行革と通関量の増加に対応し使命果たす

行革と通関量の増加に対応し使命果たす

東京税関 東京税関長南木 通 氏



――東京税関の管轄エリアは…

南木 東京・埼玉・群馬・山梨・新潟・山形、これに加えて成田だ。埼玉、群馬などの内陸県は保税倉庫などの設置があり、一部では通関業務もあるため、我々の管轄となる。この管轄エリアが日本全体の輸出入貿易額に占めるパーセンテージは、輸入で3割近く、輸出は2割強で、日本一だ。海港・空港をあわせた港別の順位では、輸出・輸入の両分野とも成田が圧倒的な首位となる。輸出だけを見ると、第2位は自動車輸出が支える名古屋港だ。輸入では、大消費地である東京を抱えた東京港が成田に次ぐ。これらの港で申請される輸出入をリスクに応じて検査し、許可している。またそのほかに、東日本の国際郵便をカバーしている東京国際郵便局の中にも東京税関の外郵出張所が設けられており、インターネットによる個人の海外取引増加の影響が出ている国際郵便物の検査・課税が行われている。

――輸出入は増加している?

南木 ここ何年も名目GDPは伸びていないのだが、輸出入量は着実に増加している。これはグローバル化の進展により経済に占める輸出入の規模が年々増加しているといえるだろう。日本の製造業は中国などに工場を移転し、基幹部品を輸出して完成商品を受け取るといった取組みを多く行っている。このため、輸出入の割合が高まっている。とはいえ、厳しい行政改革の中で、職員数を拡大することなく、業務を執行しなければいけない。現在、東京税関の職員は2400人、全国では8500人程度だ。公務員全体では5年間で職員を5.7%削減という政府方針だが、税関職員は若干増員している。これは税関が治安面でも重要な位置を占めるためだ。最近のトピックとしては北朝鮮の影響が挙げられる。北朝鮮はマンギョンボン92号という有名な船があって新潟港との間で往き来していた。冬の波の高い時期を避け4月〜11月まで年間で20回近く往復していたのだが、去年の七月の弾道ミサイル発射により、同号が入港禁止となった。10月の地下核実験により輸入は一切禁止、輸出も奢侈品については禁止、となっている。このため北朝鮮の迂回輸出入がないように税関は細心の注意を払っている。

――大量の輸入品のなかで検査能力を保持することが可能なのか…

南木 100%補足できているか、というとそうでない部分もあるかも知れない。しかし我々は限られた人員と資源の中でリスクの高いものを集中して行うといった形で対処している。来年度予算では全国の税関で45人の人員増となる。また、迅速な通関、適正な課税、輸出入禁止物品の摘発という税関に課せられた使命のバランスが重要だ。もし徹底的にセキュリティーレベルを向上することを求めるならば大幅な増員は必要だ。一方で、我々は迅速な通関も心がけている。納めるべき税金を納めてもらい、特許権の侵害などにかかわる知的財産侵害物品を差し止めるなども行っている。脱税の摘発では、例えば豚肉の差額関税というものがあって、年末にもある事業者が120億円弱の関税ほ脱を行ったことに対して東京地検に告発を行った。また、偽のブランド品もバッグ類など毎日相当数見つけており、倉庫に入りきらないほどだ。確かに米の9・11テロ事件以降はセキュリティーへの要請が高まっている。行財政改革が求められているときに、どこまでできるかというジレンマを抱えているというのは我々にも勿論あるが、今与えられた人員で常にベストを尽くしている。

――通関量の増加と、景気回復との関係は…

南木 景気が回復してくれば確かに輸入は増えるだろう。輸出がどうなるかは、海外生産比率の上昇などもあり、一概には言えない。ただ、世界景気との連動性もある。中国での生産も基幹部品を日本に頼っているケースが多くあり、日本からの輸出とそこからの再輸入など、双方に関連する。その一方で、金額ベースで見ると成田の輸出入は増えてはいるが、量的には昨年並みで、より高価なものにシフトしている傾向があるようだ。10年以上前であれば成田は空飛ぶ魚市場などとも言われ、量的には輸入の4割弱を生鮮品が占めていた。現在ではそれが2割弱となっている。これは冷蔵技術による船舶輸送へのシフトや、国外メーカーの電子部品・コンピューターなど高付加価値商品に置換されているということがかかわっているのだろう。

――関税については…

南木 輸出品は無税だが、輸入品への関税は商品により高いものもある、また輸入の際は消費税も課税される。関税の分類はすでに9000分類以上と、非常に細密なルールが設けられている。この中でも、皮革製品や農畜産品などは関税率が比較的高いものが多い。コメへの関税などというのは、最も高いものに分類されるだろう。このような措置が日本の農業等の国内産業を守っているが、勿論各国ではお互いに輸出している商品に対しての関税を引き下げてほしいとの要望を出している。古くはGATT、WTOや最近ではFTA・EPA交渉など貿易自由化に向けた試みが絶えないのはそのためでもある。関税を無くし、本来の競争力に基づいた貿易を行うことが本来の経済理論としては効率的かもしれないが、国内産業の保護もまた重要だ。関税は国内産業保護を担う制度として認められてはいるものの、国際社会全体でなるべくその引き下げをしようと試みている。

――関税を含め、東京税関における税徴収の規模は?

南木 関税が全国で9000億円強といった規模で、内国税(関税・とん税・特別とん税を除いた国の税金、ここでは消費税が主)も併せた全体では全国の税関で5兆円弱だ。このうち東京税関が2兆円程度を占めている。平成17年度で言えば国の税収が全体で約50兆円であるから、税関はその1割程度を徴収しているといえる。

――今般は港の24時間化や、より迅速な通関など話題に上っている…

南木 成田などはすでに24時間体制で通関を行っている。東京港地区については、早朝と午後5時以降も通関業務を行っているが、これを24時間行うということは現状では需要もそこまでないことから行っていない。東京港地区の時間外通関業務には晴海出張所ならびに大井出張所が対応している。このたび羽田空港が国際空港化する運びだ。また、日韓シャトル便に積んだ貨物をすでに扱っているが、安倍首相の訪中時には上海―羽田間での日中シャトル便の開始が決まっている。これらに対応するため、晴海・大井体制から本関へ時間外の通関業務を集約して、24時間の通関体制を作ろうという取組みを行っている。この点、通関の24時間化などを通じた国際貿易の円滑化は今後とも重要な課題だ。また、輸出入の申告手続きや、港湾の手続きなどを政府全体として一本化した新しいシステムにしていく取組みも進んでいる。実現すれば物流の効率化に繋がるだろう。