参議院議員 財政金融委員会理事 大久保 勉 氏

参議院議員 財政金融委員会理事 大久保 勉 氏

民意を問うて早急な経済対策を



――景気対策が世界の課題となっている…。

大久保 先日出席した欧州社会党の大会には米国のオバマ次期大統領の政権に入るような人達が来ていた。テキサス大学教授のガルブレイス氏は今回の金融危機を1933年と比較し、「1929年の世界恐慌では1933年のニューディール政策で一旦は景気も良くなったが、本格的に回復したのは1940年代の戦争が起きてからだ」と言っていた。一回崩れた金融システムは回復するのに相当厳しいということだ。1997〜1998年のアジア通貨危機や日本のバブル崩壊であれば局地戦だが、今回は日米欧全世界で後退期に入っているため、非常に長期間不況が続く可能性が高い。それに対して欧米では21世紀型ニューディール政策、いわゆる景気梃入れ策としての財政出動を行おうとしている。金融だけでは足りないため、一部、昔のような公共事業化と、あとは地球温暖化等に公的資金を使い景気を浮揚し、結果としてそれが将来的に人類にとってプラスになるような方向に向かって、米国と欧州で手を携えようとしている。もはや戦争が起きてその結果景気が回復することが許される時代ではないため、何らかの有効需要刺激策を実行しなくてはならないのだが、このような21世紀においては地球環境投資と教育投資がますます重要となる。欧州社会党では「ピープルズ・ファースト」といって、公共事業も人々の生活に関するような、将来のための地球環境、人の教育、社会保障に投資をするという形で需要を喚起しようとしている。これは、国民の生活が一番と主張する、我々民主党と非常に近い考えだ。また、米国でもオバマ新政権がグリーン・ニューディール政策としてインフラに投資をするという話も出ているが、会議での話によると、恐らく環境問題に大きな投資を行うだろうということだった。そして、もし環境関連産業が戦略産業となる場合には、米国と欧州主導で環境技術や排出権取引の世界標準規格が作られる可能性がある。その場合、そこに日本の企業が入り込もうとした時には既得権益が出来上がり、参入が困難になるという可能性もある。日本も不況、不況と言っているだけではなく、次の戦略的な投資が必要だ。

――世界的な金融システムの再編については…。

大久保 現在、米国と英国はどちらかといえば金融規制に反対している。一方、大陸欧州では適度な金融に関する規制が必要と考え、アングロサクソン型の自由放任資本主義に反対している。日本は欧州と手を結ぶべきだという意見もあり、欧州社会党大会会場で、欧州議会の通貨金融委員会(ECON)のベレ委員長と立ち話をした。来年4月の英国での金融サミット以降にきちんと日欧で話を進めていくのがいいのではないかとのことであった。というのは、ワシントンで開催されたG20の金融サミットでは色々な行動計画が発表されているが、内実はまだほとんど詰まっておらず、来春までには方向感は出ないだろう。

――次の金融システムに対する具体的なイメージは全く出ていないと…。

大久保 これまでの議論は過去の延長線だ。しかし現実はもっと大きな問題があって、金融規制の前に景気を持ち直さなければならない。そのためには、金融機関に対して二度とこのようなことを起こさないように締め上げるよりも、規制は若干弱めてでも金融機関を元気にして、最終的に経済を元気にするという方向をとらなければならない。しかし、そんな中において日本がIMFに10兆円の資金を貸し付けることや、世界銀行と一緒に3000億ドルのファンドを作ることに関しては、ヨーロッパの人達はほとんど誰も知らなかったことには驚いた。このため、そういった面で日本のプレゼンスが上がっているとは考えにくい。

――内政においても、補正予算もあげられない内閣ではしょうがない…。

大久保 事実上、市場も見切っているのではないか。そういう意味では麻生内閣は崩壊直前だ。ただ、悪いことに崩壊しそうだから解散が出来ない。ということは来年9月11日の任期満了まで与党自民党政権が残り、選挙は10月の中旬になる可能性も高くなってきている。その間の1年弱が政治の空白になってしまう。本来であればすぐに解散して民意を問い、選挙によって正当性を裏打ちされた政権が強力な経済政策を推進していくべきだろう。

