ユナイテッドワールド証券 会長 林 和人 氏

ユナイテッドワールド証券 会長 林 和人 氏

海外15株式市場に進出を



――大手の金融機関もアメリカや欧州でなく、東アジアに目を向け始めている…。

 おかげ様で当社は、中国株の取り次ぎで東アジアの取引ではかなり先行している。また、ファンド設定で今、ロシア、ベトナム、タイとマカオに投資できるようにした。タイでは個別株の取り次ぎを始めた。次にロシアを、今月末、遅くとも来月には始めようと思っている。

――中国ではかなりのシェアだ…。

 中国株は5年前から始めた。今、お預かりしている資産が2000億円を超えている。日本株は取り扱っていない。中国の、特に香港証券取引所に上場される国営企業の株を、そのままネットで直接売買できるようにしている。香港証券取引所の正会員である証券会社を子会社に持っているからできることだ。現地証券を7年前に私が買収し、日本に逆上陸する形で日本法人を設立、日本の会社を親会社にした。こちらから日本の投資家を100%、外国の株にネットで直接投資してもらう仕組みだ。

――中国株だけで2000億円の預かり資産は日本一だ…。

 そうだと思う。銀行と証券を含めれば、中国株への投資残高は1兆円を超えたと言われる。少なくともネット証券では最大だ。国内のネット証券大手3社の中国株の取り次ぎもすべて当社のシステムを使っている。ネット証券全体で扱う中国株の8割くらいは当社経由だ。弊社の創業当時、東洋証券、アイザワ証券、内藤証券が日本株に加えて中国株に力を入れてやっていた。弊社はその時に、後発だったが各社の手数料の十分の一で新規参入した。中国株顧客総数が1万5000口座とすれば、そのうち4000口座が弊社に来てくれれば、単月でもペイするというビジネスモデルを描いた。そのために、沖縄県の金融特区のある名護市で県の支援も受けながら、初期投資を抑えて7人で開業した。

――その結果は…。

 既存の証券で中国株経験のあるお客さんも来たが、新しい客層、中国株とか、今までに株をやったことない人たちが口座開設に殺到した。口座の約6割から7割が当初、株を売買したことがない初心者だった。中国株から始めたのにだ(笑)。しかも20代、30代の若い世代が大半だった。新しいマーケットが潜在的にあるということがわかり、そして、それを顕在化できた。そこからマーケットが広がっていった。

――5年前に香港の株を買った人は大儲けしたと思うが…。

 確かに大儲けした人も多い。主要銘柄は平均で3倍から5倍になった。開業した時の香港株のインデックスが1万2000ポイント程度だったがこれが3万ポイントまで上がった。インデックスで3倍なので個別銘柄では5倍になったものもある。

――それでも沖縄から東京に本社を移した。沖縄はどんな点が不自由だったのか…。

 事業が拡大するにつれ、周辺サポートも含めたインフラ面の問題が大きくなった。沖縄には信託銀行がない。証券業界の団体も東京にある。今はインターネットで取れるが、当時は情報入手も困難があった。海外の法制度や新しい商品など、金融知識に強い弁護士もいなかったので、東京に行き来する頻度が増えた。そういう状況だったので東京に支店を作り、ちょうど2年前に本社を移転した。沖縄には今も支店があり、コールセンター業務を中心に地元の人間が40名ほど働いている。

――口座数は…。

 自社の口座が5万2000。システムを提供している国内証券経由の口座も含めると数十万の口座を扱っている。社員数はグループ全体で120名ほどだ。

――ロシアの株もネットから直接できるようになると…。

 タイに続き、間もなくロシア市場を直接繋げる。ダイレクト・マーケット・アクセスというシステムで、そのまま、タイの証券取引所に、PCで1秒でアクセスできる。ロシア市場も1秒でアクセスできるようになる。ロシアは資源株が今注目されている。

――こういう状況だと、東証の外国株はいらないのではないか…。

 まだ試行錯誤の段階ではあるが、他市場に他国の証券市場を持っていった時に、いったい、どれだけニーズがあるのかというのは、東証の方も今、手探りの状況だと思う。ちょうど2年前に、グリーンスパンFRB議長が、円高局面になり、なぜ、日銀が円の介入ばかりしていると問われた時に、彼はこういう言い方をした。「日本人は特に home bias(ホーム・バイアス)、自国贔屓が非常に強い国なんだと。ホーム・バイアスが非常に強い国なので日本の個人金融資産が外に出にくい。これは他国にも言えることでETF市場が大きく伸びないのはそこにある」。

