新春サブプライム座談会

新春サブプライム座談会

金融業、原始に回帰も



――昨年末は金融危機の影響が実体経済にまで及んだが、今年の金融機関経営の見通しは…。

 100年に1度の金融危機と言われるなか、市場関係者の間では何が起こるか分からない未来を想像しても仕方ないという声も上がっている。100年前と言えば、つまり1909年で実際のところは比較対象がなく、その頃の何が参考になるというわけでもない。

 そうなってくると、日計り商いで目先のことに反応するというのが妥当なやり方とも言える。

 しかし、それで果たして戦略的な動きが取れるのか、いささか疑問だ。

 分かることといえば、相場はなくならないということか(笑)。

 しかし、金融業というもののあり方という点では、正直、先行きは不透明といえるだろう。ブローカー業務自体は歴史もあるし、それ自体がなくなることはないだろうが、それ以外の、例えばインベストメントバンク業界はこれからどうなるのか、あるいは銀行は今後どういった人たちにお金を貸していけばいいのかという部分などについては不透明感が強い。

 投機にお金を貸さないというのが、いつまで続くのかよく分からない。

 信用収縮が進んで、今は投機ではないところにまでお金を貸さないという現象さえも出てきている。比較的健全な国内社債市場ですらA格企業の発行がストップしている。

――今後、市場が正常化すれば、投機的なものに再び融資がなされるのか…。

 企業向けであれば、運転資金の融資というのは残るだろう。一方、設備資金に関しても、有用な設備に関するものであれば可能だろう。しかし、例えば不動産などの転売を目的とした人たちにお金を貸す時代が再び来るのかという点については、相当難しいのではないだろうか。そういった意味での正常化はちょっと考えにくい。

A 広い意味では証券化商品全般、狭いところではプライベートエクイティや不動産ファンドといったところは難しいな。

 そうだ。彼らは、そもそも30年でお金を返そうとは思っていない。つまり、売却することによって、返済資金を捻出しようというモデルに金融機関が再び融資をするようになるとは考えにくい。

 これからはキャッシュフローを生んで、そのキャッシュフローで利払いが出来るだけではなく、税金を払ったうえできちんと元本も返済していける見込みのあるものに融資が限定されていくということか。

 だとすると、少なくとも今後数年の間はキャッシュフローの充実した企業しか生き残っていけない。あとは、そもそもお金を借りなくてもいいという企業だ。

 お金が借りられなくなるだけとはいえ、そうなると、例えば今まで不動産の利回りが3%とか4%とかでいいと言っていた人たち、彼らはお金を借りることでレバレッジをかけて20%にしていたからそれが出来ていたのだが、お金を借りられなければ不動産の値段は利回りが20%になるまで下がるということが起きてくるだろう。

 今起きていることが本当に100年に1度なのだとすると、100年間かけて築き上げてきたものを全部ひっくり返そうとしている可能性があるから10年前や20年前を考えても仕方ない。むしろ、アメリカが今のような近代金融工学国になる前の時代というのはどうだったのだろうと考え、そういう時代の金融業界に戻ることになる。

 シティバンクは原始的な元の金貸し業に戻るというわけだな。

 そうだ。元の金貸し業に戻ることで銀行は回復する。しかし、その他の部分については、どこまでどうなるのか今はまだ見えないということに尽きる。

――サブプライムがらみの証券化商品はほぼ底値が見えたと言われるが、不動産や商業用不動産などの証券化商品の底値は…。

 まだまだこれから下落するだろう。底値の半分も見えてないとの見方もされている。ここにきて米や豪州では不動産融資で大型のデフォルトが出始めたが、これからまだまだ大型破たんが出てくるとも指摘される。CMBSの価格も下落し続けているようだ。

 不動産もそうだが、いわゆるCDOも危ないと言われている。少し前にソフトバンクが持っているCDOであと1銘柄デフォルトしたら吹っ飛ぶというような報道がされていたが、あれと同じような仕組みのものを多くの金融機関が保有している。

 もし、それらのCDOがデフォルトすれば、かなりの損失が出る。その結果、金融機関の決算はまたまた下方修正ということもあり得る。

 今の状態では基本的に時価評価したくても出来ない。今後の実体経済いかんで時限爆弾を抱えているというわけだ。

 サブプライムはそもそも貸してはいけない人たちに貸しているというのが根っこにあるから、それに投資したこと自体が間違っているという見方がされるが、投資適格の会社が100社集まっているCDOに投資してはいけないと思える人はなかなかいない。ところが、そういった会社は格付会社が決めた基準の中で最悪のポートフォリオを作るので、今回のような投資適格会社が危なくなる状態になったときに突然弱くなる。例えば、最悪のケースでは、フォードとフォードモータークレジットとGMとGMACとクライスラーが全部入っているようなCDOがあったりする。この前までAAAだったモノラインが入っている可能性だって否定できない。

