証券保管振替機構 代表取締役社長 竹内 克伸 氏

証券保管振替機構 代表取締役社長 竹内 克伸 氏

銀行業務への進出を視野に



――いよいよ09年の1月から株券電子化がスタートする…。

竹内 株券の電子化は来年の1月5日から始まるが、それ以前に今年の9月から、これまで信託銀行などが銘柄ごとに行っていた株主のデータ管理、つまり、名前、住所等の株主情報の管理をすべて当機構で行うようになり、その準備に追われている。9月の先行稼働に向け、納入されたシステムのチェックと各証券会社との接続テストが終わって、現在は、実際の仕事の流れに沿って全参加者と当機構のシステムが正しく連動しているか、業務確認テストを行っている。これらは、実際にデータを入力するので、休日に行う。概ね予定通りに進んでいるが、これらのテストが完了するまでは安心はできず、今は、大作業の真っ最中だ。

――電子化により、発行体が保振から株主情報を入手することが容易になる…。

竹内 基本的なルールとしては年に最低2回、また先般の四半期決算という流れに伴い、発行体から事前に申請を受けて、年に4回は当機構からTA(株主名簿管理人)にまとめた株主データを送る。そこで株主名簿に転記されるシステムになっていて、発行体はその名簿をもとに実務処理を行うというのが基本的なスキームだ。そのほか、少数株主の権利を行使したいという人が現れたときに、その人が本当に少数株主の資格があるのかどうかを発行体が判断するケースなどにも利用することができる。これは、情報提供請求といって、発行体から当機構に調査の依頼があれば、どの時点であっても、証券会社から株主情報を集めて整理し、発行体に送る。その逆もあって、株主の方から少数株主であることの証明を依頼されれば、同様に対応する。

――そうなると、発行体の利便性はかなり高まる…。

竹内 その通りだ。現状、信託銀行に委託している株主管理の費用として発行体が払う手数料の総額は1300億円と言われている。このコストダウン効果は大きいと見込まれる。その分、信託銀行側としては、仕事量がかなり減って人材にも余裕が出てくるため、M&Aのアドバイザリーをはじめとした新しい業務へ移行していくとみられている。

――現状の5%ルールも必要無くなるのでは…。

竹内 5%ルール自体は開示制度の問題なので、必要性については別の話になるが、最近、虚偽の報告で話題となったことを契機に、5%ルールの事実確認という点に関しては、電子化されることで、事実関係を早期に把握することが可能になるとの期待が出ているようだ。当機構としても、証券市場の公正性・透明性の向上の観点から、できるだけこれに協力していく方針である。

――これまでの電子化の歩みを振り返ってみると、最初に行ったのはCPの電子化だった…。

竹内 そう。最初がCPで、次が社債。続いて昨年の1月には投信、今年の1月にはETFと続き、最後が今回の株券の電子化だ。これをもって、約9年前に開始した、電子化を中心とした決済制度改革のアイテムはほぼ仕上がる。

――電子化に伴う決済日の短縮については…。

竹内 決済日に関しては、当初アメリカでTプラス1を目標としていたが、9.11のテロの影響でペンディングになった。しかし、Tプラス1を可能にするには、俗に言うSTPができなければならない。Tプラス1は結果であって、本質はSTPだ。このため、STPを一生懸命進めてきている。その肝心なSTPの進ちょくはどうかというと、欧米でもある程度は進んでいるけれど、それほど迅速には進んでいない。わが国では、STPのスタートである決済照合システムの利用が進み、その内容も良好で、加えて、株券電子化が実現するとSTPの環境がさらに整ってくる。国債の決済日については、現在Tプラス3だが、株式と異なり業者間取引が中心であることや非居住者の参入の割合が低いことから、国債がTプラス1の実現に最も近い商品といえるだろう。

――社債の決済期間は、電子化に伴い短縮された…。

竹内 社債については、以前は登録制でいわゆる「10日決済」だったが、ローリング決済に移行し、JBネットの創設による事務の効率化を背景に、段階的に決済期間が短縮された。一昨年には当機構で電子化されているが、Tプラス3で安定的に日々のオペレーションが行われている。そのほか、CPはTプラス2が主流で、投信も基本的にはTプラス3となっている。

――電子化に伴うコストダウン効果も期待される…。

竹内 株券が存在することで年間どのくらいの費用が掛かっているのか、証券業協会が調べたところ、年間1000億円という試算が出ている。ペーパーレスになることで、新たな仕組みを用意する経費やオペレーションの経費は掛かるとはいえ、大幅なコストダウンにつながることは間違いない。国民経済的にみても大きなコストダウンだ。

――システムの安全性は…。

竹内 これからは、株主情報という極めて重要な情報を取り扱うことになるため、システムのセキュリティには万全を尽くしている。遠隔地にバックアップセンターを置いており、データのバックアップも2重3重に管理しているので心配は無用だ。社保庁などの問題もあって投資家の方々にとっては、ここが一番肝心なところであろう。なお、当機構では、情報セキュリティの一層の向上のため、この程ISO27001の情報セキュリティ認証を取得したところである。

――有価証券決済の電子化に続く、次のテーマは…。

竹内 東京市場の地位向上を目指して、いろいろなテーマが検討され始めている。主だった先進国での決済機関の活動状況をリサーチし、わが国で取り入れていく部分などを検討している。また、世界的な証券取引市場の合従連衡を視野に、当機構についても欧米の決済機関並みの機能を持つべきだとの意見が強まっている。そして、そのひとつとして、フェールに対する対応があげられ、フェールが起りそうな時には、当機構を通じて有価証券を貸し出す仕組みについて検討を始めた。さらに、配当金等の処理についても当機構で扱っていくことを検討している。決済機関がその業務に関する資金の取扱機能を有するという形は、米国では当たり前になっている。また、欧州の決済機関についてはこの機能が市場に受け入れられている。これからも決済の効率化、合理化を追求して、資本市場の活性化に寄与していきたい。