平常時移行で社員教育を重視

平常時移行で社員教育を重視

セントラル短資 代表取締役社長 大西 義久 氏



――短期金融市場の感想は…

大西 日銀に勤務していた時期に、外為マーケットを相手にして以来、15年ほど経ったところで、再びマーケットと相見える機会ができたという感慨がある。短期金融市場では、この6年間、量的緩和、ゼロ金利という時代が続いた。金利機能が発揮できない時代だったために、短資業界には相当苦労があった。セントラル短資は01年4月に、名古屋短資、日本短資、山根短資の3社が合併して誕生したのだが、その直後の01〜02年度は最も市場環境が悪かった。金融機関の業況も02年度がボトムだと思うが、それがちょうど3社合併した直後の時代だった。景気自体は02年初をボトムに回復し、それにやや遅れる格好で金融機関の経営基盤がしっかりしてきた。それに加えて、去年3月の量的緩和の解除と、去年7月、今年2月の金利の引き上げがあった。私は昨年の9月に、顧問としてセントラル短資に入ったのだが、市場環境としては良い時期に入ったのではないかと思う。

――最悪期と直近と比較すると、ビジネスチャンスが増えてきた…

大西 必ずしもコール市場の市場規模が急激に増えているわけではないが、何しろ「無かった」金利が「出てきた」ということの質的な意味は非常に大きい。インターバンク市場に加え、最近はオープン市場や債券レポ取引の分野も増えている。オープン市場はFB、TB、CD、CPなど昔に比べかなり商品が多様化している。業況が悪い時代は、インターバンクが極端に悪かったが、それをオープンである程度補ってきた。今は、オープンに加え、インターバンクも戻ってきたので、これから前向きにとらえていけるのではないか。

――今はオープン市場がメインの稼ぎ頭なのか…

大西 現在は、インターバンク市場の収益と、インターバンク以外のオープン市場や債券レポ市場などの収益が半々ぐらいとなっている。また投信販売も行っている。こうした品ぞろえには、セントラル短資を支えてきた先輩方のさまざまな努力があったと思っている。市場環境が悪いなかで、とにかく収益を上げなくてはいけないということで、さまざまな側面で非常時の体制を取らざるを得ない状況でもあった。それが、マーケットが一応平常に近い状況に戻りつつある現在、非常時モードから平常時モードへの転換が必要になってきている。そこで、私は特に若い社員の教育を重視したいと考えている。ここ数年は、社員教育をしているゆとりはなかったのだが、よく考えてみると、顧客にわが社を使ってもらえるかどうかは、情報提供を含めて、私を含めた社員一人ひとりの資質にかかっている。

――短資の仕事も、基本はサービス産業だ…

大西 そうだとすると、やはりもう少し若い社員を中長期的に育成することに力を入れたい。社員の育成にはお金がかかるのも事実だが、もっと充実させたいと考えている。

――もっとネームを世間に知らしめたり、上場の必要性は感じているのか…

大西 今のところ、上場の話はセントラル短資本体では具体的に考えてはいない。ただ、当社はいくつかの外為子会社を持っていて、中国のプロジェクトが推進中だ。私は1981年に日本大使館の職員として勤務していたときから、ずっと人民銀行との付き合いを続けてきた。中国人民銀行の最大の悲願は、中央銀行として金利機能を使って、中国経済をうまくコントロールすることだ。ところが現状では、短期金融市場の規模だけは大きくなったが、なかなか金利形成がうまくいかない。その要因の一つが、ブローカー、つまり取次者がいないことが挙げられる。

――つまり、プレーヤーがいないということか…

大西 市場のインフラがまだ十分ではないということである。中国では人民銀行自身が2年ほど前に、マネーブローカーのノウハウ取得を目的に、外国の企業を呼び込むための法律を作った。それに基づいて、既に欧米系2社と中国の機関が合弁の仲介会社をつくっている。当社は、私が昨年9月に顧問で入った2週間後にCITIC(国際信託投資公司)グループとの間で、中国におけるマネーブローカー会社設立契約に調印した。現在当局(銀行業監督管理委員会)からの認可待ちになっている。私自身は、日銀時代に外為市場に関わってきたし、中国との長いつきあいの中で、人民銀行の短期金融市場活性化のために貢献出来たらと考えていた。当社のプロジェクトは、私の先輩が種を蒔いてこられたものだが、結果として私にとっても良い機会だと思っている。

――中国はいわゆるブローガレッジという概念が、さほどまだ定着していないようだ…

大西 私が最初に中国と関係した1981年ごろは、金利は「資本主義のしっぽ」と言っていた。要するに金持ちが貧乏人を搾取するのが金利だと考えていた。社会主義から見れば、「金持ちが貧乏人にお金を貸して、なぜ金利という名の余計なお金を取るんだ」という考え方だ。今は金利機能の発揮ということで、この辺りについては十分、分かってきている。しかし、手数料の概念が完全に定着するにはなお時日を要するように思われる。

――その他の子会社は…

大西 証券子会社や外為証拠金取引の会社(オンライントレード社)がある。いずれも順調に伸びているが、とりわけオンライントレード社の昨年来の伸びが著しい。

――マーケット的には、どこか強化しようと考えているところは…

大西 インターバンクも、仮にさらに金利が1、2回上がれば、今まで低金利下で運用を躊躇していた先の運用が期待できる。市場規模が膨らむ中で、少なくとも現在のシェアは維持していきたい。また、インターバンク市場の規模が拡大するような金利環境であれば、債券レポやオープン市場も拡大するはずであり、両者に対する顧客のニーズに機敏に対応する必要があり、どちらにより力を入れるかという問いに答えるのは難しい気がする。ある顧客が資金余剰の顧客だとすれば、コール・手形市場や債券レポ、オープン市場等を見比べながら運用方法を決定されるはずである。そうした顧客のニーズに対し、当社のサービスを機敏に提供することが必要であり、各商品を分断するのではなく、総合的に商品を選んでもらえるようなアプローチができればよいと思う。

――昔に比べて、ダイレクト取引が為替にも出てきているし、短資会社としてはある意味やりにくい時代になってきている…

大西 要は顧客ニーズを踏まえて、当社のサービスにどれだけ付加価値をつけられるかということだと思う。顧客の資金運用・調達ニーズに対し、自信を持ってアドバイスができるスキルを当社自身が身につけるしかないと思う。

――リサーチ能力を伸ばすことや、短期だけでなく、長期のファンデングに寄与するとかいくつか考えられる方向性があるが…

大西 やはり情報提供が重要であり、この面を強化していきたい。最近は、日本銀行のホームページを見れば、さまざまなことが分かるようになっている。展望レポートにしても、毎月の金融経済月報にしても、詳細なものが公表されており、少なくとも事務方の考え方はかなりの程度推測できるようになっている。

――情報が充実している…

大西 特に若いころ、調査統計所で実際に景気分析を担当していた人間から見れば、なんとなく、その資料を作った担当者―私は今やその人のことは知らないが―の気持ちが非常によくわかる。つまり、公開された情報だけで、相当のことがわかる気がしている。多少リスクはあるが、お客様にも私の考えを伝えていきたいと思っている。

――ということは、社長自らが強力な日銀ウオッチャーとなっている…

大西 そういうつもりでいる。顧問の時に、時間が十分あったので、かつ自分が、情報サービス局長のときにホームページを主管していたこともあって、それを朝からなめるように見ていた。そうすると、少なくとも、事務方の本音は十分出ていると感じている。これを顧客サービスにも活かしていきたいと考えている。