――米国と同様の傾向だ…。

 アメリカに日本のETFを上場した時にアメリカ人が買うかという問題が出てくる。しかし、ETFよりも個別株に関しては皆、知名度のあるものに対し投資してみたいという気持ちがある。例えば、日本にはもともと資源がない。ロシアに資源関連の株があると聞けば、そちらに投資してみたいということになるかもしれない。ホームにないものに関しては海外のものであっても興味がある。それが当社のビジネスモデルの基盤になっている。

――東京からいろいろな株式市場に直接アクセスできるようになれば素晴らしいことだと思う…。

 便利なので、できれば3年以内に15の市場を繋ぎたいと思っている。ブラジルもあれば、南アフリカもあるかもしれない。東南アジア圏では、フィリピン、インドネシア、ベトナム、台湾もあるだろう。

――ベトナムは直接アクセスできるのか…。

 今、当社でも検討している。ドバイがよければドバイに行く。次のオリンピックが決まれば、そこの国の株を買う。ワールド・カップが開催されるなら南アフリカの株を検討する。そういう感覚で自由に海外の株式投資ができるように繋げていきたい。

――御社のサービスは一つの取引所の機能を果たしていると考えられる…。

 あくまで証券会社で、市場と人を繋ぐ仲介業者ではあるが。

――税金の問題など、日本と現地の法律の違いからくるトラブルは…。

 この点が実をいうと一番大きな参入障壁になっている。まず、言葉の問題がある。その他に税制の問題、取引慣習の問題がある。我々のお客は100%、日本人なのですべて日本法も準拠しながら、現地の法律を準拠するようにしているが、これが合わない国もある。例えば、インドでは現在、個別の株は外国人は買えず、日本人に取り次ぐことはできない。日本法を準拠しながらインド法を準拠すると、どうしても法律の壁にぶつかってしまう。ブラジルも日本の個人投資家が買えるような法律体系になっていない。そうした国々ではファンドなどで対処することになる。現地の法律を現地語でまず入手して、英語に訳し、日本語に訳して、日本の弁護士にそれを投げて、日本法の準拠をしながら、コンプライアンスを固めてからしか、(市場へのアクセスは)できない。

――株式購入ツアーにも問題がある…。 

 日本の投資家が現地に行って、現地の証券会社に口座を開いて買う分についても、実は税制上、大きな問題が生じている。自己申告しなければならないからだ。日本の証券会社を経由して買う分にはすべて当社の方で、源泉するものは源泉し、税務署の方に納めるようにしている。皆様、最近ツアーなどで(ベトナムなどへ)株を買いに行ったりしているが、あれは税制上、非常にグレイなエリアと言わざるをえない。日本の金融機関を通さず売買すると利益配当に関しては、日本の銀行、証券会社を通せば10−20%の源泉で済んでも、向こう(外国)の証券会社での売買では総合課税となるので利益の半分がもっていかれる。しかも、それを自己申告しなければならないので、面倒くさがって申告しないと金額が大きな場合は脱税という形になる。年間20万円以下の場合は脱所得で申告義務はないが100万円、200万円を投資する人は20万円以上の利益が出ているはずなので申告漏れということになる。現地の証券会社、銀行は日本の税法を知っているところは皆無なので、個人投資家にとっては非常なリスクだ。

――日本人が100万円持っていてロシア株に投資したいとする。御社では外貨での決済だと…。

 ロシア株なら円でロシア株専用口座に入金してもらい、当日のレートでルーブルならルーブルに替え、ルーブルのまま持ってもらって、その中で売買してもらう。売却した時もルーブルのままで持ってもらい、資金を一端現金に戻したいという出金時のみ、為替をエクスチェンジする。入り口と出口だけしか為替手数料はかからない。今までの証券会社のやり方では、皆様、買う時に替えて、また売る時にも円に替えていた。その度に為替手数料が大量に発生するので、ほとんど儲からない仕組みになっていた。その手法を改め、ずっと現地通貨で持ってもらうことにして、途中の売買の時も一切、為替手数料がかからないようにした。さらに全体の手数料も最低水準に抑えた。それまでのやり方だと、一度、外国株を買うと為替手数料も含めると4−7%の手数料を取られていた。これでは外国株が浸透しないのは目に見えていた。それを低い手数料に抑えたので当社の取引が急速に伸びたと思う。

