記者座談会

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米不良債権処理はこれからが正念場



――米国が公的資金による不良債権処理策を議会に提出した…。

 さすが米国、といった感じだな。やることが速い。日本が10年間かけて行ったことを1年余りで機動的に行っている。しかも、規模が大きい。不良債権の買い取りプログラムだけでも75兆円、AIGへの支援などを合わせると200兆円規模の対策を半年余りの間に打ち出している。

 何をやっても遅い日本とは、月とスッポンの差だ(笑)。しかも、日本の場合はまず、責任論から入り、誰が悪いんだという議論が行われ、どうすれば良いという方法論は後回しになる。さらに、新たな対策を採ると、どの省に責任が行き、どの省が得をするかといった議論が水面下で行われ、その分、肝腎な対策の重要度は低くなる。加えて、米政府首脳のように、市場関係者だった人間が指揮しているのとは違い、市場をあまり知らない役人や、世の中をよく知らない二世議員が決定するから、無駄が多い(笑)。

 米国の処理スピードの速さは日本の金融不安に学んだところも多いと思う。実際、彼らは日本の当時の関係者によくヒアリングをしている。しかし、それを勘案しても機動性が際立っている。やはり、米国がいくら赤字を垂れ流しても、米国からはお金は逃げていかない。貿易などでいくら稼いでも、その分だけお金が海外に逃げていくどこかの国とは大違いだ(笑)。

 少し米国を褒めすぎじゃないの(笑)。確かに今までのところ、リーマンの破たんやAIGの危機などあれだけの金融危機が起きてもドルとNY株価はそれほど下落していない。むしろ直接的には関係が無い分、日本株の方が売られている感じだ。しかし、問題はこれからだ。200兆円規模の対策によって金融不安は一息つくだろうが、実体経済が回復するのはその後、やや時間がかかる。そうすると、その分、住宅価格は下落を続ける可能性があるため、新たな不良債権が発生する。

 確かに、これからがむしろ正念場ではないか。今までの200兆円規模の対策は、日本が採った対策を反映させているから失敗といったことにはならないだろうが、日本と違うのは、米国は世界から借金をしている国だという点だ。加えて、米国は不良債権を世界中にまき散らしているため、米国の輸入減少による世界経済の減速作用に、世界的な信用収縮という作用が相乗して米国にお金が入らなくなる恐れがある。

 そのためにも前週、FRBと日欧の中央銀行が通貨スワップ協定を組んでドルの流動性を確保した。米政府は日本とは違い、自国からお金が逃げていかないことと、株価を下落させないようにすることに対しては必死に取り組む。お金が逃げていくと米国経済は破たんしてしまうし、株価が下落すると政府の支持率は低下する。何せ、株式は米国全体の財源だ。その点でも、株式をお金持ちの資産だと時代遅れなことを言っている日本とは大きく違う(笑)。

 確か外電で報道されていたが、マケイン米大統領候補が「私が大統領だったら、今のSECの委員長は首にする」と言ったという。それほど株式市場は大事だということだ。同時に、これも日本とは大きく違うことだが、国民から選出された政治家が役人を首に出来るという当たり前の統治が米国では行われているということだ。日本では、おかしな防衛次官を防衛大臣が首にしようとしても出来ない。むしろ防衛大臣が辞任してしまって、その後におかしな防衛次官の不正が発覚してようやく防衛次官が首になるというお粗末ぶりだ(笑)。

――また、そうしたことをきちんと取り上げないマスメディアもさらにお粗末だ…。

 きょうは日本のお粗末ぶりを列挙し、笑い飛ばす記者座談会かい(笑)。とまれ、日本のパブリックセクターの統治を変えていかなければ、日本の地盤沈下はなお治まらないだろう。一方で、日本の例を当てはめれば、米の住宅価格の下落はまだ2〜3年ぐらいは続くのではないか。不良債権処理はこれから始まるわけで、その間、投げ売りが行われる。同時に、個人消費は盛り上がり難いし、金融機関の体力は低下しているため、設備投資も行い難い。

 やはり、米国だけでなく、欧州でも同様なことが起きているため、いくら中国やインドの成長がけん引しても世界経済は当面、低成長が続くのではないか。加えて、原油価格がさらに値下がりして、1バレル30〜40ドルに暴落するという予想もある。そうなると今度は産油国のバブルが弾けるから、世界中のバブルが一気に弾けて世界恐慌といったシナリオになる可能性は否定できなくなる。

 そうならないように色々な対策を採ってきているのだが、唯一、今の局面でバブル崩壊といった危機にさらされていない日本がどんな協力をするのか。上手に協力すれば再び日本の地位を向上できるが、下手をすれば湾岸戦争の2兆円と同様に負担だけさせられて後でバカにされる。今の日本のパブリックセクターの能力を勘案すると、後者になる可能性が高く、かなり心配だ。

 日本の金融不安の時に、カラ売り規制などさんざん日本を批判したくせに、今は自分たちがわれ先にカラ売り規制や公的資金の注入を行っている。助けるより先に、自由な市場を規制でゆがめるべきではないといった当時の欧米の主張はどこに行ったのかとからかいたい(笑)。日本だけをバカにする欧米の論法や、日本のマスコミの自虐的な姿勢はうんざりだ。ともあれ、対岸の火事で収まらないことは確かだ。ここは、今度は日本が得をするような手助けを行わなければ、われわれの富はさらに失われるだろう。

――具体策は…。

 市場価格は上がる時もあれば下がる時もある。一番値が下がった時や、相手が一番困っている時に効果的に助けることが出来るかがポイントだ。この点、これまでに米の金融機関に投資した政府系ファンドは大損しているため、ここからが日本の出番だ。底値で買って高値で売ることが出来れば日本の富は増すし、底値の時が人間が一番悲観的になる時期だから、喜ばれもする。ただし、間違っても80年代のように米国を乗っ取るといった姿勢を出してはいけない。その反動が必ず来る。

 その意味で、民主党の大久保参議院議員などが唱えている100兆円の外貨準備を郵貯銀行にスワップして、その資産を活用するなどの方法も検討したら良い。外準は100兆円の短国でファンディングしているため、本来ならば3分の1ぐらいに減らすべきだが、世界経済の緊急性を勘案すると思い切った対策を検討することも必要だろう。

 私はやはり外準は減額すべきだと思う。底値で買うのは唯一体力がある日本の金融機関が民間として行うべきで、そうするように日本の金融庁がハッパを掛けるのが筋だろう。金融庁は、羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹いてばかりいないで、金融機関に自由と責任の元、儲けることを支持すべきだ。

――まあ、いずれにしても今の金融情勢は、お金のある者にとっては千載一遇のチャンスだろう。日本頑張れ(笑)。