――日本はサブプライムではあまり被害がなかったが、経済政策の遅れによって日本市場が一番駄目になる可能性も出ている…。

大久保 日経平均は40数パーセント下げて、米ダウが36パーセントの下落。もちろん日本の株式市場にはまだ流動性があることから、米国のヘッジファンドが現金化するために日本株を売却しているという見方もあるが、日本経済がもう少し強ければ、そんなに日経平均も下がらなかったはずだ。逆に言えば、外国人の売りを吸収出来ないほど、この十数年間で日本の証券市場は弱体化している可能性があるということだ。金融機能強化法も実際に施行されるのは来年2月頃だ。また、2月に公的資金を投入できたとしてもそれは銀行に資本注入する時期であって、そこから先、中小企業に資金が順調に流れていくかどうかはわからない。そういった意味では金融機能強化法に即効性はなく、むしろ預金保険法102条でメガバンクや大手地銀を中心に、一斉に予防的な公的資本注入を行ったほうが、信用収縮に対する即効性が高かったのではないのか。また緊急経済対策としては中小企業貸しのため保証協会の公的保証枠を増やすのは当然だろう。また、外国為替資金特別会計の預金総額約1000億ドルのうち、現在、外銀にオーバーナイトで預金している700億ドルを、その半分でも国際協力銀行(JBIC)に貸し出せば良い。そしてJBICが日系企業の海外現地法人に貸し出せば、海外の現地法人の資金繰りがプラスになる。国内に関しては、政策投資銀行(DBJ)が財投融資特別会計より長期低利資金を借り入れ、その資金見合いにトヨタやホンダのような大企業に関係子会社、取引中小企業支援を条件として長期低利資金の融資をおこなう制度を作るべきである。また同様に総合商社にも低利融資を行い、商社金融を通じて中小企業融資を促進したり、また大手製造業の場合、1次下請けや2次下請けに資金を融通させる、など、製造業もしくは商社経由でお金を回していくようにすれば、即効性のあるお金の流れを作り出すことが出来るだろう。

――日銀だけが奮闘しているような今の状態では、危機を乗り越えるのは難しい…。

大久保 いわゆるリスクフリーの金利はほとんどゼロ金利になっているが、クレジット・スプレッドは大幅に広がっているのが、現在の日本の金融の特徴である。企業、特に中小企業に資金を融通するためには、その信用リスクは誰かがとらなければならない。それを銀行に引き受けさせようとしても、銀行は自己資本の問題で融資出来ない、あるいは自己資本はあっても将来、融資の格付が劣化することを恐れて積極的に融資を行うことが出来ないでいる銀行も多い。また十分に資金や資本はあっても、取引先の日々の資金繰りがよく解らないので中小企業の融資に躊躇している銀行も多いと聞く。もしそうであれば系列会社との日々の取引や資金のやりとりを通じてこれらの中小企業をよく理解している自動車会社や他の製造企業、大手商社などに直接資金を出してあげたほうが即効性はある。

――今はホンダなどでもスプレッドが広がり過ぎていて、国内で社債を発行したくても出来ない状態だ…。

大久保 常識的に考えて、有り得ない状況だ。ホンダが駄目だということは、ホンダの納入先は全部駄目だということだ。日銀にホンダのCPを買わせるという方法もあるが、あまり日銀だけにしわ寄せをさせると通貨価値が安定しない可能性もある。やはり、JBICやDBJや商工中金を使い、あるいは公的資金を銀行に直入して銀行経由で資金を流すなど、使える政策は全部使うべきだろう。

――現金を出さずに、米国のように政府保証制度をもっと利用する方法もある…。

大久保 今、起こっていることは市場の失敗であり、これまでの民営化や市場化路線の再検討が必要となろう。特に政策投資銀行の民営化が全て良かったのか、政策金融公庫の合併がうまく機能しているのか、また、郵貯の民営化についてはもっと頭を冷やして、本来の金融機能はどうするか再度検証すべきだろう。いずれにしても麻生内閣は解散総選挙により早く民意を問うて、その後、早急に経済対策を打ち出さなければ、大変なことになるのではないか。(了)