「京都議定書の達成に向け、国民の意識向上を」

「京都議定書の達成に向け、国民の意識向上を」

参議院議員 中川 雅治 氏



――安倍首相が世界に先駆けて、二酸化炭素量の半減をサミットで打ち出した…。

中川 安倍首相は「世界全体の温室効果ガス排出量を2050年までに半減すること」を提言したが、これはある意味では当然のことだと思う。自然界が吸収する二酸化炭素量は、現在、排出している二酸化炭素量のちょうど半分に当たる。つまり、年間排出される二酸化炭素の半分は自然界が吸収せずに蓄積されてしまっている。

――それが温暖化につながっている…。

中川 その通りだ。50年後に二酸化炭素排出量を半減させれば、二酸化炭素量が均衡する。ただ、それまでは二酸化炭素が地球に蓄積され続けることになる。だから、二酸化炭素量の半減だって甘い、という人もいる。京都議定書で決めた日本の排出量削減は、2008年〜2012年の平均排出量を1990年の排出量と比較して、6%減とするとした。ところが、現時点では逆に8%増えている。

――ということは、あと14%減らさないといけない…。

中川 6%削減もできなくて8%増加させているわけだから、2050年に半分にするというのは、容易なことではない。さらに、中国やインドなど、これから排出量が増えてくると予想される国も含めて、2050年に半減させるのは、本当は大変なことだ。

――温室効果ガス半減への手立ては…。

中川 例えば、家庭電気製品のエネルギー効率を上げる、ハイブリット車の性能をさらに良くするといった程度では半減はできない。二酸化炭素削減に向けた抜本的で新しい技術開発を推進する必要がある。具体的には、ハイブリット車より進んだ、リチウム電池による電気自動車、発電も原子力発電に切り替えるだけでなく、フランスにて実験されている国際熱核融合施設といったクリーンエネルギーへの転換が挙げられる。それから、二酸化炭素の固形化技術も検討されている。それも効率の良い固形化をして、海底に埋める、石油を掘った後に入れるなど行えば、かなりの二酸化炭素量を減らせる。

――日本だけでできることではないようだが…。

中川 国際熱核融合施設のように、国際的に取り組まないと難しい。二酸化炭素の固形化にしても、コマーシャルベースに乗せることを考えてしまうと、どうしても特定の企業が行うことになる。それでは限界があるので、世界の英知を集め、抜本的な技術開発を進める。とりあえずは採算ベースを離れ、人類生存のために、各国が分担金を出し合うべきだ。これは今の人たちが払うべき、負の遺産を作った罪滅ぼしのためのお金とも言える。

――国際協力の実現の方策としては…。

中川 まず、このまま二酸化炭素が増え続けたら10年後、100年後どうなるのかを、全世界の人たちが深刻に受け止めなければならない。先の話だ、何とかなるだろうではすまされない。現に温暖化が要因と言われる世界の異常気象現象は日々起こっている。そして、科学技術の開発に、資金を惜しんでは駄目だし、国民の環境意識も高めなければならない。そういった中で、安倍総理がサミットで提言し、米国も京都議定書後をにらんだ様々な発言をした。世界各国がポスト京都議定書をにらんで、主導権を取っていこうと積極的に環境問題に取り組み始めることを表明してくる。それは大変いいことだと思う。

――米国は京都議定書には批准していないが…。

中川 私は米国がそんなに環境意識が低い国だとは思わない。しかも、環境技術に関する助成が大きい。州レベルでは、日本より進んだ環境対策を行っているところもあれば、排出権取引を行っているところもある。ホワイトハウスのトップの人たちも日本の政治家に比べて、非常に環境意識が高い。環境意識が高い政治家であっても、ホワイトハウスの環境問題のトップの専門家と渡り合える日本の政治家は本当に少ないと私は思う。

――日本の政治家は環境問題に関心が薄いのか…。

中川 最近でこそ、環境は国民の最大の関心事ということで、選挙で演説をしても、みんな環境問題について、非常に関心を持って聞くようになったが、環境問題は票にならないという意識を政治家がまだ持っている。公共事業をいかに引っ張ってくるか、公共事業費削減の流れをいかに止めるか、ということに熱心な議員も相変わらず多い。

――一方で、京都議定書が守れなければ、莫大なお金を払う事態も想定されるが…。

中川 本当に深刻だ。私は京都議定書の批准時の環境省事務次官だったこともあり、この行く末は本当に気にかかるところだ。原子力発電の稼動率を高めることはぜひ必要であるが、それだけで温室効果ガスの6%の削減は厳しい。現在、途上国に対し、先進国の進んだ環境対策技術・省エネルギー技術等の移転促進を進めている、クリーン開発メカニズム、「CDM」と呼ばれる取り組みが行われている。日本もCDMを行い、それが日本の削減量にカウントされれば、京都議定書の達成は可能だとの見方もある。しかし、他国から排出権を買うことになれば、今はそういったマーケットが無いため、非常に高いお金を提示され、日本がそれを飲まざるを得ない状況になる。しかも、このような形で削減率の帳尻を合わせることになれば、国民の理解は得られないし、日本の財政事情を悪化させる。さらに地球全体として、二酸化炭素は減らないという最悪の事態を生む。そのような可能性も見えており、非常に危惧している。

――どうして、ここまで増加してしまったのか…。

中川 産業界は非常に良く削減している。産業界の温室効果ガスの排出量は減っているのだが、問題は運輸部門と家庭部門だ。運輸部門はトラックなどの輸送と個人のマイカーも含めた車が原因で、二酸化炭素の排出量が増加している。家庭部門で言えば、一つ一つの電化製品は非常に効率良くなっているが、台数が増えている。テレビやクーラーが一家に何台もある時代になった。しかも、独身者が増え、世帯数が増えてしまうために、家庭電気製品の台数は増える。メーカーも必死の開発をして、環境にいいものを作ろうとするインセンティブは非常に高い。しかし、それを上回って家庭の消費が増えている。

――京都議定書を達成するにはどうしたらいいと考えているのか…。

中川 こまめな対策を積み上げていくことはもちろん必要だが、手入れをされた森林によって、二酸化炭素は3.9%吸収されるので、森林の整備を行うことも必要だ。車もハイブリットが増えているから、エネルギー効率は良くなっているけれども、台数は増える、大型化はする、走行距離は延びる、ということで結局、排出量は増えてしまっている。だからといって、車を使うことを直接制限することはできない。鉄道や船に輸送も振り替えるような政策が必要だ。加えて、CDMによる発展途上国の温室効果ガスの削減をして、それを日本の削減量にカウントすることを積極的に行うことが重要だ。国民の環境意識を高めるとともに、今考えられている対策をすべて着実に実施することが必要だ。最後にただお金を払って、排出権を買うという最悪の選択はやめるべきだ。そして、万が一達成できなければ、2050年までに半減するといった提言も、空虚なものになってしまう。だからこそ本当に真剣に取り組んでいかなければならない。