国債管理政策は市場との対話から

国債管理政策は市場との対話から

財務省 理財局局長 丹呉 泰健 氏



――来年度国債発行額が大幅に削減された…

丹呉 来年度の新規財源債は税収増もあり、「過去最大の削減幅を確保せよ」との安倍首相からの指示を果たすことができた。歳出の方も概算要求基準策定時の財務大臣の言葉を借りれば、「きちっと守って」メリハリをつけている。出来上がった予算を見ると、新規財源債が4.5兆円の減少となっているが、国債が地方財政の債務返済を1.8兆円行っていることもあり、実質的には6兆円を越える新規債務の減額が図られた。また、借換え債では、06年度で12兆円を財政融資資金特別会計から国債整理基金特別会計に繰り入れ、買い入れ消却などを行ったこともあり、8兆円強の減額となっている。財投債も資産・債務改革にしたがって規模を圧縮し、減額となった。この結果、国債発行総額では18年度の当初の165.4兆円に対して143.8兆円と、21.6兆円減額され、減額幅では過去最大だ。これについてはマーケットからも評価をいただけているようだ。とはいえ、なお143兆円という発行総額は世界でも例がない。全体で20兆円減額しても03年度と同じ水準というだけで、全体の規模はまだまだ大きい。また、税収増も毎年期待できるとは限らない。定率減税の縮小などの話もあり、来年以降このようなペースでいける保証はないため、脇を閉めていかねば、という感覚だ。

――消化先別ではどうか…

丹呉 日銀や、年金、郵貯など公的部門は減額している。基本的に日銀乗換えでは、日銀の保有する満期の国債を1年物に乗り換えていただくのだが、買入消却などもあり、これも減額する。また郵貯・年金による引受けも01年度の財投改革に伴う、経過期間の最終年度でもあり半減させた。この結果、公的部門の引き受け額は今年度の31.8兆円が07年度は17.3兆円と、15兆円あまりの大幅な減額となる。他方、若干増加するのは個人向け国債だ。じわじわと個人に浸透してきており、個人向け国債等で1.3兆円くらいの増額を計画している。また、マーケットの関心の高い市中発行額は06年度の118兆円から109.6兆円ということで、8.4兆円減額した。

――国債が減額していれば多様化の圧力は減少している…

丹呉 理財局の国債管理政策は、円滑な国債の発行が第一で、そのためには市場関係者とできるだけ対話し、そのニーズに応えていくことが必要だ。そして我々としても中長期的に発行コストを低減していかなければいけない。対話は主に、プライマリーディーラー、投資家、学者の方と3つのルートを通じて行っている。こうした対話の結果、15年変動利付国債の来年度計画は、今年度当初計画と比べると3.8兆円減額する。TB6カ月物はFBに振り替えることもあり、6兆円程度の減額だ。他方で10年物の物価連動債などは増額してほしいとの要望がある。30年債も多少増額できる。それと、40年物国債についてだが、欧州はすでに発行されている。企業年金や生保などで一部需要があり、学者の方も国内で始めてよいのではないかとの意見だ。ただ、果たしてどれだけ消化できるかとの懸念もあり、まず19年度は発行のためのシステムを整え、状況があえばまた市場と対話しながら発行するというように、段階的に進めていきたい。

――これだけの発行額となればやはり長期金利の上昇が気になる…

丹呉 そのとおりだ。米国の金利曲線は逆イールドとなっており、世界的にフラット化している理由の一つに長期債の供給減が長期金利の上昇を抑制する効果があるということは言えるだろう。また、日本経済に関して言えば長期的に見てインフレ期待が大分無くなってきているとの分析もある。我々も金利のフラット化や逆イールドが起きるメカニズムには非常に関心を持っており、学者の方の話を伺っている。一般的に言えば140兆円の国債発行ということは、1%上昇すれば年間で1・4兆円のコストが上乗せとなる。社会保障など歳出の増加要因がある中で、国債費が重みを増すのは非常に大変なことで、注意する必要がある。ただ、我々としてはあらかじめどのような金利体系が望ましいというようなことは考えていない。

