REITなど次の焦点

REITなど次の焦点

AAA格の損なお拡大も


サブプライム展望記者座談会


 サブプライム問題は、間接金融が直接金融に過剰な融資を行ったことが原因のひとつだ。過剰な融資によって直接金融市場がバブル化された。今後は、間接金融からいたずらに直接金融市場にお金が流れていかないよう規制を設けていくことも必要だろう。過剰な融資がなければバブルは起こらない。  山高ければ谷深しの反対で山低ければ谷も浅い。  規制を強めることで、例えば直接金融の機能がまひしても間接金融が生きる。逆に間接金融が機能不全に陥った時には直接金融で戦略を巡らすというような2WAYの金融の道が開けてくる。直接・間接金融の両方が共倒れするから、日本のバブル崩壊や今回のようなことが起こる。  米国のように直接金融化が進んでしまうのも考えものだが、一方で、日本や独のように間接金融が強い国が本当に良いのかというとそうではない。これらの中間にあるのが英国で、バークレイズ、RBS、HSBCなどのユニバーサルバンクが、バランスシートも使うし、仲介者にもなる。この場合、バランスシートが崩壊したとしても、バランスシートそのものが大きいため耐えられる。また、預金のベースをしっかり持っているので流動性の危機も起きない。これらを勘案すると、やはり英国のようなモデルケースがいいのではないか。  間接金融はイスラム金融でも良いと思う。イスラム金融は周知の通り、事業そのものに融資し、返済金は収益を当てるという、いわば純粋な事業金融だ。これに徹すれば、バブルは起こりにくい。  今回、日本でも一部のいわゆる地域金融機関で膨大な損失が起きている根本的な理由は何かといえば、融資に回せない預金が集まっているということだ。そしてその背景は、日本に金融機関が多すぎるのかもしれないし、個人投資家がリスクを取らないせいかもしれない。小さな金融機関が体力に見合わない投資をしていたというのは、個人が預金しかしないからともいえ、そこの部分は、当局を含めて金融業界全体が改善していかなければいけない。 ――新しい年を迎え、サブプライム問題はどのような局面を迎える…。  サブプライムローンというのは、本来借りるべきではない人が借りているということが根底にある。そのため、住宅価格が上がらない限り、1つ1つのローンに関する改善は難しいだろう。それが各金融機関にどういった影響を与えていくかということだが、格付けの低い証券化商品を持っているところは、全損する可能性は高いけれど、もともとの金額が小さいので、それほど大きな打撃は受けないともいわれている。 ――格付けの高いところを持っている金融機関のほうが影響は大きいと…。  モルガン・スタンレーやUBSもそうだったが、AAAの部分をさらにリスクの高いところと低いところに分けた、俗にいうスーパーシニアとかスーパーAAAのなかの一番リスクの低いところを持っている金融機関が、もっとも危ない。AAAの部分というのは一番金額が大きく、ここに評価損が出始めると、大変な金額の損失になる。実際にここにきて、かなり大きな割合の損失が出てきているので、世界的に膨大な損失が表面化するのではないか。  特に、その部分は利ざやが薄くても、安全だということで金額をたくさん投入できるから、安全なことしかやらないといわれている金融機関ほどたくさん持っているといわれている。  モノラインについては、格付けが下がる方向になっているが、モノラインとは少し違う、再保険会社であるとか、欧米のAAAの金融機関であるとか、往々にして安全なことしかやらないところが、今後は評価損を出さなければならない事態に陥るだろう。 ――具体的な名称を挙げるとすると…。  スイス再保険、AIG、ラボバンクなどは、関係者ならば当然思い付く名前だ。  今のところ、金額的にはそれほど大きくないという話だが、RBSとABNアムロは合同でどのくらいスーパーシニアを持っているのかが注目されている。また、RBSについては、グリニッジキャピタルという大きな証券会社を持っているので、実質どのくらい手を出しているのかという話がある。  バークレイズにも同様のことがいえる。  HSBCに関しては、むしろSIVのほうが大変なんだろうとは思われるが、行っている証券化ビジネスの内容によっては、今後、影響が出てこないとも限らない。  シティはこれまで発表しただけでもかなりの金額になっているが、スーパーシニアについては、まだごくわずかしか計上されていない。実際、仮の数字を公表した後に、Gサックスが、シティはまだまだこれでは足りないというレポートを出している。今後は、スーパーシニアでの評価損というのが、大きな金融機関のテーマになっていくだろう。 ――日本においてはどうだろうか…。  日本は、中小の金融機関が債務超過になったときに、突然パニックになるという特徴を持っているので額は小さくても油断できない。  某信金が危ないというようなうわさがある…。  SIVの話でいうと、みずほは直接の決算の数字では発表していなかったが、IR説明会で、SIVに投資している額250億円に対して210億円の引当金を計上したという資料があったそうだ。  SIVのキャピタルノートを持っている投資家は意外と多い。また、東京海上日動や三井住友海上、損保ジャパンは、スーパーシニアを運用していると公表している。  あいおいも運用していて評価損を計上している。 ――相対的にみて、日本では、欧米ほどの損失は受けないということか…。  世界に目を向けると、メガの損失はこんなものではないということだけは確実だろう。加えて、体力というよりも能力に見合わない投資をしていた金融機関は今後いっそう厳しいことになる。単純にいうことは難しいが、モルガン・スタンレーを例に挙げると、9〜10月までの損失よりも11月1カ月の損失の方が上回っている。 ――とにかく、日本も含めた金融市場において、金融機関の12月の決算が出てくる今年の2月くらいに、セーリングクライマックスを迎えることは間違いないだろう。

