記者座談会でG7声明を解説

記者座談会でG7声明を解説

FSF、時価開示の強化を要請



――11日に開催されたG7声明のポイントをマーケットはきちんと理解できているか…。

 声明文を読んだだけでは、正確に理解することは難しいだろう。サブプライム問題を受けた金融安定化フォーラム(FSF)の報告の中で、100日以内に実行するとされた勧告を読んでみても、どんなふうに改善や強化がされるのかよく分からない。

 2つ目の項目に、「国際会計基準審議会(IASB)およびその他の基準設定機関は、オフバランス関連会社に対する会計および情報開示の基準を改善するとともに、特に市場が緊張下にある場合の金融商品の評価について、時価評価会計のガイダンスを向上させるため、迅速に行動を開始すべき」とあるが、ここでは4つのことを言っている。まず、オフバランス関連会社というのは連結、非連結の話で、SIVをどこまで連結して勘定するかということだ。そして、その連結の範囲を明確にすると同時に、ディスクローズ(開示)もきちんと行うよう求めている。後半は、所有している証券化関連商品の評価の話だ。100で買った証券化商品の値段が一体今いくらなのか、マーケットが荒れて売買が成立しないために分からないという現状においても、できる限り評価のガイダンスを向上させ、開示するよう求めている。

 連結の話は、バランスシートから完全に切り離せるのか、戻るのか、または一部だけ戻るのかという細かい関係性をはっきりさせ、仮に将来戻ることになるのであれば、それについてもしっかり開示しなさいということだ。これまでにバランスシートから外れたと思っていたものが戻ってきて、評価損が膨らんだという事例があったから、その辺をしっかり管理することはもっともだと言える。証券化商品の評価については、リスク管理の一環として、値段が分からないままにせずにできる限り評価をし、その結果を積極的に開示しなさいというわけだ。

 その通りだ。つまり、①連結、非連結の処理範囲を明確にする ②その範囲と影響を開示する ③証券化商品を可能な限り評価する ④その評価の有無を含めた内容を開示する――の4点について言及している。さらに、時価評価会計のガイダンスの向上とは具体的にどういうことかというと、現在、値段が付かなくて問題になっている会計上のレベル3の部分を指している。例えば、100で買った商品の評価を決めるに当たり、自分たちの評価は30だけど、オーバーシュートしたマーケットにおける直近の売買では20だった。またABXインデックスでは10になっているとする。売るつもりはないけれど、いくらで評価したらいいのかという時に、商品全体の値段は分からなくても、一部分の値段を算出することはできるということであれば、そのことを開示するよう求めている。不確実であることの根拠に至るまで、現状のすべてを開示しなさいということだ。

 集計不能だという事実だけではなく、値段を算出するためにどんなモデルを使っていて、そのモデルではこことここの部分は算出できるけれど、この部分は算出できませんでした。ゆえに、自分たちの評価は30だけど、20かも知れないし、10かも知れないということまでさらけ出し、マーケットの中に充満している霧を少しでも無くしていこうというわけだ。

 そうだ。明確な値段が付けられないものに対して右往左往していても始まらないから、それはそれで仕方の無いことだと割り切って、現状を丸ごと開示して、透明性を高めていこうということだ。

――3つ目の項目にある「厳格なストレス・テスト」とは何を意味するか…。

 ストレス・テストというのは、知っての通り、株価が1割下がったら自分たちの銀行のバランスシートはどうなるか、また金利が1%跳ね上がったらどうなるかということをシミュレーションをすることで、もちろんこれまでも行われていた。しかし、それはあくまでも仮定の話で、銀行の中でテストして終わりだった。ところが、サブプライム問題によって、そのシミュレーションが甘かったことが判明した。

 ストレス・テストでは、価格が下がって流動性が枯渇した時には、証券化商品の一部を売ってキャッシュを入手すればいいというように、簡単に考えていた。しかし、現実には、サブプライム問題で価格が下がって現金が必要になったから、いざ証券化商品を売ろうと思ったら、そのマーケットが消えていた。

