サイゴン証券会長兼CEO グエン・ズィ・フン 氏

サイゴン証券会長兼CEO グエン・ズィ・フン 氏

ベトナム株は今が買い時



――ピーク時と比較して株価が大幅に下がっているが、今後の展開は…。

フン 証券市場の上がり下がりというのはベトナムだけでなく、他の証券市場でも起こりうる普通の現象だ。とはいえ、特別だったのは2006年から2007年にかけての上昇率、スピードが投資家の想像を超えていた。また、下がり方も投資家の想像をはるかに超えていた。ここにベトナムならではの特徴がある。指数だけを見ると、ブルーチップ、上場企業は投資家にとって魅力的な価格になっているはずだ。では、何が価格を決めるのか?企業の実質的な経営、それに付随する様々な指数だけでなく、やはりマクロ経済と切り離せない部分がある。このため、マクロ経済を無視するわけにはいかないが、マクロ経済には二つの大きな要因がある。ひとつはインフレ、輸出入の不均衡、すなわち貿易赤字の問題だ。現在の指数を見れば、ベトナム経済は良くない状況にあるが、様々な政策が取られているので7月あたりから、経済に明るい兆しが見えてくるのではないか。上場企業は投資家にとって魅力的に映るはずだ。まさに、このタイミングで大和証券SMBCは私たちの株を買うという決断をしてくれた。

――日本には半値八掛け二割引という言葉がある。ピーク時の三分の一になった今が買い場なのでは…。

フン 私も同じ意見だ。ベトナムはまだ、未発達の市場だ。上がる時の上がり方は激しく、下がる時はものすごい勢いで下がる。しかし、一つ一つの株式を良く見てみれば、安定的で買うべき銘柄がいくらでもある。

――マクロ経済ヘの影響について聞きたい。インフレと貿易赤字はどこかで収拾されると考えるか…。

フン そういった問題はすぐに解決するものではない。しかし、ご存知のように今年の初めくらいから、この二つの対応策が出されている。ベトナム国民が一丸となって、インフレの抑制などに協力している。それがある程度の効果を上げる時期が間もなく来ると考えている。貿易不均衡、インフレなどの問題はベトナム一国だけで解決できる問題ではない。世界経済に影響される部分がある。原油価格の高騰、建築資材の価格高騰など、私たちの手に負えない問題であるということを理解してもらいたい。ベトナムは原油と米の輸出国である。世界全体のインフレに対し影響を与えている国でもある。急速に経済が伸び、人々が急に資金を手にし、消費したこともインフレに拍車をかけた。現在、インフレの抑制策として、通貨の流通量を減らすなどの処置が取られている。ベトナム人にとってもお金を稼ぐのが難しい状況となっている。そういった状況を鑑みると、世界の経済学者たちが予想したよりも早く、インフレは収束するのではないか。

――インフレに強い株とか、インフレの時に儲かる株、あるいは貿易赤字の時に儲かる株など、経済に逆風が吹いた時に儲かる株は…。

フン そういった銘柄はある。業種でいくと、水産物や米の輸出をしている業者。収益を外貨で稼いでいる。労働力コストも低く競争力もある。ただ、企業の実態によって株価が決まると言うのはベトナムでは非常に少ない。やはり、まだベトナムでは心理的なものによって株価が決まる傾向がある。そういう流れの中で株価は非常に下がっている。この為、ベトナムのジョークがあるので紹介しよう。タバコの銘柄と抗癌薬の銘柄が一緒に上がる。ベトナムはそういう国だ。

――株価が下がったことで証券会社の経営が厳しくなったと聞いている。経営困難な証券会社を吸収合併して顧客を獲得するようなことは考えているのか…。

フン 自分たちのライバルとなる他の証券会社には売るべきものがない。たいした投資物件がないと考えている。例えば、私たちはブロカレージで20%のシェアを持っているが、それだけのシェアを持っている会社はない。トップ10といえども、7〜8%程度のシェアを持っているに過ぎない。買収となれば、その会社のポートフォリオと人材を買うことになるが、それしかないというのであれば買収する必要もない。自分自身で人を集めて会社を発展させていった方がコスト的にも安くなるという認識だ。ゆえにライバルの買収というのは考えていない。

