みずほコーポレート銀行 副頭取 佐藤 康博 氏

みずほコーポレート銀行 副頭取 佐藤 康博 氏

海外進出で銀行生き残りの活路を



――先般、メリル・リンチに出資された…。

佐藤 メリルへの出資はいろいろなメリットがあるが、戦略的意義がなければ出資しない、シナジーがなければやらないというのは、一昔前の考え方だ。純投資でもやるべきだと思う。アジアでも、どこでも成長分野にはマイナリティーでもいいから出資すべきだ。それを一つの突破口にして戦略的なものを積み上げていくことはいくらでもできる。実際メリルに出資したということが伝わり、世界中の金融機関から様々なオファーを頂いている。

――業態的に、みずほコーポレートは投資銀行的な性格を持つが、それは強みだ…。

佐藤 強みであることは事実だがわれわれには国内マーケットだけでは限界もある。みずほコーポレートは基本的に上場会社を取引先としており、新規の取引先をどんどん増やしていくことは難しい。今ある取引先を深堀りしていくか、海外に進出するしかない。一種、自分で退路を断った金融機関だ。そうであるゆえに海外市場に厳しい戦いを挑んでいくしかない。2銀行制度を取っているわれわれのやり方がいいのか、三菱東京UFJ、三井住友の一行制がいいのか、どちらがいいともいえないが、われわれみずほコーポレート銀行はホールセールの戦略に特化できるし、みずほ銀行はリテールに特化できるということは、みずほFGのメリットだ。われわれとしては今後とも国際業務・投資銀行業務に注力していく方針に変わりはない。

――リスクヘッジ上、商業銀行のたくさんの預金には国家の保証がついている。そのくせ、商業銀行がサブプライムのような危険な金融商品を持つのはけしからんと言う意見もあるが…。

佐藤 銀行は大事な預金をお預かりしている以上、過度にリスクをとりすぎて大きな損失をこうむるわけにはいかない。しかし、一昔前のように預金を預かって、それを担保付きで企業に貸し出せれば、眠っていても(土日、ゴルフをしていても)金利が入ってくる、そういう間接金融の世界で食べ続けていくことはこれから難しいことははっきりしている。今は力のある企業はどんどんリストラをして、負債を減らし、借入金に依存しなくても良い体質となってきている。いまだに邦銀の企業貸出は減少しており、収益力を強化する為には、貸出金以外の運用に対しより積極的な対応が求められる状況にある。

――いわゆる邦銀の運用難だ…。

佐藤 その時に、従来の入り口の企業審査のようなことに加え、もっと高度なリスク管理の手法が必要となってくる。例えば、預金で預かったお金をファンドに投入するとか、あるいは市場で運用する。こういう企業リスクとは、全く質の違うリスクに資金を充当していくことも必要になっている。リスクのプロファイルが複雑かつ高度になってきているため、リスクに対する見方を従来のように、個別の企業を見るだけという単純なものから、マーケットリスク、流動性リスクといった、種類の違ったリスクに対応できる体制を高度化していく必要がある。こういったものを全部見通せるような、高度なリスク管理を持っている銀行だけがグローバルな競争に勝ち残ることができる時代だ。

――地銀の役割は…。

佐藤 地銀は、集めた預金の運用先を探さなければならない。一種の機関投資家的役割を担って頂くことになってくるだろう。われわれが組成するシンジケートローンやその他の運用機会に積極的に参加して頂くことによって、地銀との相互協力関係はより強固なものとなっていくだろう。

――さまざまなリスクを管理できる能力があるかないかが重要だ…。

佐藤 例えば、流動性リスク。ある企業に5年間お金を貸すとすると、これは5年間、ずっとお金を固定しなくてはいけないものなのか?それとも、いつでもマーケットで売れるものなのか、こういった要素によって、その貸し出しの評価を変えていかなくてはいけない。今回の、サブプライムローン問題を通じて、マーケットで売りたくても、マーケットがなくなってしまう事態も起こりうるということを知らされるようになったが、こういった流動性のリスクといったものはバーゼル2でも十分議論し尽くされていないリスクだ。今回初めて焦点が当たったと言っても良い。売却リスクについてのより高度なリスク管理を考えていかねばならない。また、格付会社の格付けについても、トリプルAだったものが急にシングルCにまで下がるといったことが今回起こった。格付会社に依存せず、自分の目で見て判断するリスク管理が不可欠だ。

