眼となるが、POの場合は株価の安定操作などを行う必要があるため、よりレベルの高い仕事になるがその分リターンを期待することができる。

――売買代金のシェアをさらに増やす目標は…

井土 さらなるシェアの増加を狙っていきたい。しかし、この部分は悩ましいところで、シェアが高くなりすぎるとシステムリスクが肥大してしまうため、まずはトラブル予防および対応力向上を図らなければいけない。また、取引所ルールでは、市場シェア合計で20%以上の参加者が参加できない状況になったときは取引を停止することになると聞いているため、責任はより重大になる。例えば大証の取引高などを見ると当社のシェアは20%を超えているため、規則通りに運営するならば、もし当社にトラブルが起きた際には大証がストップしてしまうことになるわけだ。

――売買代金で日本一となった勝因は?

井土 一つ挙げるならば手数料の部分があるだろう。ただ、ネット証券各社は安かろう悪かろうでは意味がない。システム向上に向けた取り組みが注目されているなかで、当社のシステムは評価をいただいている。また、方針として、まずは少なくとも競合他社でお客さまに評判のいいサービスはすべてそろえるという取り組みを行っている。結果として、一番良いサービスが、最も安い水準で受けられるようになればお客さまからは自然と評価されるという考え方をとってきた。

――手数料代金の下げもこれでひと段落では?

井土 手数料格差はすでに数十円に収まってきており、確かにそういった面はあるだろう。これからはトータルでのサービスの質が求められている。後発の競合他社でも手数料の引き下げを行っているが、苦戦しているとも聞く。システム開発の悩ましいところは、多方面にわたる開発を同時に行うことが困難なことで、開発したいサービスが数多くあったとしても、まずは一つ一つ完成させていかなければならない。大手ネット証券5社は99年以降、7年かけてようやく現在のサービス水準にたどり着いたわけで、資金力のある大手証券が後発で参入したとしても時間まで買うことはできないだろう。

――夜間取引のためのPTS(私設取引システム)にも参加していく?

井土 来年早々をメドに夜間取引および逆指値を導入していく予定だ。夜間取引のニーズは十分にあると見ている。また、逆指値の人気が高いのも、サラリーマンのお客さまが夜のうちに注文を出しておき、昼間に自動的に取引がされるように、とのニーズがあるからだ。当社の状況を見ても注文の何割かは夜間に出されている。また、夜間に注目されるNY市場の取引時間帯に取引ができること、そして信用取引を可能にする必要があると考えており、これら2つの条件をそろえないと伸びていけないだろう。例えば今の季節のNY市場は日本時間では23時半に開始となるが、NY市場の開始から大引けまで取引可能とするなどの対応も一つ一つ検討していきたい。ただ、PTSでは、市場全体の出来高が昼間の1%を超えてしまうと「取引所化」しなければいけないとのルールがある。この辺りも今後実際に運営していく中でどのように対処していくかを検討していく必要がある。

――今後はどのような進化を考えているか…

井土 当社の目標は、オンライン総合証券となることである。ネットの部分はあくまでも販売力という、一部分に過ぎない。このためにも手数料を下げてシェアを獲得し、その後は販売力を生かした総合証券ビジネスを行う、との長期ビジョンでやってきた。今は第1フェイズのシェアの確保がようやく達成しつつあるレベルで、第2フェイズはコーポレート・ビジネスの拡大を行っていく。この段階になると人、および財務的な体力が必要となってくるため、まずは身の丈にあった規模から徐々に人を集めていくということになるだろう。そういった人材をそろえていくことで、いずれは大手証券に追いついていきたい。