『公平』『透明』『納得』を税制改革の柱

『公平』『透明』『納得』を税制改革の柱

衆議院議員 古川 元久 氏



――今夏の参院選は年金が争点になる…。

古川 年金はもちろん大きな争点だ。その一方で、年金の制度論になると、税制改革が絡んでくる。私は従来から訴えているが、最大の社会の構造改革はやはり税制改革だ。小泉前首相は、さまざまな構造改革に手をつけてきたが、税制改革だけは行わなかった。したがって今回の選挙では本来は、税制改革の議論が行われるべきだと考えている。

――年金の財源の問題もつまるところは税金だ…。

古川 社会保障制度改革は財源を税にするのか、保険料にするのか、世代間負担の問題などが絡むため、税制改革抜きに抜本的な改革はできない。また税制のあり方も根源的なところで問われている。これまでの税の考え方の背景には、国は自国内の人や企業には上から税金をかけられることが大前提となっていた。しかし、グローバル化に伴って、それが逆に人や企業がどこで税金を払うか、選ぶ時代になっている。国は人や企業を囲い込めない。このような状況に対応する税制のあり方を考えると、消費税の税率の話だけではなく、他の税も含めて根本的に見直すべきだ。

――どのような税制改革が望ましいと…。

古川 税制のあり方を考えるうえで、基本的な発想や着眼点を、企業が顧客を引きつけようとするように、どうしたら納税者になってもらえるかといった観点で行わないと、結果的に必要な税収も確保できない。私は2年前から民主党の税制調査会長となっているが、税制の基本原則について、納税者の視点に立ち、「公平」「透明」「納得」の3原則を掲げるべきだと唱えている。

――3原則の意味は…。

古川 一般的に税制の基本原則は「公平」「中立」「簡素」の3原則といわれる。しかしこれは、税をかける当局から見ている原則といえないだろうか。これからは、納税者の視点に立った税制をつくらなくてはならない。納税者の立場に立って、どのような税制ならば「公平」といえるか、どのような税制ならば納税者の目から見て「透明」であるといえるか、どのような税制なら納税者が「納得」して税金を払おうとするか。こうした視点で税制のあり方を根本から見直す。日本の税制はシャウプ勧告以来、消費税の導入はあったが、基本的な発想と大きな枠組みは変わっていないので、この3つの原則に立ち、今の税制をゼロベースで見直していくべきと考えている。

――具体的なプランは…。

古川 社会保障制度ともリンクする話ではあるが、所得税で言えば、現在の所得控除から税額控除に変え、かつ還付付きにする。この方法は英国で行われているし、米国でも最近税額控除に変わりつつある。日本では低所得者対策として所得控除を拡大してきた歴史があるが、所得控除を拡大しても、引ける所得がある人はいいが、引ける所得がない人は何のメリットもない。しかも、実は控除額から言うと、所得控除は高額所得者にプラスに働く。それを税額控除に変えて、かつ引ききれない税額分は還付する。現金で給付するとなると、低所得者は、逆に所得税を納めるどころか、もらえることになる。

――格差問題の解消にもつながる方法だ…。

古川 努力して成功し、稼いだ人の足を引っ張る必要はないし、引っ張るべきではない。格差で問題なのは、下にどんどん落ちていく、下への格差拡大をどう防ぐかということだ。税額控除の良い点は、所得が増えたからといって還付が急になくなってしまうわけではなく、現在の生活保護のように働かないインセンティブは働かないということある。私たちは還付付税額控除を導入する過程で、生活保護制度との統合も視野に入れ、真に必要な人には手を差し伸べつつ、自ら働いて自立しようとするインセンティブが働くようにしていきたい。これが所得税改革の大きなポイントの一つと考えている。

――消費税は…。

古川 消費税についても、カナダですでに採られているが、最低生活に必要な消費税分に関しては税額控除の形で現金で還付する形にすれば、複数税率をとる必要はないと考えている。これを分かりやすく例えれば、100g1,000円の肉に対して、900円分は消費税を負担してもらうが、100円分は消費税を還付する形にするということだ。そうすれば100g100円の肉を食べている人は、消費税を負担しないが、高い肉を食べている人は、それに応じた消費税負担をすることになる。逆進性対策として、この形が最もふさわしいのではないか。複数税率を採用すると、例えば食品が軽減税率になれば、松坂牛もばら肉も同じ軽減税率になってしまう。高額所得者は一般的に食生活にもお金をかけるが、貧しい人は贅沢な食べ物を食べられるわけではない。このため、食品への軽減税率適用は一見公平に見えるが、必ずしもそうではない。むしろ複数税率を導入すると、軽減税率で税収が減る分、基本税率を上げざるをえなくなってしまう。

