天下り根絶法案の成立を

天下り根絶法案の成立を

内閣府特命担当大臣 公務員制度改革担当 衆議院議員 渡辺 喜美 氏



――公務員改革法案が今国会で成立する見通しは…。

渡辺 15日から、衆議院の審議が始まった。総理は14日、今国会で成立を、と党幹部には伝えているようで、見送りということはない。ナローパスであることは確かだ。

――公務員改革法案で様々な報道があるが、人材バンクに求人企業が集まるのかということが最大の関心事だ。求人企業が少なければ、公務員削減は難しい…。

渡辺 人材バンクは、受け皿になってくれるところを探す。今までは中小企業にとっては、国家公務員は縁遠い存在だった。帝国データバンクの調査では、2万770社の企業のうち、天下りを受け入れたことがない企業が大半だ。しかし、これからは天下りではなく国家公務員の能力と実績を評価する形となるので、予算も権限も全く関係のない形で、オープンに行う。国家公務員ブランドがまだ生きている分野はある。例えば、IT・ベンチャーなどの新興企業にとって、ニーズが高いのは危機管理の分野。危機管理を公務としてきた職員は大勢いる。今までは、役所の人事の延長でしか行っていなかったので、本当に狭い世界で天下っていた。今度はオープンで行う。外交官も大した天下り先はなかったが、今は世界経済とつながっている企業・地域は、とにかく景気のいいところが多い。ならば海外のことを良く知っている役人は、結構ニーズがある。予算と権限のない役人は、でくのぼうで何の役にも立たない、とよく言われるけれども、私はそんな悲観論には立たない。

――人材バンクが対象とする職員は…。

渡辺 全職員が対象だ。いずれ民から官へのルートも人材バンクで扱う。例えば、金融庁は民間から来ている人は相当数いる。また金融庁の業務は民間人がいないと、ほとんど成り立たない。証券取引等監視委員会も半数は民間人となっている。そういう民から官へのルートにも使う。このため、一部で言われている「ロートル専用天下りトンネル」は大間違い。まさに名前の通り官民人材交流を行う機関とする。いま天下りと言われているのは、各省が人事の一環として行っているため、嫌々ながら行く人もいれば、受ける人もいる。はめ込みのようにポストに人を埋めていく形なので、国民サイドから見れば、押し付けのように見えてしまう。だから、各省の斡旋を全面禁止する。今までは、公益法人や独立行政法人、民間企業といった天下り先が自分の役所の子会社のような感覚となっていた。最初は9割近く非営利法人に天下って、2年間の喪が明けたら、民間企業へ行く。この民間企業への斡旋も人事当局が行っているが、それも禁止し、違反したら懲戒処分とする。ただ、再就職を禁止するわけにはいかないので、中立的な交流センターを使って行う。

――民間人が官に入っても、2年間の天下り規制で出ていくことができないとの意見がある。今度のシステムでは、その問題は解消できるのか…。

渡辺 センターに斡旋機能を一元化するのは、今から約4年半後になるが、そこから先は国家公務員法103条の規制は撤廃される。ただ、行為規制はかかる。つまり、現職時代に自分で職探しをしてはいけない。だから、センターを使う。自分で現職の時に職探しをしてしまうと、公正中立な職務を行っているのかと、疑われてしまう。だから、一定のポスト以上の職員が外に出る場合は、人材バンクで探してもらう。

――人材バンクで職が見つかれば、明日からでも新たな職場に行くことができるのか。

渡辺 人材バンクが給与を支払うわけではないので、仕事がなくなったら給与も払わない形となる。いずれにしても、役人は終身雇用で死ぬまで役人、という時代ではない。人生50年の時代で、恩給もあった時代には、再就職する必要もなかった。退職金でアパートでも建てて、悠々自適の生活もできた。しかし、今は国家公務員共済年金も厚生年金と統合される時代であり、人生80年の時代でもあるわけだから、公務員は死ぬまで再就職するな、とは言えない。また、民間も公務経験のある人の知恵を生かす場面もあるし、逆に民間から公務の世界に入る機会は、金融庁のみならずもっと増えるはずだ。また、そうしなければ回っていかない。これだけ世界が激変しているのだから、それに対応し、官民の垣根を低くする。と同時に、官民癒着防止は口利き規制などを通して行うというわけだ。

