合併を機に中小証券の生存モデルを模索

合併を機に中小証券の生存モデルを模索

丸和証券 取締役代表 青木 俊樹 氏



――この度、合併までの道のりは…

青木 ネットウィング証券と経営統合を行うことで昨年12月26日に合意を見た。07年の10月1日には持ち株会社:M&Nホールディングスを設立する。当社が190名、ネットウィング証券が80名といった規模の2社が統合することになる。統合の際の株式交換比率については今後、3月決算の数字を用いながら5月中旬までに協議していく。6月の株主総会で決議されれば、10月に持ち株会社設立というスケジュールだ。また、その翌年の10月1日までの1年間は、更に理想的な経営体制へと移行していく期間として位置づけている。

――合併のきっかけは…

青木 もともと旧興銀系の兄弟会社ということで、ネットウイング証券の佐藤社長とは頻繁に意見交換をしていたが、その中から出てきたことだ。両者がともに旧 興銀出身であるということに加え、みずほコーポレート銀行からのアドバイスがあったことも影響している。新光とみずほの合併と合流していくかというお尋ね に対しては、「規模・環境が違いすぎる」ということもあり、現実的ではないと考える。

――統合の理由は?

青木 金融ビッグバン以降、自由化がどんどん進展してくる中で、中小証券の生き残りは今後ますます困難になって来ると思われる。そうした基本認識の下、相場 の好転しているときにこそ、前向きな統合に踏み切るべきだろうと考えた。統合の大きな目的は経営体力の強化だ。具体的に言うと、リテール営業を中核とする 中小証券が、経営環境の変化に適応し生存し続けていくための最適なビジネスモデルを構築していくと言うことだと考えている。顧客と接する営業フロント、そ して営業を支えるミドル・バックの競争力向上をいかに進めるかに集約されるだろう。

――合併し合理化が出来ると…

青木 まず、フロントの課題だが、丸和証券は対面営業に特化し、他方でネットウィング証券はネット取引に重点を置いている。どう両機能を融合させていくかがポ イントになろう。対面営業の最大のポイントは、顧客へのアドバイス機能だ。顧客の資産運用に対する関心の高まりに対して適切な、付加価値の高いサービスを 行えることが、顧客からの評価に繋がり、それが我々の生存にもつながる。その逆もまた然りだろう。このため、従来のブローカー的な業務に加え、アドバイス 的な業務を更に強化していく必要がある。当社では、ファイナンシャルプランナーとテクニカルアナリストの両方の資格をセールス担当者全員に取得させること を目指した中期計画を策定・実行しており、すでに計画の8合 目まで到達した。セールス全体の信用力を高めるとともに、顧客の要望にあわせて株式や投資信託を組み合わせて包括的な資産運用をプランニングし、更に、信 用取引を利用される顧客にはテクニカル面からのアドバイスを行う、など一段上質なサービスを提供していく。この効果を定量的に測定することは難しく公表し てこなかったが、実際にネット証券と我々の対面営業を利用する顧客の信用評価損益率を比較すると、対面営業でアドバイスを受けた顧客の方が5%前後上回っ ているという状況だ。公表されている3市場の評価損益率と比較しても、当社の方が3%程度上回っている。これは、我々のアドバイス機能の向上を通して顧客の方々の利益が増加、同時に顧客の高い信頼・信用を得ているという、双方の目的を高い水準で達成したよい例だ。他方で、今後重視していく必要があるのは、ネット取引というチャンネルを通してリテール業務を更に高度に補完していくことだ。団塊世代が一段と増加し運用への 関心が高まっているが、この世代はPCへの習熟度が前世代よりも高い。そうなれば、ネット取引の重要度が一層増してくるだろう。今までのネット取引は、短 期での投機資金といった印象を与えるものだった。ゲーム感覚的に取引しているとも言えるだろう。しかし、ネット取引は新しいマーケットを作ったという意味 で、決して無視できない。例えば百貨店やスーパーが通信販売を行うというビジネスモデルに進出しているのを見ても、百貨店での対面と通販・ネットが両立し ていると言う現実がある。同様に我々も対面営業が無くなるということはないと考えているが、だからといってネットは無視してよい存在ではない。利便性を求 めた新たな市場のすそ野の拡大発展というのは充分考えられる。二つの営業ツールをうまく活かしていくことが大切だ。

――ネットの位置づけは経営モデルのあり方を決める重要な判断だ…

青木 対面営業とネット取引の双方を行っている各社の現状をみると、どうしてもどちらかに比重が傾いていく傾向が強い。我々はこの両業務を上手く両立させて いく方式を模索していきたいと考えている。野村證券はネット専業証券会社であるジョインベスト証券を立ち上げたが、別会社化し、対面営業とは一線を画して いる。こうしたことを参考に、今後はどのようなビジネスモデルが我々にとって最も競争力の高い仕掛けになるのか、模索していくつもりだ。対 面営業では、従来の株式営業と投資信託の販売を中核とした資産運用型サービスへと質的向上を図っていく。その延長線上には、今後増加すると見られる富裕層 に対するラップ口座といったサービスも念頭に置く必要があろう。目先の対応としては、米国のインディペンデント・コントラクター(独立契約社員)ではない が、ワンマンオフィスを立ち上げ効率的な、地域密着型サービスを実現させたいと考えている。いずれにせよ、対面とネットを上手に組み合わせた、典型的なリテール営業のあり方を模索し、実現させたいと考えている。

――バック業務についてはどうか…?

青木 中小証券においては特に、ミドル・バック業務の効率化は大きな課題だ。コンプライアンス、内部統制は徐々にレベルの高いものが要求され、相応のコスト負担が 生じる。現在、2社が個別に持っているミドル・バック業務をどのように統合していけば合理化・効率化できるか、これを見極めていくことが必要だ。これから より厳格なコーポレートガバナンスが求められる中で、ミドル・バック業務の更なる底上げは生き残りの大きな鍵となるだろう。ミドル・バック業務機能のあり 方にメスを入れることは困難を伴うが、統合はこうした事が出来る良い機会だ。この際、皆で議論を重ねながら、素晴らしい・効率的な会社を目指して、思い 切った改革を行っていきたい。やや口幅ったい言い方であるが、営業フロントとミドル・バックのリシャッフルを思い切って行い、これらを効率的に統合化することによって、中小証券の生き残りに向けた一つの「典型的なビジネスモデル」の会社が出来るよう、理想を追い求めて頑張っていきたい。