――日本の法人税は高い…。

古川 法人税について言えば、いったいどこまで法人段階で課税ができるのか、を考えなければいけない時代にきている。米国の税制改革論議では、将来法人には課税できなくなるのではないかと考えて、法人段階ではなく個人の段階で課税する方向に議論が進みつつある。そもそも法人形態が、投資組合や1円での株式会社の設立など我々がふつうにイメージしている「会社」などとは大きく変わってきている。法人形態のあり方自体、どのような形態で設立するのが最も節税になるか、という観点で形態が選ばれているふしがある。実際に多くのコンサルタントのメインの仕事は、節税のアドバイスだという話さえ聞く。

――節税に知恵を使うのであれば、新しいビジネスを生むのに頭を使ったほうがいい…。

古川 節税対策にエネルギーを注ぐ必要がなく、純粋に新しいビジネスを生み出すことに専念できるような環境を税制においても用意すること、いまそれが求められている。だからこそ、従来の法人税のかけ方で今後とも本当にいいのかを考えるべきだろう。すべて個人レベルで課税する方向性へ進むか、あるいは法人段階で、極力経費などは認めず、粗利に近いところに、その代わり、かなり低い税率で法人税をかけるなど、なるべくシンプルな税制にして、節税しようなどと考えないような税制にするほうが、これからの企業活動にはプラスになる。特にこれからビジネスを立ち上げようとする人たちにとっては、そのような税制が好ましいのではないか。

――とはいえ、企業の負担は税金よりも社会保険料の割合が大きく、その対策にも追われているのが現状だ…。

古川 社会保険料の負担は、主に正社員や長時間雇用者に対して起きるので、それが非正規雇用者を増やし、かつ非正規でも時間が細切れになっていく。そこからワーキングプアのような問題も生じている。これは企業にとっても、労働者にとっても不幸なことだ。私は社会保険料の労使折半というやり方自体を根本的に見直す時期に来ているのではないか、と考えている。しかしそれは企業が社会保障に対して一切負担をしないということを意味しない。企業にとって、年金や医療などの社会的セーフティネットが整備されていて、労働者が安心して働くことができる環境になっていることは、良質な労働力を確保する上で大きなメリットとなる。これはあらゆる企業がメリットを受けるわけだから、そのメリットに応じた負担を、労使折半の形ではなく、社会保障税というような形で、例えば法人税に1〜2%上乗せしたり、賃金総額のような外形的な基準に対し税負担を求めるような形で、保険料負担という形から、税での公平な負担という形に変えていくことを考えるべきだと思う。

――環境税については…。

古川 ドイツでは“グリーン・タックスリフォーム”という税制改革が行われたが、こうした傾向も検討に値する。“バット課税、グット減税”という言葉に象徴されるように、具体的には、環境に悪い、環境に負荷をかけるもの、あるいは健康に悪いものに税金をかける、という形での税負担を求めてもよいのではないか。エネルギーに対する課税も、これだけ地球温暖化が問題になっているので、エネルギーを使うと二酸化炭素が出るといった点に着目して税金を負担してもらう形に、現行のエネルギー関係の税を見直しても良いだろう。ドイツでは環境税をかける代わりに、社会保険料を減らすことが行われた。これからの時代に、納税者に納得して税金を払ってもらうためには、課税の根拠自体もいままでとは違うところに求めていくことが必要になるだろう。繰り返しになるが、税制改革の議論を単に消費税の引き上げ論議だけに終わらせてはならない。トータルとして税制の仕組みを変えて、その新しい税制の仕組みの元で、それぞれの税の負担水準をどうするのか、こうした思考過程の中で、消費税の税率水準も議論されるべきだ。ぜひともそうした本当の抜本的税制改革の議論を巻き起こしていきたいと思っている。