衆議院議員 古川 元久 氏

衆議院議員 古川 元久 氏

道路特定財源見直しで景気対策を



――道路特定財源の一般財源化法案を民主党が提出した…。

古川 道路特定財源の一般財源化は特別会計をひとつなくすことにもつながり、これは財政改革という面からも大きな改革になる。また道路特定財源をやめて一般財源にすることに伴い、この特別会計に対応する自動車関係諸税についてもすべて抜本的に見直すことを決めた。とはいえ、抜本改革のためには、段階を踏む必要がある。そこでその第一ステップとして、この平成20年度税制改正でどうするかということになり、まずはこの3月末で期限が切れる暫定税率を延長しないことにしたというわけだ。そもそもこの暫定税率は、34年前に道路整備を加速する目的で暫定的に始められた課税だ。道路整備目的、しかも“暫定的”に始められたものなので、道路特定財源の一般財源化に伴い、論理的に課税の根拠を失う。そこで廃止しようと主張しているのだ。われわれが主張する道路改革は、本丸はあくまでも道路特定財源の一般財源化であって、暫定税率の廃止は、それに伴って生じる結果に過ぎない。

――具体的にはどのような課税を考えているのか…。

古川 自動車関係諸税については、自動車がぜいたく品であった時代と生活必需品となった現在とでは、根本的に課税のあり方を変えるべきだと考えている。まず自動車を購入した際にかかる自動車取得税については消費税との二重課税になっているので、これは廃止する。保有段階の課税である国税の自動車重量税と地方税の自動車税については、地方税の保有税に一本化する。さらに揮発油税など燃料に対する課税については、課税の根拠を環境への負荷という点に求め、地球温暖化対策税(仮称)の形に組みかえる。具体的にはヨーロッパなどで実施されている環境税や炭素税のような、二酸化炭素排出量に応じた負担の仕組みを原則とする課税形態を考えている。またいまのところ名称は地球温暖化対策税としているが、環境目的の目的税ではない、一般財源だ。

――暫定税率の廃止は日本経済に及ぼす影響も大きい…。

古川 その通りだ。暫定税率の廃止は、2.6兆円の減税を意味するので、日本経済に与える景気刺激効果は非常に大きいと考えている。実は暫定税率の問題は、たんに道路の話にとどまらず、今の日本経済をどう見るか、今後の経済動向をどう見るか、それに対してどういう経済政策を行うかということにも関係している問題なのだ。サブプライムローン問題に端を発し、現在、世界経済はかなり不安定な状態に陥っている。今の景気減速はアメリカが中心だが、次第にアジアにもその影響が波及していくだろう。オリンピックを控えた中国も、その節目以降に急激な下降曲線を辿るのではないかと懸念されている。そうなった時の日本への影響、特に輸出産業に及ぼす影響はかなり大きいだろう。ここ数年における日本の景気回復は、外需主導であり、内需の寄与度は極めて低い。実際、政府は「景気は拡大している」というが、ミクロレベルでは景気は良くなっていない。マクロの数字は輸出産業を中心に好調であるために高いが、アメリカや中国の経済減速がはっきりと見えてくれば、こうしたマクロの数字にも次第に影響が現われてくるだろう。そうなれば、マクロの数字ではなかなか見えてこなかった国内の景気停滞が顕著に現われてくる。既に、原油高騰から生じる生活関連商品の値上がりなど、一般消費者の間では、物価が上がってきたという感覚が随分広がってきている。一方で所得は伸びていない。このままでは間違いなく、消費者マインドは冷えこむ方向へと向かうだろう。

――消費者マインドの低下をくつがえす効果的な政策は…。

古川 ひとつは、金利の上昇。金利が1%でも上がれば、それだけ利子収入が増えて、内需の刺激要因にもなる。だが、今の状況を勘案すると、当面金利の上昇は望めないだろう。では、所得が増えるかというと、春闘をみても分かるように、大企業ですら大幅な賃上げは難しく、中小企業に至っては、そもそも景気拡大の恩恵を受けているところが少ないため、賃金引き上げの余力は無いに等しいといえる。そう考えていくと、この原油高騰を一端とする生活関連物価の上昇が、国内の消費に与える影響を相殺するようなプラス要素はなかなか見えてこない。この状況を放置しておくと、かなり深刻な不況に陥るリスクがあり、これらのことを勘案すると、やはり、なんらかの内需刺激策を考える必要がある。

――そのための政策的な手当としても暫定税率の廃止が必要だと…。

古川 今の状況を考えて、最も効果的な内需刺激策は減税だ。アメリカでも行っているように、とにかく国民の懐にお金を返して、そのお金を使ってもらって、その中から新しいビジネスや消費に回してもらうしかない。その際により効果の高い減税が、間接税の減税である。間接税は所得に関わりなく負担するので直接税より逆進性が高く、その減税は所得の低い人に手厚く還元されることになる。所得の低い人はもともと消費性向が高いので、手元にお金が入れば消費にまわる。つまり減税が消費にまわり、それで内需が拡大するというサイクルが生まれるのだ。もちろん、消費税の減税でもいいのだが、現実的にはなかなか難しい。システムやコストからみても簡単ではない。しかし暫定税率の廃止ならば、元々費用対効果に大きな疑問がもたれている道路整備にまわっていたお金を国民の懐に戻すのだから、効果は消費税の減税に非常に近い上に、国全体での資源配分の適正化にもつながる。原油はほとんどの人が使用するし、地方の人ほど負担が大きい。車に乗らない人に対しても、運輸コストの削減によって物価上昇圧力が和らぐという点で、間接的な効果が生じる。物価上昇が抑制されれば、その分、懐が潤うことになる。その意味では、暫定税率の廃止は、低所得者や地方を中心に、幅広く恩恵を及ぼすことができる。その経済効果は、暫定税率を続けて道路建設をすることの効果よりも、よほど大きいと思う。

――良いアイディアだ…。

古川 そう思う。今の日本の経済状況を見ると、テコ入れが必要であり、何か効果的な経済政策を打つとすれば、暫定税率を廃止して減税を行うことが現時点で考えうる最も効果的な政策だ。地方ではまだまだ道路が必要で暫定税率が無くなるのは困るという声も聞くが、暫定税率廃止による減収分は国がすべて負担するので、地方の財源は減らない。一方、国の税収は減るので、国の道路整備費は事業費ベースでみれば、かなり減ることは事実だが、事業費が減ったら、そのまま同じ額だけの事業量が減るかと言えばそうではない。なぜなら、国の行っている道路事業は非常にコストが高い。もっと工夫をすれば、何割かのコストを下げることは可能だ。したがって仮に、事業費を5割カットしても、コストを3割下げれば、事業量の減少は2割で済む。また高速道路は基本的に利用料金で建設されることになっているのだから、高速道路の建設ができなくなるわけではないのだ。そもそもこれまで百兆円を超える巨額のお金を費やしたにも関わらず、国としてのネットワークの構築のような、本当に必要と思われる道路がなぜできなかったのか、ということを問うていかなければいけない。道路整備計画の決め方を根本から見直して、本当に優先順位の高いところから道路を整備していくことができるようになれば、暫定税率を廃止しても十分必要な道路整備は行うことができると考えている。