REIT部門で3大プレーヤーに成長

REIT部門で3大プレーヤーに成長

三菱商事 金融事業本部 門多 丈 氏



――金融事業本部は何を目指すものは…

門多 金融事業本部の目指す形としては「総合商社型産業金融」という表現を用いている。総合商社として差別化できる産業金融を提供するという意味だ。我々は最も大きな視点での産業、それを担う企業、そして個々の事業と、各段階に応じた金融をすべて意識しており、それぞれに金融のソリューションを提供することで利益を上げていく。例えば、M&Aは産業・企業・事業とあらゆる段階で、それもグローバルに行われており、今や、企業活動には成長やリストラのために不可欠なソリューションとなっている。金融事業本部の設立は99年で、2000年には新設された新機能事業グループに組み入れられた。この新機能事業グループは金融のほか、ICT、物流、保険、ヘルスケア、メディアコンシューマーを含む。この新規グループは、サービスとソリューションの世界で三菱商事の培ってきた機能をより強化するものだ。

――事業本部の概要は…

門多 金融事業本部は投資、金融企画(アセットファイナンス)、M&Aの3つの部門に150人ほどが所属し、うち20人ほどが海外に駐在する。各部門の下には分野ごとに特化した子会社が設けられており、このため150人の半分ほどは三菱商事から各子会社へと出向している。子会社の社員も合わせれば、総計250人くらいの陣容といえるだろう。各部門のうち、まず投資部門では株式・債券投資といった基本的なものに加えて、ファンド・オブ・ファンズへの投資、不動産ファンドへの投資、国内外のプライベート・エクイティに対してファンドを通じて、または直接の投資といった幅広い投資形態を用いている。次に、金融企画(アセットファイナンス)部門では、不動産の流動化・証券化としてショッピングモールなど商業施設特化型REITや私募不動産ファンドなどの組成・運用を行っている。これは企業の資産戦略へのソリューションと投資家への魅力的な金融商品の提供することを目的とするものだ。また、医療施設のストラクチャード・ファイナンス、リース業や再保険、クレジットカード業も手掛けている。これは従来の商社では金融部門として確立していなかった部分だ。この点、当社のREIT部門は、三菱地所、三井不動産と並ぶ日本の三大プレーヤーに成長した。最後にM&A部門だが、これは我々がアドバイザーとなる側面と自身がバイアウトする投資家となる側面の双方から成っている。これら部門がNY、ロンドン、上海に広がりを見せており、相当幅広く展開している。

――将来一番有望なのはどの部門か…

門多 金融企画とM&A部門はどちらも有望だ。金融企画部門の証券化はグローバルに広がっていけるし、M&A部門も今後の企業の成長戦略・再編でイニシアチブを取ってソリューションを提供していくつもりだ。また、投資部門は金融取引の基本だ。これもファンド・オブ・ファンズやプライベート・エクイティなどオルタナティブ投資の比率を高めており、従来の構造から相当変化している。ここでグローバルの情報をつかむことのできる人材を育てていく。ここでのマーケット感覚がないとその他分野でもなかなか難しい。我々のあり方はこうしてふかんすると、むしろ業界のすきま産業だ。投資銀行、リース、ファンドのいずれでもないが、それぞれの機能を有している。

――コアの考え方はあるか?

門多 考え方の最も基本となっているのはファイナンシャル・ソリューションを産業に与えていくということだ。成長のための資金提供、ベンチャー投資、バイアウト、不動産証券化による企業のBS改善、ショッピングセンターなど商業施設を新設時のファンド・REITを通じた参入などだ。調達の困難なところや資金の不十分なところへどんどんとリスク・キャピタルを提供していく。このため、商事本社の財務セクションとは異なる役割を担っている。

――ひとつの完全なプロフィットセンターだ…

門多 当部門は完全な独立採算制となった一つの営業部だ。ファイナンシャル・インベストメントであり、事業投資ではない。三菱商事の経営資源を用いて、事業に金融的に投資する、また、事業に金融を提供する、との両面を持っている。かつては三菱商事のアセットを我々がかなり使っていた、しかし、現在、我々の扱うREITや不動産ファンドを見ると、外部の投資家からの資金で成り立っており、三菱商事のバランスシート外で事業・運用を行っている。例えば、三菱商事・ユービーエス・リアルティの扱っているREITの資産規模は4000億円あるが、三菱商事の投資はせいぜい100億円だ。

――三菱商事の活動をサポートするよりは投資対象としている…

門多 ソリューションを提供するという点では三菱商事の幅広い活動もサポートしている。営業グループのM&Aや再編を手伝う。REITなどでも物流施設などを商品化したり、開発建設部門がマンションを建設したならばファンドに組み入れたりなど、営業グループとの接点はある。しかし従来の三菱商事の財務が営業グループに資金を提供していたのとは違い、あくまでもとトランザクションベースでの協力をソリューション提供の観点で行っていく。三菱商事内部だけでなく、M&Aアドバイザリーなどは外部とのビジネスを行っている。パラダイムシフト的に考えるべき点としては、リアルな産業とファイナンスの融合が進む中、社内に持った経営、トレード、コモディティなど豊富な分野での経営資源が非常に強い投資のバックグラウンドになるということだ。これら人材のノウハウを吸い上げてどんどん互いにギブアンドテイクで使っていける。これがひとつの総合商社としての強みであり、ソリューションの提供の仕方は投資銀行のファイナンスとも、リース業のビジネスモデルとも違う、独特の金融の形態といえるだろう。

――日本の従来の証券会社・銀行を眺めてどうか?

門多 全くの私見であるが、リテールで膨大な顧客ネットワークを持っていることがまた縛りにもなっている。このため、M&Aなどの業務が独立的に何処までそれら既存の証券会社・銀行の収益になるかは疑問だ。プリンシパルインベストメントは人数が少なくてもできる。このため我々はニッチだから良いという認識だ。今後M&Aや成長のための大企業のエクイティファイナンスにどこまで食い込んでいけるかも課題となる。他方で、投信などリテール分野が伸びていることもあり、要は経営がどっちに顔を向けるかだろう。しかし、我々は今後とも総合商社型で産業・企業・事業へそれぞれソリューションを届けていこうと考えている。

――日本のビッグバン以後の金融情勢の変化を見てどうか?

門多 私見であるが金融ビッグバンは腰砕けになったと思う。英国の金融サービス法ように民間の活力を使った変革にならなかった。タイミング的に国内の証券は顧客企業の業績不振を、銀行は自らの不良債権問題を抱えていたため動きが取れなかった。また、ノンバンク系金融が育っていないことや、本来機関投資家としての役割を果たすべき生保の経営不振も響いた。国際化や投資銀行業務の遅れも著しい。このため日本の企業再編が投資銀行や再生ファンドなど外資が中心に手掛けた。加えて、ビッグバンの狙った市場型間接金融については同意しづらい。銀行といった間接金融にアクセントを置いているということで本当のビッグバンの狙いは何だったのかが薄れ、市場関係者として懸念は残る。金融商品取引法も消費者保護の点が強調されるのみで、リスク・キャピタルの出し手と取り手を多様化しその流れも太くするという発想はほとんど感じることができない。