タイ証券取引所社長 パッタリーヤ・ベンジャポンチャイ 氏

タイ証券取引所社長 パッタリーヤ・ベンジャポンチャイ 氏

新政権は国営企業の新規上場を推進、より多くの日本からの投資を



――今回の訪日の目的は…。

パッタリーヤ タイの株式市場が他のアジアの株式市場と比べても魅力的だということを日本の人たちに伝えたいと思い来日した。高い水準で成長し続ける経済、タイの株式市場は日本の投資家にとっても魅力的に映るはずだ。また、12月の総選挙を経て、(サマック首相の)新政権が誕生した。新しい政府は投資拡大と経済発展を明言している。これからのタイは投資家にとり好機到来だ。一方で、日本の場合、個人の金融資産、貯蓄が多い。そういった個人投資家の人たちに一つの選択肢として、タイの株式市場をぜひ、紹介したい。

――日本の機関投資家については…。

パッタリーヤ 過去、日系の証券会社などを通し投資信託を設定するケースが多かった。今後は直接、株式市場に参加する機会を提供できればと考えている。

――他のアジアの証券取引所と比較して、タイ証券取引所(SET)の魅力は…。

パッタリーヤ アセアンの各証券取引所がそれぞれの長所を持つが、タイ証券取引所を際立てさせる特色として、他の証券取引所と比較して高いROI(投下資本利益率)を挙げたい。また、SETの主導で新しい商品も開発している。昨年は初めて、SET 50指数のETF(株価指数連動型上場投資信託)を上場した。これは個人投資家でも機関投資家でも参加できるようにした。さらに、これも一年前の話だが、SET 50指数、株価指数先物も上場した。近く、株価商品先物のオプションも上場させたいし、個別株のオプションを上場させる計画がある。次々と新しい金融商品を紹介していくことで特色を出していきたい。

――対応が早い…。

パッタリーヤ わが国(タイ)の政治状況の変化についても触れておきたい。過去2年間、タイ株式市場は停滞していた。軍事政権の政策が投資への障害となっていた。昨年12月の総選挙を経て今、新しい政権が発足した。新しい政府は投資を推進させる政策を施行する。民営化も本格的に再開し、上場する株式は増える。新政権は(外国からの資金流入を30%以内に留保する)資本規制の撤廃も検討している。撤廃されれば外国からの投資はより容易になり、活性化する。

――企業のIPOに外国人投資家を呼び込むことを考えているのか…。

パッタリーヤ 当初は37社程度の新規上場を目標にしていた。昨年来、約100社が新規上場を証券取引所に申請している。そのうちの50社程度が年内の新規上場を果たしてくれればと期待している。一方で、タイの株式市場で外国人投資家は約30%のシェアを占める。新規上場する企業が増えれば、自然と外国人投資家の比率も高くなるだろう。外国人投資家は会社の株式の時価総額のサイズ、流動性といったところに注目している。会社が大きければ、より多くの外国人投資家が参加するだろうし、小さければ小さいほど外国人投資家の参加比率も下がってくる。また、地場証券会社に対し、外資がパートナーシップを組もうとしたり、買収しようとする動きがある。日本の大手商社は傘下に証券会社を持つタイのファィナンス・カンパニーの買収に乗り出している。

――日本もタイも君主制の国だ。こういった共通点は日本人が安心してタイに投資するための要因になる。こういった共通項をもっと宣言すべきだ…。

パッタリーヤ そうだと思う。日本人はタイ人を親しみやすいと思っている。多くの日本人がタイで働くことを好み、長く滞在したいと思っている。タイへの外国直接投資(FDI)で、他国と比較して日本が高い割合を占める。ゴルフもできるし、タイで生涯を過ごしたいと考える人もいる。タイ人も日本人が周りで一緒に働いてくれることを望む。ゴルフ場でも、もっと多くの日本人がプレーしてくれることをタイ人は望んでいる。しかし、これが株式投資となると、他国と比較して、日本の占める割合は低い。どうやったら、もっと日本からの投資を呼び込めるのか、タイの株式市場のことをもっと知ってもらいたい、もっと投資してもらいたいと思い、今回、来日した。


――ベトナムとタイの証券市場を比較すると、ディスクロージャー面でもタイ証券取引所の方がはるかに進んでいるように思う。こういった点を強調すれば、より多くの投資を日本から呼び寄せられると考えるが…。

パッタリーヤ ご指摘ありがとう。我々はIRで十分な成果を挙げていないかもしれない。しかし、ディスクロージャーの点では目覚しい効果を挙げている。SETに上場されている100社は四半期ごとに経営内容などの情報を開示している。この点、日本の投資家のために、SETのホームページから日本語でタイ株式市場の情報を提供している証券会社のホームページにリンクできるようにすることを計画中だ。日本の大手証券会社からは一緒に日本語のホームページを作ろうと声を掛けられている。現在、SETはタイ語と英語の2カ国語によるホームページを持つ。でも、日本語のホームページがあれば、日本人にとって、SETはより親しみやすいものとなるだろう。

――今月6日に発足したサマック首相の新政権がタイ株式市場をより活性化する理由は…。

パッタリーヤ 新政権の経済政策チームは資本市場の重要さをより理解している。市場のメカニズムもよく分かっている。政府が新プロジェクトの資金を調達する場合でも、もし株式市場を通さず、ローンなど他の手段を取れば、それはより高くつく。新政権は前の政権と比較して、資本市場、株式市場の役割をより理解している。新政権にとって、投資を推進させるための政策は重要だ。新政権が投資の障害となるような状況を作り出すことはないはずだ。新政権の経済政策チームは、(国営企業の民営化、新規上場を推進させた)タクシン政権の経済政策チームと同じで、政策も引き継がれている。PTT(天然ガス事業および石油事業を展開するタイ最大の民間企業)を含む6つの国営企業を民営化、SETに新規上場させたのと同じ経済政策チームだ。資本市場の役割を十分理解している。

――日本の証券取引所と業務提携する考えはあるか…。

パッタリーヤ 東京証券取引所と大阪証券取引所は共にアセアン、オセアニア地域の証券取引所のメンバーなので情報交換や技術供与を行っている。東京証券取引所とは業務提携でMOU(覚書)を交わしている。東証はアセアン諸国の証券取引所にとってお兄さんのような存在だ。何か困ったことがある時は東証に相談するようにしている。このため、今後とも親密な関係を築き、ともに発展していくことを望んでいる。