世界の投機が大幅縮小へ

世界の投機が大幅縮小へ

緊急記者座談会



――REIT初となるニューシティ・レジデンス投資法人(NCR)の破たんに続き、大和生命保険も破たんした…。

 いずれは来るだろうと思っていたがNCRは意外とノーマークだった。アーバンコーポ、リプラスなど新興の不動産流動化会社がバタバタと倒産しているが、REITはLTV(物件価値に対する負債額の比率)が低いので、ちょっと驚きだ。格付けも確かシングルAのままだった。

 本質的にはREITは家賃収入だが、銀行から短期でお金を借り始めると、結局は多くの投資家が損失を被ったSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)と同じということだ。持っている資産のマーケット・バリュー(売却価値)をきちんと見ないと格付会社でも正確な評価はできなかったというわけだ。

 ところで、NCRは9月30日に期限の来る融資の一部を同26日に銀行に返済している。民事再生法上、理屈の上からは否認される可能性もある。銀行の名前も出ていたから、あれはあれで大変なことになるかもしれない。
GサックスとMスタンレーが分岐点に

 今回の金融不安再燃のきっかけはリーマンの破たんだったわけだが、本質的な分岐点は、MスタンレーとGサックスが銀行持ち株会社に変わるところだったのではないか。代表的な投資銀行が銀行にならざるを得なかったというところで完全なパラダイム・シフトが起きてしまった。米国中心に発展してきた金融システムが完全に崩壊した。

 投資銀行という業態の存在意義は、究極的なことをいえば、投機の人のために資金を提供することだ。投機をやると儲かるので、みんなそっちの方に行ってしまったし、実際に銀行も投資銀行も存在自体が投機家になっていた。その代表であるGサックスやMスタンレーが銀行に変わることは、投機にお金を貸すビジネスは今後は難しいという風に、あの段階で変わったといって良い。

――投機資金を出しているところをマーケットは許さなくなってきたということか…。

 その前段がベアーとJPモルガンで起きた、投資銀行を商業銀行が吸収することだったのだろうし、バンカメによるメリルの買収といえる。

 投資銀行はもっと自己資本などを規制して小さくするべきだ。また、先物のレバレッジも小さくすべきだろう。

 確かに、株式のブローカー業務は絶対必要で、それ自体がなくなるとは全く思わないが、あまりにもレバレッジを効かせた取引をやりすぎた。「それがいけないのか?」といわれると個人的にはそんなに悪いことだとは思わないが、今後はそれを許すマーケットではないと思う。

 レバレッジの掛け値を何倍にするかという議論は日本株の暴落の時から在り、先物のレバレッジが大きすぎるから、それに釣られて株価が暴落するというような意見も、当時の大証批判の中心にあった。

――まだまだ始まったばかりだ…。

 日本は、一部の不動産会社は危ないものの、海外で起きていることは関係ないと思っている節があった。しかし、それも一連の倒産騒動で変わってきている。金融危機が日本型に変異し、より強力になっている。リートをやっつけ、生保をやっつけ、これからは連鎖で新興の不動産流動化系会社がバタバタ倒れることも考えられるだろう。上場金融機関がいくつか破たんしても決して不思議ではない。

 日本でも、金融不安への対処策をしっかり検討しなくてはいけない。基本的にここは一回、世界的にすべての銀行を国有化しても仕方がないだろう。そうしないことには金融不安の連鎖は止まらないのではないか。例えば、アイスランドの例を見れば分かるように、一国だけで保証してしまうと、今度はそれが国のクレジットに影響してしまうので、結局世界中で保証しないと駄目だということだ。

地銀に大きな運用損も

 日本の銀行の例では、新生銀行がこの前行ったヒポ・レアル・エステート銀行への出資でいうと、あれも買ったときから値段が6分の1になっている。また、この前まではサブプライムの証券化が問題だったのが、これだけいろいろな会社がバタバタと傾き始めると、普通の銘柄を組み込んでいるCLO(ローン担保証券)やCDO(債務担保証券)までめちゃくちゃなことになっていて、それが地銀に多大な影響を与えている。

 地銀が運用しているCDOをみると、大体アイスランドの銀行やリーマン、AIGにはモノラインが入っていたりする。当時みんな「AA」や「A」の格付けだったし、モノラインに至っては「AAA」であったわけで絶対そんなのつぶれないと思って入っていたわけだ。