――07年度から民間人を1割入れるとの報道もあったが…。

渡辺 課長以上の官官交流を1割以上行うということはすでに達成した。これから実施を考えているのは、官官だけではなく、民間からの人材も含めて公募を実施するのはどうか、ということで、その判断は各省庁に委ねている。民から官のポストを公募すると、ますますポストが少なくなってしまって、ますます肩たたきが必要になってしまう、と後ろ向きの発想をする人がいる。しかし、今度の改正で、我々は現在の年功序列を止め、能力実績主義の体系を導入する大転換を図っている。なので、後輩に追い抜かれる職員がたくさん出てくる。とはいえ、民間ではどこでもある話であり、追い抜かれても定年まで働く道もあるのだから、悲観することはない。

――民間からの官への人の導入は達成率や目標などはあるのか…。

渡辺 現時点では、目標は作っていないが、いずれ検討課題に上ってくる可能性もある。中央官庁により、天下りを斡旋しているのが毎年2000人ぐらいと言われているが、この人たちが指定職クラスで、1500万円もらっていたとすると、合計300億円となり、これだけあれば、新人を1万人雇える。つまり、定数削減5年間で5.7%純減の目標とともに、総人件費の抑制を進めていく。

――早期退職をうまくいかせるような機能を人材バンクにつけるということか…。

渡辺 各省の人事の一環ではなく、あくまでも再就職支援。本人の能力と実績を市場価格で評価してもらう。現在のような、本人も受ける側も断れない形から、本人も受ける側も断れる制度に抜本的に改めていくのが、新たな制度だ。

――人材バンクに民営化や市場化テストの導入は考えているのか…。

渡辺 これから始める制度であるため、そこまでは考えていない。現在、ハローワークの市場化テストの検討を進めており、まずはそこからだろう。

――外部監視機関として、民間人を5人程度登用するとの報道があったが…。

渡辺 外部監視機関は、役人OBに監視させると、トンネル監視機関になる恐れがある。コンプライアンスチェックとなるので、弁護士などのコンプライアンスに詳しい民間人を考えている。中央に5人の委員会をおくほか、各章に監察官をおく。

――人材バンクが活性化すれば、国家公務員制度が活性化される印象を受けるが…。

渡辺 一変する。本音のルールが変わる。今まで天下りや年功序列人事、キャリア・ノンキャリアの昇進に差をつけることも、法律のどこにも書いていない。慣行・カルチャーとして行われていた。このプラグマティックルールを大転換するということ。キャリア・ノンキャリアを区別しなくなる。

――法律に書き込まれている…。

渡辺 能力実績によって、給料とポストが決まると法律に書き込んである。人事として行っている斡旋も法律で禁止としている。だから、この法律は「天下り根絶法案」と呼べる法律だ。天下り推進トンネルセンターというのは大誤解だ。今行っている天下りは軒並み捕まえてしまうのだから。ただし、官民の垣根は低くする。

――当然、公務員は反対している…。

渡辺 今までのやり方と、がらっと変わってしまうのだから、最初は戸惑ったと思う。しかし、天下り斡旋、フリンジベネフィットを期待して、公務員を志望したという人はあまりいないだろう。多くの若手は、政策を実現する、公のために尽くしたい、と高い志を持って、公務員になるのだから。

――むしろ40代で辞めてしまう人が結構いるのではないか…。

渡辺 人材流動化といった観点からすれば、霞ヶ関が年功序列で終身雇用との慣行を守り、人材を死蔵しかねないようなシステムが続くよりは、はるかにいい。