参議院議員 大塚 耕平 氏

参議院議員 大塚 耕平 氏

日銀総裁、時代にあった人選プロセスを



――公務でアフリカのODA視察に行ってきたそうだが…。

大塚 アフリカでは日本のプレゼンスが著しく低下していた。ODAの縮小や中国の進出が日本のプレゼンスの相対的低下に影響しているようだ。中国は、日本がODAの対象とできないような大統領官邸などの箱物建設を、安く落札して手がけている。驚くべきことに建設作業員は中国本土から連れてきているようだ。竣工後に建設作業員はその国に残り、次々とチャイナタウンをつくっている。国家戦略としてきわめて上手で合理的なやり方だ。

――日本のODAには批判の声もあるが…。

大塚 日本は多額のODAを行っている割にプレゼンスが低い。昔のように潤沢に財源を使える時代ではないので、戦略を練ってもう少し有効にODAを行わなくてはならない。一方、中国では非常に割り切ったアフリカ進出をしているようだ。現地で面談した南アフリカ駐在の中国大使も「アフリカでの経済活動は支援ではなくビジネスだ」とはっきり言い切っていた。ビジネス、資源確保、人的展開によるチャイナタウン建設も含め、国家戦略としてアフリカでのプレゼンスを高めている。是非は別にして、日本も中国のこうした動きに見習うべき点が大いにあると感じた。

――国際金融市場や国際政治において、日本の国家戦略が見えない…。

大塚 諸外国はクレバーに国際社会を生き抜いている。日本ももう少し工夫が必要だろう。例えば、米国と同盟関係にあるサウジアラビアのナショナルコマーシャルバンクが、政府系ファンドの運用をドル以外で行うべきというレポートを発表した。基軸通貨としてのドルの節目を感じて米国と距離を置き始めている証拠だが、同盟関係にあっても非常にクレバーかつクールに動いている。中国も一昨年12月に外貨準備高(1兆5千億ドル)が日本を完全に凌駕したが、米国債での運用を手控えるなど、国際金融市場における自国のポジショニングを巧妙に行っている。一方、日本は相変わらず米国債保有高はダントツの世界一で、中国の4倍。多額の外貨準備を持っていても米国債などに偏った運用をしており、こうした工夫と戦略性に欠ける行動も日本の国際的プレゼンスを低くする遠因だろう。ジャパン・アズ・ナンバーワンと称賛された時代から日本は思考停止状態が続いているが、ここ数年、特にそれを強く感じる。

――日本は国家戦略を自国で考えずに米国任せにしている…。

大塚 同盟関係であっても、米国が自国の利益を犠牲にしてまで日本を救ってくれることは有り得ない。国際政治はそんなに甘くない。日本は自らの力で国際社会を生き抜き、自国の利益を守る必要があるが、そのためには全方位外交と経済外交というコンセプトが非常に重要だ。しかし、実際は米国偏重外交のため、諸外国が「どうせ日本は米国と一緒の行動をとる」と見切っていることも日本のプレゼンス低下につながっている。日本は先進国としては動きが鈍く、自主性がなく、経済規模の割には相対的にプレゼンスが低い状態が顕著になっている。

――そんななかでの今回の日銀人事だが…。

大塚 次の日銀総裁の5年間は、このような状態の日本経済を再生するための重要な時期にあたる。舵取り役の執行部の人選としては、もっといろんな議論、多様な人材の登用について検討があってしかるべきだったのではないか。最終的に誰が総裁になるかは別にしても、選考プロセスでいろいろな名前が出てくることが人材の豊富さというイメージにつながり、海外からの評価も関心も高まる。従来からの古色蒼然とした「たすきがけ」人事に終始していては、諸外国から奇異な目で見られるばかりだ。全方位外交、経済外交、そして国際金融市場における日本のプレゼンス向上のためにも、日銀人事のみならず、政府の閣僚人事についても、国際的に活躍している民間の人材を活用すべきだ。アメリカでは財務長官、商務長官、大統領補佐官など、政府の要職にどんどん民間の人材を登用している。むしろ、それが普通である。そういうダイナミズムが日本にも必要だと思う。

――民主党は霞が関幹部の政治任用も唱えているが…。

大塚 自民党の中にも同じようなことを唱えている人はたくさんいるが、なかなか実現しない。旧態依然とした自民党と霞が関の癒着関係の中では、実現し難いようだ。次の総選挙で民主党が過半数を取れば実現できるが、簡単ではない。次の総選挙後は与党が3分の2の多数を失い、政局はより一層流動的な状況になるだろう。そういうなかで、与野党の協議の結果として政治任用システム導入に向けた動きが出てくることを期待したい。

――日本経済発展のためには何が必要か…。

大塚 産業政策や中小企業対策、何をやるにも財源が必要だ。そうした状況下、日本はあまりにも財源の使い方が硬直的と言える。政府・与党は向こう10年間に道路財源として59兆円使うと言っている。驚くべき金額だ。多額の予算を道路だけに使う硬直的な財政構造を改め、バイオやロボットといった日本のリーディング・インダストリーを育てていくための基礎投資などに向けていくべきだろう。また、過去10数年間のマクロ経済政策を振り返ると、景気の梃入れと不良債権処理の全てを基本的には金融政策に依存してきたが、そのことが異常な超低金利状態を生み出した。金利水準がこれだけ低いということは、その国の産業や企業の予想収益率、資本の期待収益率が低いということを宣言しているようなものだ。金利は2〜3%くらいが下限と考えられるが、それ以上に低下している現状を投資家が見ると、日本はそれほど予想収益率、期待収益率が低い国なのかと思ってしまうだろう。財政硬直化とマクロ経済政策の失敗、そのことが日本経済の低迷をもたらし、株価が四半世紀前と変わらないという驚くべき事態を招いている。

――発想を転換して円高政策なども考えてみては…。

大塚 賛成だ。そもそも今は著しい円安。実質実効為替レートで見るとプラザ合意と同じくらいの円安水準である。実質実効為替レートの現状を考えれば、今後は円高に進む蓋然性が高い。そうした環境を踏まえ、この際、国家として円高を指向するというはっきりとしたメッセージを出すことも一案だろう。低金利にすれば何とかなる、円安にすれば何とかなる、道路を作れば何とかなるという、20世紀後半の日本のお家芸的な固定観念、経済政策運営の考え方を変えていかなければならない。こうした転換期には、各界のリーダーには発想の転換、柔軟な思考が求められる。日銀人事も同じだ。低金利と円安と需要管理政策に慣れきった人たちを、旧態依然とした持ち回りでリーダーに選ぶ。しかも「この人しかいない」というフィクションをつくりあげ、人選を行っているようなフリをするという構図には本当にがっかりする。特定の個人が良い悪いといっているのではなく、幅広く人材を募り、いろんな議論があった結果として時代の要請に合った人を選ぶというプロセスと仕組みが日本には欠けている。今回の日銀人事の迷走ぶりを見ていると、時代の変化、環境の変化に対応できていない日本社会の現状が改めてクローズアップされたと思う。非常に残念だ。