会計基準の国際合意が着実に前進

会計基準の国際合意が着実に前進

金融庁 総務企画局 審議官(国際担当) 丸山 純一 氏



――現在、EUとの間で会計基準、監査に関する議論が進められている…。

丸山 会計基準では、EUが05年1月から、EU市場に上場する際には、国際会計基準(IFRS)を使用するよう域内企業に義務付けたが、さらにEU域外の企業に関してもIFRS又はこれと同等の基準の使用を求めようとしている。当初、今年1月からの適用となっていたが、会計基準のコンバージェンスの動きが日米EU等の間で進展していることもあって、適用開始を2年間延期し、09年1月から実施することになった。日本としては、現在の日本の会計基準がEU市場で使用できるよう、検討を重ねている。

――日本の会計基準をIFRSに合わせなければならないと…。

丸山 欧州委員会は、IFRSと同等の会計基準であれば、認めるとしている。これを同等性評価と呼んでいるが、05年7月に欧州証券規制当局委員会(CESR)より、日本の会計基準はIFRSと全体的には同等であるとの評価をうけた。ただ、CESRは26項目の違いも指摘している。この違いを埋めるために、昨年、企業会計基準委員会(ASBJ)において工程表が作成され、これに基づき作業が進められている。

――26項目すべてを変えなくてはいけないのか…。

丸山 そういうわけではない。このため、日本の制度の背景等をEU側に理解してもらうために、対話を続けている。一方で、CESRから今のままの会計基準では、補完計算書の作成が必要と提案された項目が3つある。1つは、M&Aなど企業結合時の会計処理の手法である持分プーリング法の項目だ。日本の会計基準では、「持分の結合」と見なされる場合に、持分プーリング法を認めているが、IFRS及び米国会計基準は、使用不可となっているため、日本と欧米で大きな違いとして指摘されている。2つ目には、特別目的会社(SPE)の連結処理についてだ。日本の会計基準では支配力基準を採用しているが、SPEのうち一定の条件を満たしているものについて、連結の対象外となることを明示している。一方、IFRSではSPEを含む全ての対象について、原則通り連結することを求めている。しかし、本年3月、連結対象外のSPEの注記に関する適用指針が公表され、開示範囲が拡大し、一定の進捗が見られる。3つ目が、国外の子会社の会計処理の点だ。IFRSは子会社の会計方針は、国内外問わず、親会社と統一するよう求めているが、日本の会計基準では、国外の子会社に関しては、各国の会計基準でも良いとされていた。但し、この点については、昨年5月、国外の子会社の会計方針も親会社のものと統一するよう改訂されている。

――一筋縄ではいかないような項目だ…。

丸山 その通りで、特に持分プーリング法は、平成15年における会計基準策定の際に財界、会計士、学識経験者とともに議論を重ねた上で、厳しい条件の下での適用を認めたばかりだ。昨年9月の中間決算では、この手法で処理した会社は1社もなかったものの、3月の決算でこの方法を使う会社も出てくるかもしれない。EUや米国がプーリング法を廃止しているからといって、導入してすぐになくすという議論にはなりにくいかもしれない。もう一つの問題は、税務基準と会計基準が乖離するケースも生じるが、そういった場合は、企業サイドでなかなか受け入れにくいという事情もあろうかと思う。

――一方で、EUと米国の間でも、会計基準の同等性の議論が進められている…。

丸山 現在、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)とで、コンバージェンスに向けた議論を行っている。さらに、会計基準設定主体と財務書類を受け入れる当局が、日本、EU、米国においてそれぞれで異なり、それぞれが議論を進めているので、お互いの情報交換が必要不可欠となっている。EUと米国の議論の進捗状況を見ながら、話し合いを進めていく必要もある。例えば、ある項目についてEUと日本が合意したとしても、EUと米国が合意できなければ、日本との合意があまり意味を持たなくなってしまう可能性もある。また、ある点で当局同士が合意しても、会計基準設定主体が、異なる方向性をとることも考えられる。この点、EUが4月にも中間報告を公表する予定なので、その内容を確認して問題を整理したい。

――国際会計基準はどちらかと言えば投資家寄り、日本の基準はまだ発行体寄りの印象を受ける…。

丸山 必ずしもそうではない。むしろ、投資家と一言に言っても、いろいろな投資家がいるのではないか。会計基準は市場がグローバル化するなかで、究極的には、将来のどこかの時点では、統一した基準が作成されるであろう。しかし、現状では各国の歴史やマーケットの現状を反映しているため、これを同等性の評価という形ですり合わせをすることで、あくまでも各国の基準を使っていく方向になっている。

――一方で、監査の面はどうか…。

丸山 監査に関しても、EUは08年6月末以降、EU内において、監査人が法定監査を実施するための要件を定め、EU以外の第三国の監査法人に対しても、EU当局による監督を受ける、或いはEUと「同等」の第三国の監督を受けることを求めている

――この作業も大変そうだが…。

丸山 会計基準と違い、EUと日本でそれ程大きな差はないので、作業自体は比較的効率よく進むのではないか、と見ている。また、日本も今年に見込まれる公認会計士法の改正によって、EUと同じく、海外の監査法人が日本で資金調達を行う企業を監査する場合には原則として日本の監督を受けることになる。この場合、お互いの監督体制を認めることができれば、それぞれの国で監査人の監督を効率良く行うことが可能になる。

――この議論が前に進めば、会計基準、監査がユニバーサルスタンダードに近づいていく…。

丸山 会計基準と監査が、EUと日本、さらに米国の間でまとまれば、そういう分野での国際的なコンバージェンスがさらに進むことになり、世界経済の発展につながる。ただ、日本でも、当局や会計基準設定主体だけでなく、学識経験者、経済界、会計士などの関係者があり、それぞれが意見を持っている分野もあるので、それを調整し、かつ米国とEUとも調整していくということで時間も労力も必要だ。とはいえ、綿密に着実に前進していることは広くご理解いただいていると思うので、今後とも、各界のご協力をお願いしたいと思っている。