全国信用協同組合連合会 理事長 小山 嘉昭 氏

全国信用協同組合連合会 理事長 小山 嘉昭 氏

今こそ内需中心へ転換の好機


――金融不安の中、全国信用協同組合連合会(以下、全信組連)の対応は…。

小山 金融が世界的にこれだけ危機的な状態にある中で、我々もそれに対して戦っている。しかし、相対的に堅実な資産運用を行ってきているため、我々はまだ凌いでいるほうだと思っている。デリバティブや証券化商品については殆ど運用しておらず、国債中心できちんとギャップを管理した運用を行っているため、大きな痛手も被ることなくここまで来た。これは全信組連の伝統で、信念を持ってやってきていることだ。やはり162の信用組合から大切なお金を預かっているため、堅実な運用をしなくてはならないという責任感がある。そして現在のような危機局面においては、これが大変な強みとなっている。

――外貨建ての運用比率は…。

小山 従来から為替のリスクはあまり取っておらず、外貨建ては今はほぼゼロだ。ほぼ全て円建てで運用している。発行体が何であろうと、結局、円建てであれば日本のマーケットが存在する。サムライ債でデフォルトしてしまったところもあり、それはかなりの金額となったが、我々はその損失を補うだけの安定したものを他に持っている。国債の比率は現在かなり落ちてきたが、それでも4割以上はある。株は非常に少なく、機関投資家の性格から言えば超堅実だ。

――利幅が少ないことに対する批判などは…。

小山 全信組連の国内運用での利ざやはそんなに悪くない。海外での運用を行っていないため、運用利回りが低く見える。もちろん堅実を旨に分散投資を行っているため、運用担当者は非常に苦労している。一時は担当者も海外で運用する機関投資家の利幅の多さをうらやましいと思ったこともあるようだが、しかし、国内でもやれば出来るということが結果として現れている。


――今、銀行などでは資本増強という流れになっているが…。

小山 全信組連でも1月末で349億円の資本増強をした。我々の規模から言えばこれでかなり資本が補充されたことになり、その結果、現在の自己資本比率は15〜16%となった。資本増強はタイミングを誤ると「いよいよお金がなくなってきたのか」と思われるが、今はむしろ、資本を増強するというのが世の中で支持されるということがあるため、予防的に手を打った訳だ。資本増強は出来る時にやらないと、後ろ向きになった時には集めにくくなる。 差し迫った状況ではなかったが、資本増強のタイミングとして今回はいいチャンスだったし、こうした時期の資本調達がうまくいったことは、業界の結束力の強さを示していると思う。

――協同組織としての立場が強みに…。

小山 信用組合の基盤は相互扶助だ。資本主義の強欲主義としての側面が批判されている現在の世の中で、協同で助け合うという正反対の理論は、今、ますます評価されてきていると思う。そういうものが価値を持ち始めたのだろう。我々は営利を目的とした法人ではないため、地域への貢献や組合員という構成員への貢献などを第一に考えている。そういうところから独特の展開がある。採算性などで揺さぶりをかけられて、資本主義が非常に成熟しつつある時にはややそういったものをまねしなくてはならないのではないかという懸念もあったが、今は逆に協同組織として自信をもって歩き始めている。

――米国では、強欲主義が金融危機を生んだ…。

小山 この金融危機がどこまで続くのかわからないが、私にはどうも多分に心理的なものがありすぎるように思える。ルーズベルト元大統領が大恐慌のときに「一番恐れなければならないのは、恐れる心そのものだ。」 と言っていたが、現在の日本においても、その恐れる心を取り除きさえすれば、この危機的な状況が今後さらに長引くようなことはないのではないか。どれだけ悪くなるのか、そういう危機の深刻化を考えるより、どうすれば立ち直れるかということを探り当て、自信を持って進んでいくのが一番早いと思う。まずは1億2千万人の巨大な経済圏を利用することを考えるべきだろう。そもそも日本の内需等はまだ潜在的に手をつけられていないところが非常に多い。これまでは輸出が日本経済を引っ張ってきた訳だが、今はこのパラダイムが崩れたと考えなければならない。そして、今こそ日本が内需中心に変わるいい機会だと思う。円が相当強くなってきていることからも、日本経済への信認がそれなりにあると言えるだろう。


――しかし、未だに「円高になると悲鳴が上がる」という論調がマスメディアで目立つ…。

小山 外需、輸出主導で経済発展することが一番と信じきっていたのが今までの日本だ。しかし、輸入を生かしながら貿易を立国している国もある。それは欧州を見ていればわかるが、日本にもふんだんにその余地はある。日本の輸出は大手30社グループくらいがほとんど独占している。輸出産業やグローバル企業というものは儲かれば海外に投資をするというサイクルであるため、国内にお金が落ちない。それはそれで、そういう企業があってもいいのだが、基本としては国内できちんと立っていける産業構造にしなくてはいけない。内需はその国の豊かさをあらわすものと言える。

――アジア経済のGDPは減速しても5%くらいのプラスは維持されるとの見方もある。日本の輸出産業はさらにアジアにシフトしていくのではないか…。

小山 そういう見解をデカップリング論という言葉でひとくくりにするのは良くないと思う。私はこれまで世界四十数カ国を訪ねたが、結論として茫洋と広がる世界経済の可能性の大きさを感じている。日本の水準をどんどん追い越していく国が出てくるだろう。というのは、日本では携帯電話にたどり着くまで有線電話の設置などいろいろな経過や資本を投下してきたが、例えばルーマニアなどの国ではそういった設備投資をすることなしに始めから携帯を手にしている。これが「後発の利益」だ。経済の発展は途中過程を省くと早い。どの国でも「いい暮らしがしたい」という思いから共稼ぎは世界中であたりまえになり、子供もそういった両親の姿を見て、さらにいい生活を望んでいく。このサイクルが新興国を始め世界中で回りだしている。ここ数年は欧米経済を中心に世界経済は景気停滞の道を辿らざるを得ないが、そのままということはなく、新興国を中心に再び大きな経済発展をしていくのではないか。

――全信組連の新たな展開は…。

小山 我々は国内産業、つまり内需の前線に立って貢献している企業のために力を注いでいる。今は地域が非常に疲弊しているため、特に地域産業の育成に貢献したいと考えている。地方経済の活性化のためには、やはり国から地方へ税源を移さなくてはならない。地方が自主財源として相当の部分を持たないと、本当に住民が望む公共支出は出来ない。またそのために、地方議会が住民の負託を受け、もっと身近な政治活動をしなくてはならない。かつて江戸時代は地方分権だったのが、明治時代に中央集権となり、戦後さらに中央集権が強まった。それがやや困難に直面して、いまは混沌としている状態だが、それを切り替えていかなければならない。今後、地方の分権というものが本当の意味で根付いていかなければならないし、そのチャンスはあると思う。(了)