――銀行経営は難しい…。

佐藤 今回のサブプライムローンの問題で20年近く依存してきた格付け体制、あるいは見落としてきたリクイディテイ(流動性)の問題などが明らかになった。これに今後対応していかなくてはいけない。ますますリスク管理のスキル、能力が重要になってきている。この流れに対応していける銀行は世界でもそんなに多くないはずだ。強者がどんどん強くなり、弱者がどんどん弱くなるような状況が金融界に生まれつつある。では、リスクのあるところに出ていかなければ安全かというと、それでは先細りしかない。そういう意味では非常に厳しい。よく日本の銀行はグローバルになれないと言われるが、そういう戦いに勝っていかなくてはいけないので簡単な話ではない。


――みずほコーポレート銀行が進めている国際化についてお聞かせ願いたい…。

佐藤 先述したように、われわれのフロンティアは海外にある。もちろん、国内のお取引先は一番大事なお取引先ではあるが、そのお取引先自身が、日本が人口減というようなこともあり、マーケットがどんどん縮んでいくなかで業種を問わず、海外に出ていっている。海外にオペレーションを持っている企業のGDPの成長率を計算すると、だいたい6%ぐらいだ。これに対し、日本全体のGDP成長率は2%。中堅、中小は伸びておらず、海外展開できる企業が伸びていることをこの数字は示している。我々の国際戦略は、こうした日本の企業の国際化に対し、十分なサービスを提供していくことだ。日本企業が海外でフロンティアを見つけていくプロセスをサポートすることは、日本の金融機関として、どうしても必要なファンクションだと思っている。最近は日系企業による外国企業の大型買収案件も出てきている。また進出地域についてもインドとか、ベトナム、中東といったところへの進出も盛んだ。この日本企業の国際化をフォローしていくことは、日本の金融機関として必然的である。

――進出するか、縮小するかだと…。

佐藤 もう一つ、国際化に関して重要なテーマは、これからは非日系の取引先を世界中で開拓していかなくてはならないということ。これも昔のように、どんどんお金を貸していけばいいというような話ではない。むしろ、業種のバランスといったものも配慮し、ポートフォリオ、バランスをグローバルで見ながら、非日系の取引先を攻めていくといった対応が必要だろう。

――業種の世界的なポートフォリオ化ということか…。

佐藤 その通りだ。大事な日系企業の国際展開をフォローする。もう一つはグローバルに非日系の取引先を攻めていく。そこには、まだまだ成長の余地が大いにある。地域的にはやはりアジアに注目したい。海外の展開のやり方も単純な貸し出しでは力勝負になり、あまり儲からない。例えば、アジアではインフラが大変不足している。インフラにどうやったらお金をつけられるか。あるいはベンチャー・キャピタル、プライベート・エクイティと言われるような企業全体をファイナンスするような方法をアジア地域でも拡大していくことが必要となっている。幸い、日本では銀行、証券の垣根、ファイアウォールが緩和されつつある。今後は銀行・証券が一体となってこうしたフロンティアを開拓していくことが出来るだろう。

――ラオス中央銀行がラオスに証券取引所を作るにあたり、日本政府に支援を要請した。日本政府は断ったが、韓国政府に頼んだら一週間で決断、ラオス中央銀行の職員の研修を含む支援が決定したという。こんな日本政府の対応では邦銀の海外進出は難しい…。

佐藤 その通りだと思う。例えば、インドでは今、インフラの整備が一番の問題となっている。ムンバイでさえ、1日、2回は停電する。道路も然り。政治的に見ても、中国とのバランスにおいて、日本にとって、インドとの付き合いは大事だ。そのインドが困っているのであれば、インフラ保護等のお手伝いをしてあげるというようなことにしたらいいと思う。民間がインドあるいはアジアのインフラにお金を出せるような状況かというと、リスクの点でとても出せるような状況ではないが、JBIC(国際協力銀行)の様な政府系金融機関とわれわれ民間銀行が協力してやることは可能だと思う。こうした活動を強化すれば、アジアにおける日本の役割とか、アジアにおける日本のポジションが格段に違ってくる。しかも、そこに日本が世界に誇る環境技術のような要素を入れていけば、やっぱり、日本はアジアの中で頼りになるリーダーということになる。中国に対する警戒感が他のアジア諸国の中で強まっているなか、絶好のチャンスだ。賢いやり方で環境技術を使い、日本の資金力を生かしていく、というようなことを官・民・政が協同して考えていくことがますます大事になっていると思う。