 シティ、Mスタンレー、Gサックスが入ってというケースになると、そのCDOの時価はボロボロだ。

――投資適格銘柄のCDOの方が怖いと…。

 今後デフォルトが増えていくであろうから、怖いのは組成当時に投資適格だった銘柄を裏付けにしているCDOだ。これから米もしくは全世界の景気悪化によってどのくらい損失が出てくるかというところはかなり怖い。また、もともと投資適格なので、運用利益が少ないなど間違いの余地が少ない。一方、レバレッジドローンと呼ばれる投機的な格付けの会社向けの融資が証券化されたCLOについては、投機的格付けの会社の方が景気の影響も受けるし、デフォルト率は上がってきているものの、そもそも中身が良くないことは承知のうえということもあって、運用利益が大きいなど間違える余地が相応にある。なので、今回のような過去に類をみないショックが起きてくると、耐えられる誤差が少ない仕組みの方が怖い。

 なるほど。そうなると今年は、投資適格企業を参照しているCDOを持った多くの金融機関が新たな損失を計上しなければならない年になるのだな。

――不動産、CDOなど世界中の金融資産がそんな状態のなか、日本だけが無事でいられるわけがない…。

 日本は世界一の資産国で、足元のキャッシュフローは豊かだが、何もしなければ巡り巡って損失だけを被るということか。

 そうだな。そこで、日本の預金者のお金をどうするかというと、ひとつ考えられるのは景気も悪いし、こうなったら財政赤字を出しまくって、国が個人から借金をしまくる。しかし、公共工事を行っても政治家や役人OBの中間搾取にあうだけだから、海外に行かざるを得ない。とはいえ、海外の投資先ってどこがあるって話になったときに、先進国はどこも同じ状態だし、BRICsもボロボロになった。こうなるとASEANだろう。

 日本はお金があるのにそのお金の持って行き場がないというのもお粗末な話だ。

 本四架橋のように使わない橋を作って、その後の維持費が膨大にかかるというようなことをやるくらいなら、ASEANに道路を作って優良企業をどんどん誘致していくほうがよっぽど有効だ。

――一方、米国では金融再編の動きが進んでいる…。

 メリルも銀行の傘下に入り、GサックスとMスタンレーも銀行持株会社になった。

 何が起きても驚かないというところもあるが、再編のシナリオとしてGサックスとMスタンレーが一緒になることは非現実的な話ではない。また、Gサックス、Mスタンレー、シティあたりがJPモルガンと合併するか、もしくはウエルズ・ファーゴと合併するかと言う話もあるだろう。一方で、AIG以外あまり話題にならないが、米国では保険会社もかなりひどい状態になっているので、保険会社の再編がどういう形で起きていくのかを併せて注目していかなければならない。

 コングロマリット化するとは思えないが、大きなところで、ウエルズ・ファーゴ、JPモルガン、シティ、バンカメ、Gサックス、Mスタンレー、少し離れたところでアメックス、GEキャピタルなどがどういうふうに反応していくのかは興味深い。

 日本のように大きな銀行は3つくらいになる可能性も十分あるだろう。GサックスとMスタンレーが合併することがあれば、野村のような形で1社、いわゆる銀行系ではないところが出来てくるのではないか。基本的にはそちらの方向で収束していくような気がしている。

――日本ではどういう動きが予想されるか…。

 足元では農中が問題になっているのは周知の通りだが、今後の評価損の計上いかんでまだ1兆円くらいの損が出るのではないかと市場で観測されている。

 農中は、銀行と違って預金保険法の対象ではないうえに、金融機能強化法で公的資金を注入するにもやや無理がある感は否めない。そうなると、新たな立法を含めた再編といった可能性もあるのではないか。

 日興シティについては、売却しない方針が繰り返し伝えられているが…。

 しかし、シティが本気で日本のリテールを継続したがっているのかと疑問視する向きは多い。継続したいことはしたいのであろうが、公的資金の入った会社が海外で積極的にインベストメント・バンキング業務をやるというのもどうかという指摘もある。

 3大銀行についてはこれからまだ損失は増えるであろうが、これ以上の再編はないとの見方が多い。

 メガバンクに関しては、規模と比較すれば不良債権もそれ程出ないし、CDOも恐らくやっていないと言われている。強いて言えば、住信は、いわゆる農中みたいなクレジット投資やファンド投資をしていたので損失が拡大するとの観測もある。また、体力に見合っていない融資先がいきなり駄目になった時の怖さでいうと、不動産がらみの地銀が危ないだろう。

 あとは、一般的に市場で言われているのはオリックスか。

 そうだな。オリックスは外部負債への依存という点で欧米の金融機関に近いと言われているし、銀行のように公的資金が注入できる法律の背景もない。また、投資をしている不動産などの値下がりがこれから本格化することを勘案すると、今後は相当厳しいだろう。SBIも同じかな。

 さらに、新興の不動産流動化業者が今年はバタバタ潰れ、不動産市況がますます悪化するであろうから、直接の投資も含め、関与がどれだけあるかということもポイントになってくるだろう。

――今年も不動産がらみの倒産ラッシュは続くというわけか。われわれも気を引き締めていかなければいけないな。