 地銀は運用難から一生懸命そういった商品を買っていた。やっぱり国債だけで運用していても、どうしても金利が低いし。しかし結局、今回それがあだになった。

 この9月末の決算でどれくらいの数字が出てくるのかが大きな注目点だが、相当悲惨なことになっているだろう。実際に地銀劣後債の流通価格は銘柄によっては50円へと大幅に値崩れしている。

 カウプシング銀行は9日時点で5円…。銀行債が100円に対して5円とは一体全体…。
流動性リスクと信用収縮が相乗
 それでも格付けはシングルAだった。SIVのときもそうだったが、流動性リスクというものは格付会社には絶対に読めない。だから格付会社が悪かったというより、その限界を分からずに格付けを使っていた方にも責任はある。あとは、その想像すら絶するような速さで問題が駆け巡ったことだろう。実際にここ2〜3週間の動きはものすごく、昔、日本で10年間かかって起きたことが、わずか1カ月で起きている。

 流動性リスクと信用収縮の早さが相乗して信用を急速に落としているということだろう。

 日本の地域金融機関の保有しているCDOを見ると、ここ3週間くらいで急激に損が出ているはずだ。そういったものに直面して、危機感を覚え始め、ずいぶんと認識が変わったのではないか。

――地銀が運用しているCDOの種類は?

 よく買われているのはビスポーク型シンセティックCDOだ。これはクレジット・デリバリィを用いてシンセティック型、つまり、実際には資産を保有せずに保証料で稼ぐタイプなのだが、100銘柄ぐらいを裏付けに、その中でシングルAだけを作る、トリプルBだけを作るという商品が一世を風靡した。100銘柄のうち5銘柄デフォルトしなければ大丈夫という銘柄や、7銘柄以上デフォルトしなければ大丈夫といった仕組みになっている。しかし、その5銘柄のうち3銘柄デフォルトしただけで、既に値段は暴落しているわけだ。しかも、大抵の銘柄にはフォードかフォード・モータークレジット、GMかGMACが入っている。さらに、リーマン、メリル、Mスタンレーが入っていることも多い。アイスランドの銀行銘柄も頻繁に見られる。AIG関連に至っては、AIGだけでなく、その子会社の保険会社や航空機リース会社もあり、これらが同じCDOに組み込まれていることもある。加えて、モノラインだって作成当時はAAAだったため入っているものもたくさんあるし、おまけに、モノラインの持ち株会社まで入っている銘柄もある。そうなると、5銘柄や10銘柄はデフォルト状態であっても不思議でないCDOも多いはずだ。

 もともとヘッジ・ファンドの運用が最も多いといわれている地銀はピンチだ。さらに地元のゼネコン、REIT、不動産投資に資金を貸してしまっていたらアウトだろう。

――ここのところ、もう一つ言われているのが、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の取り引きで、ディスクローズされていないだけに不安が不安を呼んでいる…。

 日本国内に関してはCDSの単独取り引きはあまり多くなく、それ自体は心配しなくてもいいのだろうが、むしろCDSに関してはシンセティックCDOの材料になっているのでその部分が怖い。

――ところで株価の底値メドは…。

 NYダウは5000ドルになる覚悟でいなければならないだろう。リセッションに加え資産デフレも絶対やってくる。あとは程度の問題だけだ。

 日本は一度これを経験しているが、今回は早さが半端ではない。日本が10年掛けてじわじわ経験してきたことが、今回は半年ほどで同じ規模のことが起きるかもしれない。逆に言えば、反発も早いかもしれない。

 どこで反転するのかという問題ではないのではないか。つまり、先ほどの話でも出たが、MスタンレーとGサックスが銀行に変わった時点で完全に世の中が変わった。あれは本当の意味でビッグバンであり、キリスト教などで言う「天地創造」に匹敵する大事件だと思っている。つまり、例えば銀行が投機家にお金を貸さなくなるという現実。まずその現実に向けて調整が起こっていると考えれば、成長率も大幅に低下するだろうし、その分、ダウも抑えられる。

