東京市場の魅力と国際性をアピール

東京市場の魅力と国際性をアピール

金融庁 国際担当審議官 丸山 純一 氏



――11月8日と9日に東京で行われた「IOSCO東京コンファレンス」を終えて…。

丸山 「IOSCO国際コンファレンス」は2004年のニューヨークを皮切りに、これまでフランクフルト、ロンドンで開催され、4回目の東京コンファレンスで初めてアジアが会場になった。サブプライム問題が世界的に注目されていたこともあって、全体の感想としては、2日間とも大いに盛り上がり、大成功だったと感じている。そもそもIOSCOという組織は専門委員会が核になっていて、会計や流通市場、ヘッジファンドなど5つの常設委員会がその下にあり、それぞれの常設委員会からあがってきたものに基づいて意思決定を行っている。「市場規制―競争、収斂、そして協調」をテーマにした今回のコンファレンスの5つのパネルも、各常設委員会に対応した内容となっている。

――なかでも盛り上がったのは…。

丸山 それぞれ盛り上がった。特に盛り上がったのは、パネル1「会計・監査における収斂」、パネル2「取引所間の競争と統合」、パネル5「オルタナティブ投資に対するアプローチ」といったところ。今回のような国際コンファレンスは、総会などの専門委員会とは趣向が異なり、専門委員会の人たちが、銀行・証券や会計の関係者など民間の人たちと意見交換をしようというものだ。ちょうどサブプライム問題がらみでいろいろ起きた後だったので、民間の人たちはどう考えているのか、当局としてはこのような見解を持っているなどといったことをお互いにすり合わせていく場になり大いに参考になった。双方、率直に意見を戦わせることができ、海外の参加者からも非常に高い評価をいただいた。それと、今回のコンファレンスは、すべて英語で行ったというのも好評の一因になった。もちろん、同時通訳は入れたが、私が行った総合司会をはじめ、パネルディスカッションもすべて英語で行った。市場のグローバル化を受けて、今回初めて海外から参加した人も多かったので、参加者全員に対して、東京市場の国際性を印象づけることができたこともよかったと思う。また、日本科学未来館で行ったガラ・ディナーでは、ロボットのアシモと私が共同司会を務め英語で掛け合いをし、毛利館長にも英語でスピーチしていただいた。コンファレンス自体で充実した議論ができたことはもちろん、そういった趣向も大いに喜ばれた。

――会計の面での意見交換でよかった点は…。

丸山 ひとことでマーケットの関係者といっても、各人の考えや意見は異なるなということが改めて分かった。民間部門でもそれぞれのセクションや立場によって、考えていることが全然違う。なんでもかんでも含み損を出し切れという人がいれば、いやいやそれには反対という人がいるという具合に、民間部門の人たちの声といっても多様だ。その結果、当局としては、むしろ難しくなったなという部分もあるが、関係者にとっての現実をきちんと把握できたことには大きな意義がある。IOSCOの側からは、金融安定化フォーラム(FSF)から与えられた課題に対応してタスクフォースを立ち上げ、証券化関連商品の値付け、格付け会社や会計の話などをこれから専門的に議論し、来年の春までに対応ぶりを決めていくことを議長が発表した。流れとしては、まずはIOSCOがFSFに報告して、その後FSFがバーゼル委員会など関係機関からの意見もあわせてまとめて、来年4月のG7にあげていく。一連の流れのなかでも、IOSCOは極めて重要なパーツを担っている。

――これまでに比べてIOSCOがマーケットにぐっと近づいたという印象があるが…。

丸山 その通りだろう。特に日本においては今まで、IOSCOとマーケットというのは距離があるという意識を持っている人が多かったと思う。しかし、証券化商品の値付けや格付けをはじめ、日本の関係者の皆さんにとってもIOSCOはすごく近いところについての議論を行っている。そういった認識を持ってもらえたと思うし、そのきっかけになっただけでも今回のコンファレンスは本当によかった。どれも難しい問題で簡単に結論が出るようなものではないが、議論の整理の仕方、例えば、主体別に議論するとこうなる、また機能別に議論するとこうなるといったように、整理をしていく。さらに、この議論はこの機関で話し合っていつまでに結論をだす、というような議論の仕分けのようなことがIOSCOには求められている。かなり期待されていると感じるし、専門的な組織だからこそ、その期待に応えることもできると考えている。

――格付けについては特に結論が出にくいのでは…。

丸山 確かにその通りだ。当局としては、格付けの中味、やり方そのものについては手を出さずにマーケットに任せるというのが共通の意見だ。格付けの中味について善し悪しを決めるのはマーケットで、悪いところは淘汰されていくという考えを基本としたうえで、IOSCOが議論するのはそれ以外の点。ひとつは、格付け機関と発行するアレンジャーの利益相反についてで、この部分はもう少し関係者が本音ベースで話し合っていく必要がある。もうひとつは格付けのプロセスの透明化。格付けを決定するまでのプロセスをもっと明確にするべきだろう。格付け機関が、うちではこういったデータを参考にしているというように、そのプロセスに透明性を持たせないといけない。一方で、投資家が格付けに頼りすぎたという話も出ているが、これについては利用する投資家サイドから、AAAの格付けに対して時間と人員を使って調査をしなければならないような状態だったら、格付け機関は必要ないということにもなるという意見が出ているため、やはり、格付けの方法に問題があるのではという見方の方が強い。

――ヘッジファンドでは、どういった部分に関心が集まったのか…。

丸山 ヘッジファンドについては、今回のサブプライム問題の源泉ではないということが意外だったという意見もあれば、それはそれでよかったという声もあった。少なくとも大手のヘッジファンドについては、自分たちのリスクを認識したうえでの振る舞いをしているように見える。数年前から、ベスト・プラクティスを作ろうとする動きなど、関係者が努力してきた成果が出てきているともいえる。また、ヘッジファンドはもともと悪であるとは捉えないで欲しいという意見も出た。もちろん、システムリスクがあることは十分分かっているが、その一方で金融技術の革新に貢献していることは間違いないし、マーケットが一方向に動いた時にはマーケットの流動性を供給している面もある。市場で一定の役割を果たしているという部分にも着目して欲しいという意見は正当なものだろう。とはいえ、グローバルな意味での社会的責任は絶対にあるので、それは認識して行動してもらわないといけないという考えが大勢だ。

――今回の東京コンファレンスは東京市場のプレゼンスの向上になった…。

丸山 活発な議論のもとにコンファレンス自体が成功したことはもちろん、多くの参加者に東京マーケットの魅力と国際性をアピールできてよかった。今後、金融庁としても、こうした機会を積極的に利用して、東京マーケットの活性化を後押ししていきたい。