――長期金利を上げないような国債管理政策は…

丹呉 マーケットに対し、安倍内閣が小泉内閣に引き続き、財政規律をしっかり守っていくことを示し伝えることがまず大事だ。この上で市場とよく対話しながら行うことだ。こちらは中長期コストを減らさなければいけないという課題はあるものの、一方で円滑な消化が行われなければいけない。この相反する命題のバランスをとる必要がある。長期金利だけでなく、短期国債の発行量もかなりあるため、金利は全体的にウォッチしていかなければいけない。民間から市場分析官として来ていただいている方とともに仕事しながら、できるだけ官民交流を行い、マーケットで起きている現象やその背後までつかめるように、我々自身も勉強していきたい。市場金利は経済だけでなく、政治などいろんなものが凝縮されたバロメーターだ。基本的な知識だけでなくこれまで以上に多様な情報をキャッチ・分析できる体制を作っていきたい。

――財投の証券化については…

丹呉 様々な課題が残されているが、いずれにしても実施するという閣議決定がされている。勿論、実施の際にはメリットがコストを上回ることが前提ではあるが、まずは証券化を可能にする体制作りを行う。例えば現在の法律では証券化のために信託やSPCといった手段を活用することができない。このため、来年の通常国会に法案を提出する予定であり、これを早く成立させていただきたいと考えている。また法律が成立した後は、すぐさまシステム開発に取り組んでいきたい。初年度であれば事務的な準備もある。事務方からの話を聞くと、諸準備もあるので、開始は早くとも07年10―12月期であり、おそらくは08年1−3月期となるではないか。市場関係者へのヒアリングも踏まえると、証券化の第一回目の規模として、まずは1000億円程度が妥当ではないかと聞いており、予算上は余裕をもって2000億円を計上している。実際に開始するときはコストなど見ながらとなるが、まず07年は証券化が行えるだけの体制を作ることが大切だ。メリットとコストを比較して、メリットが上回れば証券化を実施しうる。証券化市場が成熟して、コストが逓減してくればおのずとその範囲も拡大してくるだろう。今は証券化市場も10兆円に満たない規模だが、我々は決められたことをしっかりやっていく。

――財投の規模はずいぶん小さくなってきたが…

丹呉 資産負債改革で05年を基準に2015年には国家資産の対GDP比を半減させていくことが決定されている。具体的には全資産を140兆円ほど圧縮し、うち国有財産については庁舎・宿舎、未使用国有地等、日本郵政や日本政策投資銀行などの株の売却などにより、12兆円程度の売却収入を見込んでいる。よって約130兆円が財政投融資を中心とした圧縮額となる。07年度の財投計画は06年度が15兆円であったものを14.2兆円としているが、これをベースとしていけば2015年には110兆円程度の圧縮ができる。財政融資資金の貸付金圧縮のポイントの一つは証券化を実施すること、もう一つは引き続き全体規模をしぼっていくことだ。政府として決まった枠組みは堅持しながら、各分野への重点化・効率化を行いながらメリハリをつけてやっていく。例えば、今年も奨学金、国立大学付属病院の施設整備に必要な資金については増額している。ただ、財政投融資は01年の改革から5年が経過している。年明けの財政制度等審議会財政投融資分科会で、単年度ごとの財投編成だけでなく、そもそもの財政投融資の基本論からやる必要があるとも考える。例えば地方公共団体もこれまでは絶対破たんはないという前提で話されてきたが、再生法制の検討の中で債務調整などが議論され、また、公募地方債の例月発行が個別条件決定方式となったことで各都道府県の間でスプレッドに格差が出ている。このような環境の変化に合わせ、我々もしっかりと議論を行っていかねばならない。