――年末に騒がれていたサブプライムの救済基金は結局、見送られたが…。  見送られたものの、その構造自体は安全だったと思う。そもそもMレックというファンドは、サブプライムローンを買うわけではない。通称SIVといわれる、質の高い資産を買っている投資ビークルが保有する証券化商品を、現在その時価が下がっているので、投げ売りを防ぐために買おうというのがMレックのスキームだ。また、額面ではなく時価を参照するし、その時価の算定も、世界的に有名な資産運用会社のブラックロックがアドバイザーに入っている。そして、そのブラックロックが算定した価格から、流動性プレミアム分として、さらに1割安く買うという徹底ぶりだ。とにかく、日本で騒がれたような不安定な仕組みではないと思う。  しかし、米銀は、日本の不良債権処理や金融不安の際には邦銀の責任だとさんざん批判した経緯があるし、邦銀の買収工作も行った。その米銀が、今度は自分たちが批判したことをやろうとしたわけだから、それでは市場の支持を得られない。  加えて米銀は、日本人投資家に情報が無いのをいいことに、サブプライムローン問題が大きく表面化する前の4〜6月ごろに、円建外債を大量発行した。その債券が夏以降、大幅に値崩れしており、いってみれば日本人投資家をだました形になっている。  米銀の発行したサムライ債は、発行当時、国債プラス40bpぐらいだったスプレッドが今では100bp以上になっている。基金に対して慎重になったのは、そういったことも背景にある。  警戒する理由は分かるが、サブプライム問題に端を発して、金融資産全体の価値は下がる一方だから何か手を打たなければいけない。確かに、ここからどこまで下がるのか分からないという怖さはあるが、日本の不良債権の場合とは違って、サブプライムは根本的には個人への融資だから、さすがに全員が全員お金を返さないということもないだろうし、仮にそうなったとしても、家が担保になっているから4割ないし5割は戻ってくる。  その落としどころの不確実性が、2重3重の証券化によって増幅し、分かりにくくなっているからこそ警戒心が増しているともいえる。 ――複雑な仕組みゆえ本当のリスクが見えてこない…。  金融機関にとっては、結果としてわけの分からない物を、わけの分かったつもりで買っていたという側面はあるだろう。だが、実際の証券化というのは、決して複雑なものではない。出てくる損失をどういう順番で切り分けるかというだけのことだ。一方で、過去10年の間に証券化という技術が広まり、格付機関に対する信頼が生まれてきたなか、投資家自身が投資判断をしなくてもいいのではないかという風潮が生まれていたのも事実。複雑な商品だけど、有名な投資銀行が証券化したものに対し、格付機関がよい格付けをしているのだから大丈夫という空気があった。  そうした格付けに対する安心感から投資額が増えて、サブプライム問題につながった。  しかし、そもそも格付けというものは間違えることもあるし、間違えれば直せばいいというスタンスのものだ。それではあまりにも格付機関が無責任だという意見もあるだろうが、根本的には格付けとはそういうものだ。AAA格がAAA格であり続ける保証はどこにもない。それを分かったうえで利用すべきだし、格付機関の判断基準になったところを自分なりに検証すべき性格のものだ。  サブプライムに関しては、投資家が格付けを鵜呑みにして自分たちで判断しなかったことを反省することも必要だ。また、投資家に対してそういった説明がしっかりとなされていないのであれば、仲介業者の責任もある。  とはいっても、AAA格が一気にCCC格になるのはあんまりじゃないか。  格付機関を擁護するわけじゃないが、それについても彼らの仕事量を勘案すると、一種仕方がないかという部分がある。膨大な量の格付けを新規に行っていて、そのうえモニタリングもしなくてはいけない。そんな状況で、AAA格のものをちょっとおかしくなったからAA格プラスにし、またちょっと不安材料が出たからAA格にするというような細かいモニタリングは難しい。  それらの結果として、格付機関の信頼が低下し、格付機関はこれまでのように大もうけはできなくなる。またその結果、信用収縮が起こってくる。 ――金融庁では、格付機関とアレンジャーに利益相反があったのではないかという見方もしている…。  格付機関も営利企業であることは間違いないので、どのようにビジネスを増やしていくかということは常に考えているだろうが、少なくとも、意識的に利益相反を企てたところがあるとは思えない。というのは、格付機関の唯一の資産は、自分たちの出した格付けを投資家が信じることにあるからだ。  それはどうかな。人間はもうかっている時には自分たちの原点を見失いがちだ。  当局ができるのは、投資家に対して格付けをあまり信じるなということだろう。一方的に信じるのではなく、うまく利用することを提唱すべきだ。  しかし、当局による指定格付機関があること自体、そこから出た格付けは信じていいですよというお墨付きを与えているという見方もできるわけだから、指定格付制度はやめたほうがいい。どの格付機関でも良いということにして、投資家は自分が信じる格付けを利用すればいい。 ――証券化商品市場がまひしている今の状況は今後も続くのか…。  私は一過性なものだと考えている。証券化商品は、取れるリスクを取れる人に分配するというのは非常に優れた仕組みなので、今回のサブプライム問題を教訓にして、よりよい市場になっていくのではないか。そこが、米国市場の強さともいえる。  証券化よりも商業用不動産市場にきな臭さを感じる。  確かにREITが危ないといううわさがある。 ――中国でも既に始まっているが、新年は世界的に不動産価格が大幅に下落するとも言われている。起こって欲しくはないけれど、日本ではREITの崩壊、海外ではCMBSが要注意だ。今年も忙しいな(笑)。