緊急記者座談会

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けん引役の米中が大きな不透明材料に



――1〜3月期の決算が発表されて、外銀、邦銀ともに材料出尽くしといったところか…。

 確かにADSの水準をみてもかなり回復してきており、国内SBのスプレッド(国債などとの金利差)でも元の水準までは戻っていないが、3月から4月初めの水準に比べタイト化(縮小)してきている。また、国内SBが発行できる業種も、事業会社だけでなく、一頃は発行が難しかったノンバンクや投資法人債もまだわずかだが発行できるようになりつつある。

 円建外債は、さすがに米の投資銀行や欧州のサブプライム運用が表面化した銀行は難しい。しかし、その分、非サブプライムの豪州系やカナダ系の銀行は非常に良く売れており、発行額は軒並み1,000億円規模だ。日本の投資家は、サブプライムで打撃を被った年金のアクティブ系を除いて、引き続き運用難であることを反映している。そこそこ信用力があり、かつ表面利率が1.8%以上あれば、地方の投資家は喜んで買う。普段は期間が長いため、あまり買わない10年債までも買っている。

――スプレッドが縮小しても長期金利が上昇したため、その分だけ表面利率が高く魅力的な水準に仕上がっているというわけか…。

 長期金利がここまで一気に上昇すると、社債の利率は5年債で1.5%以上、10年債で1.8%以上の水準となるため、投資家にとっては買いやすい。もっとも、今からさらに大幅に長期金利が上昇するという予想が強まれば、さすがに国内投資家も購入に慎重にならざるを得ないだろう。しかし、日銀は当面、現状維持の姿勢を打ち出しており、むしろ景気の下振れリスクを警戒している。このため、少なくとも年内の短期金利は横ばいないし弱含みだ。

――しかし、4月下旬以降、長期金利は逆に上昇に転じている…。

 4月下旬からの上昇は、1〜3月期に欧米の信用不安を材料に利下げを織り込んだ反動だ。日銀は何らスタンスを変えていないのに、一部のエコノミストは4月初めの日銀短観発表の後に再び金融を緩和するといったレポートを発表したりしていた。

 相場というのは振り子のようなもので、ちょうど真ん中には止まらないものだ。1〜3月に利下げを織り込み過ぎて、4〜6月はその反動でインフレ懸念などを材料にしている。私は、1〜3月の利下げは無いと予想していたし、同様に今のインフレ懸念も騒ぎ過ぎだ。むしろ、このインフレ騒ぎの結果、景気がさらに減速する可能性があるとみており、そうなると後1〜2年間は今の短期金利の水準が続くことになる。

――ガソリンや食品などかなりの種類の生活物価が上昇しているからインフレじゃないのか…。

 中国、インド、ロシアといった新興国を含めて、景気が世界的に拡大し続けた結果、一時産品の価格が上昇していくのは当然だ。たとえ直近で欧米の景気が減速してきても、新興国経済はまだ高い成長を続けている。また、欧米の減速もせいぜい今年いっぱいとみれば、世界的なインフレが起きても不思議ではない。むしろ当然だ。日本は永らく低成長を続け、賃金も下がり続けているから、日本だけからみるとインフレはやや理解しにくい。ロシアや中国のお金持ちの生活をみれば分かるように、世界は着実にインフレ化が進んでいる。

――となると、日本がこのまま低成長を続ければ、世界経済に占める地位は確実にさらに低下する…。

 低成長が円安を誘導し、その結果、世界のインフレと相まって物価高になる。そしてそうなると、今度はいわゆる今問題になっている二極化に拍車がかかり、低所得者の生活がさらに苦しくなって、消費が低迷する。日銀はかつてデフレが深刻化する前に「良いデフレ」といって失笑をかったことがあるが、今回は悪いインフレに発展する余地がある。

――バカの一つ覚えのように、「円高が日本経済を直撃」などとは言っていられない(笑)。

 バーナンキFRB議長が警戒しているのは、まさにその悪いインフレだろう。サブプライム問題によって米経済が後退しドル安となることで、輸入物価が上昇しさらに景気が悪化するということを懸念しているとみられる。米国は周知のように世界一の借金大国だから、日本と違ってお金は逃げて行きやすい。世界一の国という信用があるからこそ今のドルの価値が保てるのであって、それがいったん信用を失えば借金取りがわんさか押し寄せて、一気に破たんするという運命を背負っている。

 確かにバーナンキFRB議長は難しい舵取りを迫られている。ドル安防止のためにはこれ以上は金利を下げられないが、一方で金融不安はまだまだくすぶっており、景気がさらに悪化する余地もあるため、さらに利下げをしたいところでもある。この点、日本は世界一のお金持ちの国であるからこそゼロ金利にできたのであり、ゼロ金利にしてもお金はパニック的には逃げて行かなかった。また、その間、日本から逃げて行ったお金は対外投資となって現在、貿易以上の黒字を生み出している。

 米FRBの利下げはかなり前倒し的に実施したという見方をすれば、当面は景気と物価を見定めながらの様子見という前向きな評価もできるだろう。しかし、これに対する市場の評価はこれまでのところあまり芳しいものではなく、4〜6月期の米銀の決算が判明したら再び利下げを迫られる可能性がある。もっとも日本でもそうであったように金融危機への対応は、金融機関で働く者の給与水準が高いだけに、その救済策は国民感情がネックになってどうしても後手に回りがちだ。

――ところで、もうひとつの世界経済の機関車役を果たしている中国はどうなんだ…。

 まずは、四川大地震で亡くなった多くの方々に追悼の意を捧げたい。そして、大地震の経済への影響はどうかというと、これは神戸の大地震でもそうであったように明らかにマイナス要因だ。多くの人々の死去、生産設備の破壊など、規模が大きければ大きいほど生産にとってはマイナスだ。ただ、より生産力が高い太平洋岸ではなかったことや、中国の成長力はまだかなり高いため、あまり声高には言ってはいけないところではあるが、むしろ経済にとっては適度な冷却効果になることも考えられる。

 レアメタルなど生産がストップすることによるインフレ懸念は強まっているが、景気継続のための上海万博も控えていることで、景気の失速といった事態にはなり難いと私も思う。しかし、四川大地震で気になることは被害の正確な情報が知らされていないとみられることだ。被害の規模が現在発表されている以上に大きければインフレのソフトランディングなんて言っていられない。また、核や放射能の問題は未知数だ。これは考え過ぎだとは思うが、万が一、チェルノブイリのような事態が起こっており、それを中国政府が発表しないで被害が拡大してしまったらどうなるのか。

 確かにチェルノブイリはソ連邦が崩壊する一因となった。また、中国食品の安全性が世界的にも問題視されているだけに、万が一そうなったら中国経済はかなり大きな打撃を受ける。そして、そうなったら日本経済への影響も大きい。やはり、中国政府はきちんと情報を公開する姿勢を確立する必要がある。共産党の一党独裁では難しいかもしれないが。

――一党独裁という点では日本も同じだ。「人の振り見て、我が振り直せ」ということかな(笑)。