 そうだ。ストレス・テストの前提がまるっきり甘かったわけだから、これからは、ここ半年もしくは1年の間のマーケットの推移を踏まえて、もっともっと厳しい前提を置いて、厳格なストレス・テストを実施しなさいと言っている。さらに、今までのストレス・テストはやってそれでおしまいだったが、今後はその結果を日常の業務にも反映させていこうと言っている。

 ストレス・テストを行った結果、流動性がなくなるのであれば、事前に中央銀行と話し合っておく、或いは他の銀行とバックアップラインを結んでおいて、いざとなったら助けてもらえるように前もって話をつけておく、というような手当を含めた日常のオペレーションを行っていこうというわけだ。

 ベアー・スターンズの破たんの原因になった流動性のリスク管理については、4つ目の項目にも書かれている。ベアーも自己資本は10%以上あったにも関わらず流動性がストップしてああいうことになった。やはり、資本がいくらあってもキャッシュフローが無ければ駄目だということが再認識された形で、流動性に対するリスク管理は個々の金融機関でより厳重に行っていこうということだ。

――2008年末までに実施するとされたFSFの勧告についてはどうか…。

 分かりにくかったのは、1つ目の冒頭の「バーゼルⅡの自己資本規制を適時に実施する必要」というところだ。既にバーゼルⅡは適用されているはずなのだが…。

 それは認識違いだ。現状は、バーゼルⅠからバーゼルⅡに移行する段階で、完全にバーゼルⅡに移行しているのは日本や香港など数カ国しかない。移行しつつあるのがヨーロッパで、米国や途上国はいまだにバーゼルⅠにとどまっている。

 そうだったのか。バーゼルⅠのままだったから今回のようなバブルが起きたのだな。日本のバブルとまるっきり同じことではないか。それで、欧米や途上国に対して速やかにバーゼルⅡへ移行しろと促しているわけだ。

 そうだ。バーゼルⅠでは、流動性サポートを受けた時に自己資本を積まなくてもいいというケースが多々あり、その状況下で今回のようなことが起こっている。だから、バーゼルⅡに移行することで、自己資本についてはかなり改善される。それが、オフバランス関連会社に関する所要自己資本の引き上げで、その前に書かれた複雑な仕組み商品というのは2次証券化商品のことで、これはバーゼルⅡが対象になっている。

 なるほど。バーゼルⅠからバーゼルⅡに移行することを大前提に、バーゼルⅡについても見直しをしようというのだな。

 今回のサブプライムで、日本がそれ程大きな被害を受けなかったのは、バーゼルⅡをいち早く実施して、危機管理をしっかりしていたからという見方も大きい。

 怪我の功名だな(笑)。

――格付けの役割および利用法の変化についてはどうか…。

 投資家が、格付けの利用に際しデュー・ディリジェンスを改善する必要というのは、お題目的なものだろう。

 格付会社ばかりが悪者扱いされたけれど、使用する投資家側にも判断力が必要だよ、どっちもどっちだよということだ。

 後半部分では、先般IOSCOがまとめた信用格付会社の基本行動模範に記されていたことをしっかり守っていこうと言っている。

――リスクに対する当局の対応の強化の中にある、監督当局で構成される国際的なグループに日本の金融機関は含まれるのか…。

 日本の金融機関については検討中で、これから議論を進めていくと聞いている。確実なのは、シティやUBSで、グローバルに展開していることと、サブプライムで損失が大きかったところが対象になっているようだ。

 シティを例に挙げると、東京市場の日本の担当者、ロンドン市場のイギリスの担当者をはじめとする各国の担当者が集まって、シティの現在の流動性に関しそれぞれの国における状況や問題点について常時意見交換をし、何か起こったら各国で適切な処置ができるよう、連絡を取り合いながらやっていこうということだ。

 そういった情報交換をしっかりやるよう当局が監督する。

 日本の金融機関は、グローバルな展開をしているとは言えないし、サブプライムの影響もあまり受けていないから、対象に入るかは分からないな。

 そもそも、監視下に置かれることが名誉なことかどうかも微妙なところという見方もある。