――日本では約40年前に今のベトナムのように株が下がり、証券不況と呼ばれる時代があった。日本では不況を克服するために投資信託を大量に設定して、個人のお金を大量に証券市場に注入した歴史がある。ベトナムではどうか…。

フン どこの市場であっても、市場の状況が良かろうが悪かろうが、私たちが商品を出す時の目的の一つに、個人または小規模の投資家の資金を動員、調達することがある。投資家にとっての魅力的な商品、利益を上げられる商品を作るのは私たちの使命だと思っている。その中で流動性がきちんとあり、価格が市場に合わせて、健全な状態で変動する商品を作るのは証券会社にとっても銀行、ファンドにとっても使命であると考えている。ご指摘の点は常に考えているし、今までも、そうしたものを作ってきたという自負がある。

――株が安くなっているので、個人の資金と同時に外国の資金をベトナムの証券市場に注入しようということになっていると思うが、外人に対する投資優遇税は…。

フン 外国人投資家の資金を動員するというのは大きなテーマになっているが、税制面でベトナムは悪い状況にある訳でない。個人投資家に対してはゼロ。機関投資家に対しても0.1%しか課税されない。新しい税法もまだ適用されておらず、税制面での改善が必要とは考えていない。もしろ、為替レートの方が問題だ。これを安定させるのが大事だ。為替レートは投資を決める際の重要な要素だ。1、2日で実現することではないが、為替レートの安定は大事だと思っている。WTOに加盟した以上、他の外国と同じような投資条件を提供することが重要になってくると考えている。2006〜2007年を振り返れば、WTOに加盟したことが契機となって、外貨が一気に流入した。これがインフレの一番大きな要素になった。このため、税制の優遇措置というはキイ・イシューには成りえないのではないか。もしろ、もっと違う部分に問題があるのではないだろうか。

――我々は日本のプロ向けに情報を流している。日本の投資家に対し、何かメッセージはあるか…。

フン ベトナムは人口が多く、資源にもある程度恵まれている。そして、成長している国である。そうした好条件に恵まれながら、ベトナム経済は長い間にわたり発展することができなかった。長年にわたり戦争をしていたこと、社会主義の計画経済のような遅れた制度を長く適用していたことの二つが主な理由に挙げられる。その二つのマイナス要因も今はほぼ無くなった。現在の経済低迷は一時的なもので、中長期的には必ず発展する基本的な要素を持っているのがベトナム経済と考えている。そういった要因があったからこそ、2006年から2007年にかけてベトナムブームが起きて、その時期、私たちはたくさんの株式を発行することによって資金調達に成功した。当時はセル・サイド(売る側)にとって良い時代だったと認識している。今、経済が低迷し株価が下がっているということで、むしろこれからはバイ・サイド(買う側)にとって、有利な時代ではないかと思っている。海外の投資家にとって、非常に良い銘柄を中長期的な戦略に基づいて買うことのできる非常に良い機会だと思っている。「ぜひ、今のこうしたベトナムの経済の時期を前向きに捉えて頂きたい」、というのが、私から日本の投資家の皆様へのメッセージだ。

――サイゴン証券はどのくらいの日本人の口座を持ち、将来的にどのくらい増やしたいのか…。

フン 約1500の日本人投資家の口座を持っている。どこまで増やしたいという具体的な数値目標はないが、我々の認識として、日本という市場は私たちにとって魅力的な市場だ。個人が持っている資産はとても高い。主に銀行に預けられている預金残高が大きいし、金利も低い。そういった意味でも可能性があるというのが1つ。また、文化的にもベトナムと日本は非常に似通っている。ベトナムが透明性など投資に必要な条件を兼ね備えるようになれば、必ず日本の投資家はベトナムに来るだろうと私たちは確信している。そういうことで、大和証券SMBCは私たちの株を買った。大和を通し、もっとたくさんの日本人投資家を得られれば良いと思っている。

――日本の投資家が問題視するベトナム株式市場の透明性については…。

フン サイゴン証券自体の透明性はベトナムの証券市場の中でも一番高い。しかし、市場全体ではまだ日本人投資家を満足させるレベルにはなっていないのだろう。このため、我々が特に必要だと思っているのが市場全体の透明性を向上させることだ。日本の人たちは投資する際にも慎重で、非常に質の高いものにしか投資しない。だから、自分たちが市場の中でも一番いいものを見つけ提供していきたい。