記者座談会

記者座談会

資産効果を生かした経済対策を



――政府がようやく景気対策に乗り出すと言い始めている…。

 市場には、景気対策に対する期待感はあまり無い。政府が景気に対してようやく関心を持ったことは評価できるが、さりとて何か効果のある対策をまとめられるとは市場は見ていない。今の財政事情では財政出動は難しいし、0.5%の無担翌日物金利では、利下げも難しい。

 下手に財政出動して、国債残高をさらに増やすよりは、何もしないでいてくれた方が良いと思っている市場関係者も多い。総合体育館などのいわゆる箱物建設の経済効果は作った時だけで、それ以降は維持費や修繕費がかかるため、経済効果はむしろマイナスだ。あの3つの本四架橋に代表されるように、日本にはマイナス効果を生み続けている公共投資が山ほどある。

 箱物だって必要不可欠の範囲なら良いが、よく言われるように地方で一番立派な建物が大赤字を抱えている県庁舎や市役所の建物という、お寒いケースばかりだ。

 さすがに今さら箱物といった発想は国民の合意を得られないだろうが、利権の味を覚えたらなかなか忘れられないのが世の常だ。なんだか補正予算で8兆円といった数字も出てきているようだが、実体は利権のための対策がほとんどで、本当の経済効果はその十分の一も無いのではないか。

 十分の一か否かは解らないが、減税以外のかなりのところは省庁の利益が絡んでいると見るのが良いだろう。逆に、そのような負い目で見られたくないのなら、入札をすべて完全入札にすることや、省庁並びに関連団体に民間並みの財務諸表および開示義務違反の罰則規定を導入すべきだろう。

 加えて、財務省主計局に査定の能力をつけさせるため、その業界のプロを入れて人員を大増強し、国交省、防衛省、厚労省などの言いなりにならないようにすれば良い。日本の国家予算は大体、何でも3割ぐらい水増し請求されているから、水増し分だけ削減しただけでも一年間で約15兆円ぐらい削減できる。政府与党のかけ声である「無駄ゼロ」ではなくて、いかに予算を効率的に使うかということが肝心だ。

 それは理想だが、今の自民党や霞ヶ関では無理だろう(笑)。「お金は天から降ってくる、降ってこなければ国債を増発すれば良い」ぐらいな感覚しかなくて、「節約」や「合理化」、「コストパフォーマンス」といった言葉を彼らから聞いたことがない。

 とはいえ民主党が政権をとっても大差はないんじゃないか(笑)。民主党は労働組合に支えられている面もあるから、公共やセクターの合理化が出来るか否かはあやしいところだ。郵政の民営化を反対して国民から総スカンを食った党が公務員改革を出来るとは思えない。

――ところで、景気対策を行うとしたら何か良い手は…。

 さきほども言ったが、やるとしたら減税だろう。ブッシュ政権も10兆円規模の大型減税を実施して、4〜6月期のGDPのマイナスを回避した。一方、日本とEUはサブプライムローン問題の当事者では無いのにGDPがマイナスに転落した。これによって米政府の評価が見直され、国際資金が再びドルに回帰した。やはり米政府は機動的だと。

 減税よりはひたすら構造改革を行って、世界一割高の公共セクターのコストを削減し、日本経済の全体のコストを下げるべきだと思う。そうすれば自然に民間に資金が回って、減税と同じ効果を生む。例えば、分かり易く言えば、15兆円分コストを削減できれば、その分、税金を納めなくていい事になるため、15兆円分、消費が活発になり、企業ももうかる。

 それが出来れば良いが、今の政治体制では現実と理想のギャップが大きすぎる(笑)。このため、世界的な不況に突入しつつあるということを勘案すると、やはり大型減税あたりが無難なところではないか。大型減税となると国債発行をともなうが、箱物建設のように利権で抜かれたり建設後の維持費といった必要はない。それに即効性がある。

 確かに、日本の景気対策は景気が回復した時に実施するという笑い話のようなことをしばしやっている。今回の局面も、米景気の回復は来年の春から夏にかけてと予想されているため、正に笑い話になる可能性がある。いわるゆ「ツーレイト」になると(笑)。

 「ツーレイト」ばかりか、今の政府与党の話を聞いていると「ツーリトル」だろう(笑)。まあしかし、箱物やつまらぬ対策をやられて財政赤字を拡大させるよりは「ツーリトル」のほうがましだが。

――金融政策の方は…。

 発動余地は全くない(笑)。再び日本でも金融不安が起きれば別だが、周知の通り日本の金融機関は欧米に比べサブプライムローンの被害はかなり少ない。また、日本企業のキャッシュフローは潤沢だ。さらに、物価がこれだけ上昇していることから、インフレにも気を配らなければいけない。

 金融政策より、金融行政の方をなんとかすべきだろう。いくら金利を低くしても肝心の金融機関がお金を貸さなければ意味がない。そして金融機関がお金を貸せるようになるには、不良債権の発生を恐れるあまり金融機関を厳しく縛っている金融庁の監督を見直すべきだろう。「あつものに懲りてなますを吹く」ことをやっていては、世界に誇る日本の金融資産は生かされない。金融機関に自由と責任を負わせるべきだろう。

 良いことを言うね。しかし、それも現実と理想のギャップは大きいな(笑)。今の邦銀でリスクをとって自主的に行動できる胆力のあるところは一握りだろう。皆横並びでローリスク・ローリターンをひたすら追っている。これに対し欧米の金融機関は確かにサブプライムローンで大きな痛手を受けたが、もともとハイリターンで回復は早いし、実際、どんどん資金が市場から集まっている。それはそれだけ市場から高い評価を受けていると言うことだ。

――損失の規模は小さくてもローリターンでは、その分回復に時間が掛かるし、投資家からの資本も集まりにくい。その意味では、同じ金融庁でも配当に対する減税を打ち出していることは評価できるのではないか…。

 しかし、やるのなら配当の二重課税自体を止めるとか、配当と譲渡益課税を通算するとか、もっと抜本的なことを、この際やってもらいたい。マスコミも株価対策は金持ち対策といった馬鹿な報道姿勢から早く脱出して、資産効果や年金運用の収益向上といったことに目を向けるべきだ。その辺でも米国とは月とスッポンの違いがある。

 いずれにせよ、金融政策および行政はもっと資産効果に着目すべきだろう。資産は金持ちのものといった社会主義的な発想は早く止めて、資産効果を生かした、コストの低い経済対策を行うべきだ。

――それも理想と現実のギャップは大きいのではないか(笑)。しかし、この際、少しは前進してもらいたいね。