〜波乱相場を読む〜

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緊急記者座談会



――サブプライムローン問題に加えて、4〜6月期のGDPは市場予想を大幅に下回った…。

 前期比0.1%成長、年率換算で0.5%ということで、市場予想の年率換算1.0%前後と比べ、かなり低調というイメージだ。一方で、消費者物価指数(CPI)は、ガソリンなどの値段が大幅に上がっているにもかかわらず、まだマイナスが続いている。このため、日銀は8月の追加利上げ実施を見送らざるを得ないだろう。

 仮に8月利上げに踏み切って、世界恐慌の引き金にでもなったら、世界中から袋叩きだ(笑)。サブプライムローン問題は、そういった要素を含んでいる。

 日本の金融機関で、サブプライムローンを運用している向きは少ないと言われている。とりわけ、低格付けの商品を直接運用している向きは少数だろう。しかし、ヘッジファンド経由で実質的に運用している金融機関もあるため、ヘッジファンドの運用がマイナスとなったり、最悪の場合は破たんしたりする可能性もあるから、そうなると、日本の金融機関の経営に影響を与える。中でも中小金融機関は、運用難を補うためにヘッジファンドの運用比率を高めているから、信金や信用金庫クラスで経営不安のところも出てくるかもしれない。

 そうは言っても、日本の場合、バブル崩壊による金融不安を経験したことで、大勢として不動産投資には慎重になっており、かつ、証券化商品や海外進出に出遅れていることが幸いしている。ちょうどバブル崩壊の時の三菱銀行のような感じかな(笑)。

 ただ、社債や円建外債などでも、サブプライムローンの影響を受けて値崩れしている。また、CDO(債務担保証券)も要注意だ。このため、今のまま相場が回復しなければ、世界の金融機関は今年ないしは今年度の決算で、それらの損を計上してくるだろうし、ある程度積極運用していたところは赤字決算を避けられない。日本では、地方経済の停滞と相まって、地域金融機関の再編といった展開につながるか否かが注目されよう。

――大手では野村証券が700億円の余り損を計上したが、それ以外のところは…。

 大和SMBCでは、サブプライムローン絡みは運用していないといっていたし、日興CGはシティグループとの関係があるものの、損もないし、そうした商品の販売もしていないと言っていた。邦銀系の大手では、新生銀がみずほC銀がごく少額の損を発表しているが、先ほどAが言ったような大勢に影響は無いだろう。大勢に影響が出るとしたら、欧米の金融不安→金融市場の混乱→市場変動商品の下落→評価損の巨額化といった展開だが、これも欧米ほどには考えにくいと思う。

 市場変動商品の下落という点では、円高と相まって外貨建てのファンドや外貨投資を積極的に行っていた個人に影響が出てくるのではないか。4〜6月期の個人消費は、前期比年率1.4%増と、まずまずしっかりとした水準だ。しかし、地方税引き上げやガソリン価格上昇などの影響は7〜9月期にかけて消費の手控え要因として出てくるだろう。これに加えて、投資信託や外貨運用でも痛手を被ってくれば、消費マインドはかなり冷えてくる可能性がある。

 短期金融市場では、前週後半から、サブプライムローン問題の拡大により資金の囲い込みが行われている。金融不安が起きた際の対応策として、自社(行)の資金だけはショートしないように資金をプールする動きで、かつての日本の金融不安や9.11の際に起きた。これにより短期金利でもさらに短い期間の金利、1カ月以下の金利が上昇していることから、市場が8月利上げ観測を止めていない証拠との報道を一部のメディアで流しているが、これは間違いだろう。

 市場では8月利上げはおろか、11月利上げも微妙になってきているとの見方がされている。それは、8月に見送られるとすると、9月は資金需要が強い時期だし、今年は郵政民営化もあって金融市場は混乱しやすく、利上げしやすい状況ではない。10月は月初に日銀短観の発行が予定されているため、短観の内容が改善していれば利上げを実施するであろう。しかし、今のような金融市場が世界的に混乱しているなかで、かつ原油価格が高騰を続けている状態では短観の改善はおぼつかないのではないか。また、内閣府が実施している景気ウオッチャー調査もこのところ4カ月連続して景気判断が悪化している。となると、11月利上げだが、この月は7〜9月期のGDP発表があり、前述のように個人消費が下振れる可能性がある。

――そうなると福井日銀総裁の任期中の追加利上げは2回はおろか、1回もできないことになる…。

 日本の今の成長率から見ると、後1回ぐらい利上げし、日銀の政策金利である無担翌日物金利を0.75%に引き上げても良いように思う。しかし、ガソリン価格が急騰していてもCPIが前月比マイナスを続けていることを勘案すると、利上げは行うべきではない。というよりも、日銀はどうして物価が下落し続けているのかよく分析すべきだ。そうした分析がきちんとできずに利上げすることは、「盲、蛇に怖じず」と同じで、バブル崩壊や金融不安を煽った時と同じような失敗をしかねない。

 日銀は年2回、CPIの見通しなどを発表しているが、これは単なる評論家的見通しなのか、それとも、その見通しが外れたら責任を取る見通しなのか。あるいは、そのようなCPIにするというインフレターゲット的な見通しなのか、よく分からない。恐らく日銀のことだから評論家的な責任を伴わない見通しだろうが(笑)。それにしても、CPIの見通しが下振れてきているにもかかわらず、その分析をきちんとできずに利上げするとしたら、「アンビリーバブル」だ。

――国債相場は…。

 指標の超長期国債(固定利付10年債)でみて、1.8%を中心に2.0〜1.5%のレンジ相場をなお継続するだろう。日本のバブル崩壊もそうだったが、住宅の問題は個人消費だけでなく、金融機関の経営にも影響して、ジワジワと一般企業の業績にも響いてくる。サブプライムローン問題は、証券化されているため米系金融機関への直接的な影響はかつての邦銀のようなことはないが、世界に分散されているため、その分、たちが悪いという見方もできる。

 株式相場は当面様子見だろう。しかし、円相場と同様にこのサブプライムローン問題だけをとってみれば、金融不安の時とは逆に、日本は比較対照的には買いやすい。このため、円キャリートレードの巻き戻しの動きが出ている円相場が先行する形で日本株価は2万円をメドに、徐々に買い直されてくるのではないか。円相場は1ドル110円ぐらいを見ておいて良い。

――やはり、私が兼ねてから主張しているように、資産価格も金融政策のターゲットの1つにすべきだろう。方法は工夫するにせよだ。