一段の成長に向け第2ステージへ

一段の成長に向け第2ステージへ

ソニー銀行 代表取締役社長 石井 茂 氏



――ネット銀行はかなりの成長をとげてきた…

石井 6年前の創業時からネット環境の改善につれて顧客のすそ野も拡大し、当社の口座数も徐々に増加した。1月末で口座数は約48万口座、預金残高が7,400億円となっている。1口座あたりの平均預金残高は150万円程度で、資産運用のための口座という性格が強い。150万円という数字は既存の銀行における個人口座の平均とあまり変わりない。当社のお客様は30〜40代が中心で、その後に20代、50代と続く。お金を借りていただく、預金もしていただく、そして運用もしていただけるお客様として、30代を中心にアピールしたこともあるからだろう。当社の口座は「MONEYKit」というサービスブランド名が表すように、お金のための道具箱として資産運用のための便利なツールを用意してあることが特徴だ。例えばお客様がご自分の資産全体を把握するための資産管理ツールや、お客様の資産運用スタイルに応じて金融商品のアドバイスなどを行うアドバイスエンジン、市場に近い金利と為替レートを実現した外貨預金サービスなどを提供している。口座維持手数料はかからないので、お客様にはこれらの機能やサービスを自由にご利用いただける。また、現金の入出金が可能な提携ATMも拡大し、利便性の面でも向上を図ることが出来ている。このような姿勢をご評価いただき、当社も着実に拡大を果たしてきたが、その一方でメガバンクもネット・バンキングに力を注ぎ始めているというのが現状で、気は緩められない。店頭からATMへお客様を誘導したように、ネットへの誘導を行うことは銀行のコストを軽減することにもつながり、今後は各行ともネット・バンキングへの取組みをさらに強化していくことだろう。メガバンクは店舗運営の多くで派遣社員を活用していることもあり、店舗からネットへの移行自体にも大きな困難は伴わないと見ている。

――次のチャレンジは…

石井 創業からこれまでよりも、むしろこれからが大変だ。今は創業時の事業計画の達成がみえ、次の成長へ向けて新しい展開を図る第2創業というステージだ。これまでは開業時の計画にしたがって粛々と進めてきた感がある。来年度には証券会社を傘下に持ちたいと考えているが、これで当初の計画はほぼ消化することとなる。預金額で6,000〜7,000億円が損益分岐点だと以前から言い続けてきたが、まさに今は分岐点を乗り越えたところだ。ここから飛躍するにはさらに工夫をしなければいけない

――証券会社を傘下におく目的は?

石井 我々は従来から資産運用のための銀行と自らを位置づけている。お客様の資産運用ニーズに応えていくには投資信託だけでは品揃えとして不充分と見ており、株式まで扱いたいと考えている。証券子会社を持つことにより、ソニー銀行から傘下の証券会社までをインターネット上で区切り無く遷移できるようにし、お客様がシームレスにソニー銀行のサイトから株式の注文も出来るようにしたい。つまり、いちいちドアを開けて外から隣の証券会社に行くといった印象を与えないように工夫を凝らしたいと考えている。その一方で、いわゆるネット証券で行われているような短期売買の取引をお客様に勧めたいというわけではない。我々が念頭に置くのは、長期的な資産形成のパートナーであることであり、お客様にも長期投資の視点に基づいた株式投資をしていただくことが一番と考えている。また、年金保険など、銀行での販売が解禁された部分ではソニー生命の商品も販売している。さらに解禁が進めば、ソニー生保・ソニー損保といったグループ会社とのシナジーもより高められるだろう。お客様に多様な資産運用のための道具を提供できるよう、各制度の解禁にもそのつど対応していく。

――今後の経営戦略は…

石井 まずは来年度に始める証券だ。その後は資産運用サービスが充実してきたこともあり、決済分野におけるサービスの拡充を視野に入れている。これはインターネット上での売買に伴う個人と法人間の決済を中心に考えている。ネットショッピングの出来るサイトに、ソニー銀行と運輸・物流会社が加わればインターネット上でのショッピングはすべて完結する、というイメージを持っていただければ最も分かりやすいだろう。住宅ローン残高も2,500億円に達したが、これを出来るだけ早く預金の5割程度まで伸ばしていきたい。預貸率5割が目指すところで、そうなると少し様相は変わるだろう。住宅ローンについては、金利上昇のリスクもあり、どこかで証券化を行うことも視野に入れている。法人への貸し出しに進出していく予定はあるかとの質問もよく受けるが、これについては今のところ考えていない。

――住宅ローンが伸びているわけは…

石井 利便性、および金利に基づいた結果といえるのではないか。住宅ローンを申し込むために来店する必要が無いということは利便性を大きく高めている。繰り上げ返済がインターネットで自由に出来る点もまた魅力だろう。繰り上げ返済が自由という部分は、ローンを一度利用されたことのあるお客様に好評を得ている。繰り上げ返済のために1日会社を休んで銀行へ行くというのは煩わしいものだ。また、金利は住宅ローンだけでなく預金においても、基本的に全てマーケット金利に連動したつくりとなっており、相対的にお客様に有利な利率を提供している。例えば普通預金の金利も0.200%と、無担保翌日物に迫るような水準だ。

――収益の柱は…

石井 現在、当社の収益の柱となるのは外貨預金も含めた預け入れと有価証券運用や貸し出しの利ざや、つまりは預貸のスプレッドだ。その他は為替の売買益や、投資信託の販売手数料や信託報酬などが挙げられる。新たなサービスをそろえるたびに小さな収益の柱が増えていくといったところだ。

――ネットバンクはさらに便利になる…

石井 我々は「銀行を持ち歩く」とのコンセプトのもと、昨年より携帯電話での取引を可能としてきた。情報処理技術と金融は非常に相性がよい。お客様からすると、従来は一つの銀行の特定の支店でしか入出金は出来なかった。これが同じ銀行であればどの支店でも入出金可能となり、そして提携銀行であればどこでも、銀行であればどこでも、と拡大を繰り返していった。そして銀行からATMへ、さらにはこの拡大がインターネットによって自宅、携帯電話によって個人の手元にまで届いている。我々は今後も「MONEYKit」というサービスブランドを通じて、資産運用のための金融商品・サービスを提案し続けることで、お客様がより自由で主体的に資産形成に取り組める場所を提供していきたい。