『スーパー地方債』をPR

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公営企業金融公庫 総裁 渡辺 雄司 氏



――来年10月に公営企業金融公庫から地方公営企業等金融機構となる…。

渡辺 既に機構設立のための発起人会が立ち上っており、その下に事務局として、準備室が設けられた。この準備室が中心となって、機構設立の準備を進めている。

――昨年からの紆余曲折を経て、機構の形が決まった…。

渡辺 今年の5月に国会で「地方公営企業等金融機構法」が圧倒的多数で成立した。今後に関しては、まだ正式に決まったわけではないが、10月1日より少し前に機構を設立し、しばらくは公庫と機構が並列する形で運営した後、10月1日に現公庫の業務を移管しようと考えている。

――これから、地方公共団体の出資が始まる…。

渡辺 地方自治体は約1,800あるが、これらの自治体が出資金166億円を出資する。その内訳は都道府県が64億円、政令市も含めた市が91億円、町村が11億円となっており、都道府県と政令市で55%を占めることになる。

――株式会社の形態ではなく、特殊法人の形態になっている…。

渡辺 厳密に言うと、特殊法人ではなく、「地方共同法人」と呼ばれる特別な形態である。この形態の前例には「地方公務員災害補償基金」「日本下水道事業団」の2つがあるが、地公体全員が出資して設立するのは初めてで、そういう意味では画期的な機構となる。

――公営公庫債の発行金額に比べて、166億円は小さすぎるのではないか…。

渡辺 機構のスタート時点で、約3兆4,000億円を金利変動準備金として公庫から引き継ぐ。このおかげで、資本金は小さくても、内部留保は圧倒的に大きく、機構の財務基盤は極めて強固である。

――起債が徐々に政府保証から外れることになるが…。

渡辺 償還債券のうち、借り換え分の一部については当分の間、政府保証を受けられる。それ以外の分に関しては、新しい機構債を発行することになる。新機構債が必要な場合には、地方が共同して保証することができる規程になっている。現実にはその必要はおそらくない。強固な財務基盤を基本として、優良な貸出償還や全ての地公体が共同出資している点、一部政府保証がついている点など、機構自身の強力な信用力を背景に債券を発行することになるので、全く問題はないと考えている。なお、法律上解散時に仮に債務超過の場合には、地公体が責任を負うことになっているので、最終弁済の際にも懸念は無い。

――それを反映して公庫債の市場実勢を見ていると、着実に地方債の条件にスライドしてきている…。

渡辺 新しい機構の出す債券を私は「スーパー地方債」とPRしている。地公体が全額出資で地公体に代わり、資金調達している。機構の出す債券はロットも大きいし、継続的にマーケットに出すことも含めて、ある意味では、個別の地方債以上に信用力の高い、流動性のあるいい条件になる可能性も十分あると見ている。

――一市町村は場合によっては、破たんするかもしれないが、全部の市町村が破たんすることはありえない。そういう意味では、新機構債は国債に近いと言える…。

渡辺 現行制度の下では、地公体の破たんは生じない。場合によっては、国債に次ぐような信用力を持ってもおかしくないと思っている。ただ、投資家の理解を得るためにはIRが重要になると考えており、今後精力的にIR活動を行っていく。また、国内の投資家はもとより、海外の投資家へのIRも重要であり、10月にニューヨークでIRを行った。

――外国投資家の反応は…。

渡辺 北欧などヨーロッパでは、すでに今回の機構のような団体がいくつもある。このため、国内よりもむしろ外国人の方が理解してもらえた印象を受けた。格付に関する質問も出たが、ムーディーズが、新しい機構への移行を織り込んだ上で、公庫に対し「AAA」を付与している話をしたところ、新機構債について、全く問題ないとの反応だった。

――他の財投機関債の民営化が不透明なので、同じ財投機関債として損をしている感はある…。

渡辺 投資家の資金区分が財投機関債の場合は、地方債などに比べ、若干劣後している。格付けから言えば、単独の地方債は我々よりも格付けが低いが、格付けとマーケットのプライスが必ずしもスライドしていない。それも含め、IRをしっかり行って、「スーパー地方債」として、投資家の理解を得られれば、相当いい条件が獲得できると期待している。

――新機構に対して投資家は、将来的な資産と負債の財務バランスと全体の自治体のバランスの中で、機構が債券をどこまで発行するのかに注目が集まっている…。

渡辺 今後我々の貸出が増加することはなく、多少減少すると見ている。その理由として、1つは行革の流れの中で、貸出の対象となる事業範囲が狭まる点、2つ目には全体の公共投資が減っていく方向にある点、そして、3つ目には地方全体の資金調達の中で、民間資金のウェートを徐々に高めていこうとする点の3つの動きが挙げられる。現在地方債全体で公庫融資のウェートは1割強あるが、中期的にも1割程度で推移するだろう。

――具体的には、どの程度の発行を予定しているのか…。

渡辺 当分、あと数年は1兆3〜6000億円程度の債券発行による資金調達が必要となる。そのうち、政保債と縁故債を除いた分が、市場公募の新機構債ということになる。当初は年間2000億円程度からスタートして、徐々に増えていくようなイメージといえる。

――来年度に話は移るが、公庫債の発行額は減少するのか…

渡辺 来年度は予算でいうと、公庫が半年、機構が半年ということになる。来年度は特殊要因として、貸出金の期限前償還を今年、来年ともに4000億円規模で行うので、例年に比べると資金が潤沢となる。その関係で、発行量としては例年に比べ、若干圧縮することになるだろう。

――来年度の目玉は…。

渡辺 来年の上期までは、基本的には今の公庫のスタンスと変わらないが、当面の債券発行では今のマーケット状況や将来の償還の平準化を勘案し、1〜3月に公庫としては初となる5年債の発行を考えたい。そして、今後の最大の課題は、機構債の第一号の発行までにマーケットの認知度を高めることだ。外債に関しては、毎年4〜5月に大きなロットで出しているが、それは今後も続けていきたい