 そうなると、株は下がっても急反発することは考えにくいと…。株式市場で資金調達して世の中に流動性を供給していく、あるいは設備投資の一部になっていくという展開は考えにくいということか?
レバレッジを掛け過ぎの調整過程に
 株式市場の機能は当然残ると思うが、要は、そこにお金が入って行きにくくなるということだ。結局レバレッジを掛けずに20%の運用利回りを得るためには株価が下がるしかない。会社に関していうと、ワーキング・キャピタルが必要で設備投資の資金も借り入れなければどうしようもないため、そこに対しての資金は当然銀行も貸すだろう。一方、例えばLBOや不動産ファンドが、借り入れができない、あるいは借りられる金額が少なくなることによって、どのくらい物の値段が下がっていくのか誰にも分からない。たぶん、今それを調整中で、その間にレバレッジを掛けすぎた人たちがもっと破たんしなくてはならない状況にある。

 その火種となったサブプライムは世の中から色々批判を受け、膿を出し切ったかどうかは分からないが、次は商業担保ローンであり、あるいは株であり、レバレッジド・ローンであり、次から次へと損のエリアが移って拡大している。金融機関の連鎖というのはすごいものだ。

 そうしたことを考えると、しばらく株価は上がらんな。成長率や企業の収益力低下を勘案すると、NYダウはピークの3分の1の5000ドル、あるいはピークの7掛けの3分の1の3000ドルあたりまで下落しても不思議ではない。3000ドルの底値を付けてから、ようやく反発するといった展開も考えられる。
日本株は政府の無策で下落
 日本の株価もNYダウに連れて下げ、5000円ぐらいまで下落することは十分に考えられる。日本企業自体はキャッシュフローも厚く、会社の財務体質も比較的健全だが、日本株は外国人の売買比率が高く、また円高によって時価総額の大きい輸出企業の業績が下方修正されるためだ。

 それになんといっても日本政府が無策だからな(笑)。こんなに株価が下がっても、政府は日銀保有株の売却中止と自社株買いの緩和、証券優遇税制の延長ぐらいしかやらない。いずれも、やらないよりは良いが、やったところで大した下支えにはならない対策ばかりだ。

 それにはまったく同感だ(笑)。

――そうした点では、やはり日本に比べて欧米の政府のスピードは格段に速い…。

 日本で起きたことを見て、相当みんなが学んでいたといえるだろう。日本の住専問題までさかのぼってみてみると、当時は公的資金注入をためらっているうちにシステム全体が疲弊してしまい、システムをとことん疲弊させたときに始めて破たんが出始めた。あそこまでみんなが疲弊する前に、とりあえず公的資金を投入すればパニックを解消できることはわかっていた。英国などは典型で、RBSやロイズTSBがすぐにどうなるというタイミングではなく、経済に影響を与える前に公的資金を注入した。

――公的資金が投入されると投機的な動きができない…。

 日本でも金融不安以降は、銀行が株や土地を買ってはいけない、あるいはそこに融資をしないことで、デフレになってしまった。この先世界が同じよう流れになってしまうと、株がなかなか上がらず当然デフレとなる展開は明らかだ。米国の銀行も日本の今の銀行と同じように低収益になってしまう。一つの考え方として銀行が国有化されると、結局国債を買えばいいという議論になる。

日本はアセアンなどに投資

 最近、日本の場合はアセアンにはお金を流し込んで産業を興すというような流れになっている。それが加速するのではないか。そして、低成長になる欧米に対し、まだまだ成長率を維持できるアジア経済を背景に、日本経済もある程度の成長を遂げることができるとみている。

 それも考えられるが、アジアは投機的な経済となっている国もある。製造業の人たちが中国に進出すること自体は投機的ではないにしても、やはり外貨がどんどん入ってきている投機的な国であれば、ここからディレバレッジが起こり、経済が不安定になっていくので、その辺りを考えると実はなかなかそこへも行きづらいのではないか。

 ここにきて原油価格も下がってきているから、デフレが加速することも考えられるだろう。デフレ時代に生き抜くには、預金することが一番の成金策だ(笑)。

 デフレといっても正しい投機がないと経済は活性化しないので、リスクを取りたい人はきちんとリスクを取って投資できるために、商業銀行、投資銀行、仲介業者といった業態の大再編が必要になるだろう。(了)