アジア展開を強化

アジア展開を強化


大和証券SMBC 代表取締役社長 吉留 真 氏


――4−6月期の決算を振り返ると…。

吉留 去年と比べて、幾分今年のほうが良く、特に金融市場部門が好調だった。

――環境が良かったということか…。

吉留 マーケットはほとんど横ばい状態だった。ただ、日本の経済は企業業績が好調で、それがプラス要因として働いた。また、昨年度と異なる点として、海外、特にアジアが伸びてきている。わが社でも、関連する分野、アジア株取引は4月・5月が大きく伸びた。リテールでは、アジア向け投信や中国や香港に上場している株の売買が一段と増えている。

――最近の大手証券は、マーケットに左右されない経営に変わっている…。

吉留 当社ではプリンシパルインベストメンツ、いわゆる自己資金を投じたビジネスが大きく育った。もちろんリスクも大きいが、一方でリターンの果実も大きいこともある。

――プリンシパルインベストメンツの場合、例えば国内企業と中国や韓国などの比重は次第に海外にシフトしている…。

吉留 今のところはまだ、日本国内が大半だが、今後、シンガポールや香港などに投資案件が増えてくると、当然そういったものに対する投資も増えてくると考えている。

――M&Aの部分でも、以前から力をいれているようだが…。

吉留 ニューヨークのセージェントという投資銀行に大和証券グループ本社から約2割、60億円ほど投資した。この会社と大和証券SMBCは事業提携し、アウトイン・インアウトの案件を増やすことを考えている。7月に私がニューヨークに行った時にも、セージェントの会長、社長をはじめ役員の方々と会って、今年のビジネスや拡大戦略など、意見交換した。日本でのセージェントの知名度を上げるため、東京、大阪、名古屋の主要都市で、パーティーを10月に実施する予定だ。

――M&Aでは、銀行の協力で成果がかなり上がっているようだが…。

吉留 銀行からの紹介案件は大型で数も多い。M&Aだけでなく、ブローカレッジの面などでも随分協力してもらっているので、シナジー効果が上がっている。M&A、IPO、ブローカレッジ、ストラクチャードファイナンスなど、協働は多岐にわたり、さまざまな案件がうまくいっている。

――IPOも去年はナンバー1となった…。

吉留 いくつか大きな案件があったこともあり、おかげさまでトップになることができた。タカタ、出光興産、アコーディアゴルフ、などの大型案件が取れたことや件数も多く、ホールセールの面において、業界でのプレゼンスが確立できたと思っている。

――今年のIPOは、去年の反動もあって、少なくなっているようだが…。

吉留 もともと今年度のIPOには、大きな案件はないことは分かっていた。現在は来年度以降の案件をターゲットに絞って、準備を進めている最中だ。

――SBでは一昨年トップ、昨年はみずほに次いで2番目だった。

吉留 今年度も4−6月の数字を見ると、みずほ証券がトップだが、銀行債を除くと、ほとんど同じ規模となる。SBは銀行系証券が頑張っており、競争は厳しい。レート競争になることも多く、販売にも影響が出ることがあるので、それを考慮しながら進めないといけないという面がある。マーケットの健全性から見ても、各社があまり無理しすぎると良くない。マーケットの健全性が保たれるようなレベルでの勝負だと良いのだが、無理しすぎるとマーケット全体のルールを崩してしまう。まさしくそれが課題だ。

――銀行系証券はボンドでは力をつけているが、エクイティではまだまだ弱い。御社は銀行との提携で、ボンドも強いし、エクイティも伝統的な力があり、相当メリットだ…。

吉留 ファイナンスを行う際のエクイティストーリーの立て方は一日の長があると考えている。どのようなファイナンスが最適なのか、その辺りの経験を我々は相当持っている。また、アドバイスの仕方やIRを組み合わせたような展開にも力を入れている。リテールの販売力なども含めた総合力が銀行系証券と比べて、違っていると思う。

――ホールセールだけを見ると、銀行との連携が上手くいっているという点で、野村証券を上回っているようにも思うが…。

吉留 野村さんは野村さんで非常に攻めているという印象だ。我々も幹事先だけでなく、新しい先への食い込みを図りたい。さらに新商品の開発力、昨年でいえば、新日鉄のハイブリット証券など、他社を一歩リードする新商品を次々と生み出していきたい。

――ジャンル的に見て、今後どこに経営資源を注力していくのか…。

吉留 2つあって、1つは、今拡大しつつある海外をどうするかという点だ。エクイティのブローカレッジの面では、営業面において、特にアジアの株式部門は急ピッチで人員を増やさないといけない。もう一つはシステムの整備。システム投資とシステムに関わる人員の増強。また、プリンシパルインベストメンツにかなり資金が必要となると考えている。

――システム投資は難しい。どこの会社を選ぶかで優劣も決まってくる…。

吉留 ボリュームが非常に大きくなっているので、ボリュームをこなすことと、正確に受発注を行えるようにする。さらに、フロントだけあっても仕方がないので、フロントとミドルとバックのところの整合性をつけていかなくてはいけない。時間との勝負と人の増強の問題と両方ある。人の問題はやはり大きい。

――金融商品取引法が9月30日から施行されるが、それに対する心構え、対応は…。

吉留 社内的にも何回も研修会、勉強会もやっている。役員にも徹底するために、役員会議でもそういう講習を行っているが、要するに今までの常識では駄目だということだ。きめ細かくやらないといけないということだ。私はいつも言っているのだが、ルールだけ守っていればいいという問題でもない。

――法令遵守とともに倫理観も必要だと…。

吉留 相手を見て、倫理観を持って、業務を行うことが重要だ。どんな法律を作っても、抜け穴は必ず出てくるので、自分の中で善悪を判断してやることが重要だと思う。

――今グローバル化ということで、銀・証の垣根の見直しが出ている…。

吉留 実際、銀行業務、証券業務がほとんど似通ってきている。垣根が低くなったというより、同じ業務を行っているようだ。直接の株の取り扱い、預金ができないなどの違いはあるが、実質的に垣根は低くなっている。

――銀・証の一体化は、むしろ歓迎ということか…。

吉留 我々はすでに銀行と一体となったビジネスを以前から進めているので、全く影響はない。それよりも、とにかく今、アジアを中心とした海外のビジネスが非常に大きくなっているが、ここを着実に育て上げていくことが大切だ。また、いかにして社員のモチベーションを上げていくのかが私の役目だと思っているので、忙しい中でも、基本はしっかり守りながら、社員をまとめていき、内にも強く、海外にも積極的に展開できるグローバルなインベストメントバンクに当社を飛躍させたいと考えている。