――東アジアの経済の将来展望をどう見るか…。

 中国の経済に引っ張られているので、特に中国と陸続きのところは、これからも長期的には安定成長すると思う。カンボジア、タイ、ベトナムといった国々だ。インドネシア、フィリピンなど島嶼部は飛行機で行き来しなくてはいけないので、ちょっと事情が違うと思う。中国人の観光客が年々伸びている。2020年には中国人観光客数が世界一になる。同時に中国が観光客受け入れの一番大きな国になる。そうなると、陸続きの東南アジアは中国人のビザがなくなったので観光も盛んになるだろう。日本でも軽井沢などに旧正月の期間に行くと70%は中国人だ。今年だと2月7日の旧正月前後に軽井沢とか北海道に行くと、中国人ばかりだ。中国人がお金を持ち出し、購買力も上がっている。中国人観光客を受け入れるところが地域としても儲かっている。

――サブプライムローン問題で世界的に経済がおかしくなってきている。欧米がだめでも東アジアは安泰だという意見がある一方で、東アジア経済についても悲観的な見方がある…。

 おそらく、バブルは若干起こっていると思う。中国は昨年から完全に引き締めに入っている。一方で、今、サブプライム問題のために、米国は2.75%までFFレートを下げるだろう。このため、中国や東アジアのようなアメリカのドルペック制の国は、インフレ懸念があり、景気がいいのにもかかわらず、アメリカが金利を下げれば、金利も下がってしまう。そうなると、バブルの発生する可能性が非常に高くなる。旧正月が明けたあたりから中国株を中心に東アジア株はまた、かなり回復する可能性が非常に高いのではないか。また、今年の旧正月は2月7日。旧正月の前に中国人は今までの借金を返したり、いろいろな商取引をフラットにする慣習がある。今、皆売りに出て下がっているので今週から来週にかけてが一番地合いが悪い。逆に言えば、3月、4月に高値を更新する可能性もある。香港、中国は一番金利に敏感だ。北京五輪があり、米大統領選が11月にある。その後あたりにFRBもインフレ懸念から少し金利を引き締めるだろう。そうすると、2009年は世界的に金融市場は内向きになってゆくだろう。中国株も同じような動きを取ると予想している。しかし、構造改革が遅れている日本はそうした動きとも蚊帳の外だ。

――最後に、日本企業が注目するベトナムの展望について。社会主義体制下だが金融マーケット的にはどうなのか…。

 小さなマーケットだ。当社が日本で一番、最初にインターネットによる公募で、ベトナム・ファンドを紹介した。今、5本のベトナム・ファンドを扱っている。初期に設定したファンドにはかなり高い配当を出しているものもある。ただし、今はどのファンドもキャッシュ比率が高い。小さなマーケットに日本などから急激にたくさんお金が入ったからだ。需給面で急に需要が上がったので、その落ち着きどころを今、見極めているところだ。調整が終わったら基本的にはGDPの伸びなど経済成長が見込めるので再投資を考えたい。

――ベトナムが中国に次ぐ経済大国になるのではという声もあるが…。

 ベトナムと日本は似ている。ベトナム人は勤勉だ。人口も日本の1億2000万人に対し8000万人。国土面積も日本の8割と、良く似ている。かつ、社会主義国で、ベトナム戦争の傷もようやく癒えてきた。人件費は中国の半分なので中国からシフトする企業も多い。経済的にこれから、まだまだ伸びる。人口ピラミッドを見ると10代の前半から後半が一番多い。これから一番伸びるサイクルだ。60年代の日本がちょうどそうした人口ピラミッドで、20代が一番多かった。そうした世代が働いて、結婚して車を買って、テレビを買うなど消費が活発だった。中国は2000年からこのサイクルに入った。米国は1980年から90年代にかけ、このサイクルに入っていた。ベトナムは今から2020年ぐらいまでこの(消費が活発になる)サイクルに入る。中国、ベトナムは国として元気な国で高齢化が進む日本とは対照的だ。