金融庁 総務企画局長 内藤 純一 氏

金融庁 総務企画局長 内藤 純一 氏

混乱なく期末を乗り越えへ


――米国発の金融危機により投資銀行業務の見直し論が強まっている…。

内藤 そもそも、シティやバンカメといった商業銀行が大きなリスクをとる投資銀行業務をしていたことに問題がある。AIGにしても保険会社の枠を越えたデリバティブ業務に乗り出したのが実質的な破綻の原因だ。結局、米国では投資銀行やモーゲージバンクに対する規制が緩かったのが大きな問題につながったといえる。サブプライムの問題もそこから起きた。ただ、全面的に規制をかければいいというわけでもない。規制の見直しは中長期的には必要かもしれないが、今のように足元が厳しい中だと、さらに事態を悪化させないよう注意する必要がある。また、ヘッジファンドに規制を課すといった国際議論がされているが、ヘッジファンドだけを悪者にするのはどうかと思う。登録制などは必要だが、ヘッジファンドだけが原因ではなくモーゲージバンクや保険などにも広く、かつ的確な規制を検討する必要がある。またCDSという便利なデリバティブ商品を使ったがために、かえって金融システムを不安定化させてしまった。


――金融システムに対する信用を取り戻すためには…。

内藤 震源地である欧米の金融機関が非常に傷んでいるので、まず不良債権を取り除く必要がある。持っているといつまでも損失処理を終了できず、2次ロス、3次ロスが出てくるため、信用不安を取り除くことはできない。その後に良質な資本を注入して、米国経済の底力を回復させるということではないか。米がそうしないと日本のマーケットもなかなか良くならない。市場は今やグローバル化しているので、日本国内だけで政策を打っても効果は限定的だ。日本の場合は、どちらかと言えば、金融部門が傷んでいるわけでなく、輸出産業が米国の影響を受けて実体経済が悪くなったところから始まっている。10年前の金融危機後は、欧米の成長力に支えられて外需主導で回復できたが、今回は様相が違う。従って、現在求められているのは景気対策と共に企業への資金繰り支援ということになるのではないか。中央銀行を中心に資金繰り対策をきちんとしていくべきだ。

――商業銀行が再評価されているが…。

内藤 商業銀行はデリバティブをやったり証券化商品に手を出したりせず、純粋に融資だけやるべきとの案もあるが、今の時代はそんなに単純なものではなくなっている。シティが典型例だが、どうしてもビジネスチャンスには飛びついてしまうものだ。好況時には利益が出るので、不動産や証券化商品などいわゆるハイリスク・ハイリターンの商品に融資をしてしまったりする。商業銀行と投資銀行を分断するという規制は一つのアイデアだが非常に難しく、あまり現実的ではない。それよりもこれまで規制のなかったヘッジファンドに開示を求めたり、証券化商品の情報を収集分析して透明性を高めたりして、市場で取引する者や取引される商品についてのリスクをきちんと認識することのほうが先決だ。


――BIS規制にも1と2があり、規制の非対称性が元凶だとも言われているが…。

内藤 日本はバーゼル2を導入していたため今回は最小限の傷で済んだとも言われているが、バーゼル2に仮に米国の銀行が入っていたとしてもこういう問題は程度の差はあれ、起きていたのではないか。というのは、今回の問題は銀行セクターのみならず、銀行規制の体制とならないセクターでも起こっているからだ。この為の対応策としては、一次及び二次の証券化商品にかかるトレーサビリティ(商品内容の追跡可能性)の問題ともあわせ、商品内容の開示や取引参加者のリスク管理・清算・決済の安全性向上などに努めることによって市場の安定性を高める必要があろう。

――米国を含め、ほぼ全てが銀行系証券になってしまったが証券会社のセーフティネットについては…。

内藤 中小企業のための緊急信用保証、大企業・中堅企業向けの日銀・政投銀の対策などが次々と打たれることによって、日本の金融機関の資金繰りはかなり落ち着いてきた。これを今後、更に強化していけば、マネーはうまくまわるのではないか。これが重要な問題の処方箋であって、資金詰まりを起こしたから、あるいは経営危機を迎えたから、ユニバーサルバンク制度にするなどという、制度的見直しは特に考えていない。米国では、ゴールドマンやモルガン・スタンレーがマーケットから十分な資金を取れなくなったので銀行持ち株会社になったが、日本の証券会社はもともと日銀との窓口を持っている。また、最近では、国会で審議中の産活法改正案において、証券会社等への必要な出資も排除されないと理解している。


――期末対策は万全か…。

内藤 これまで、財務省や日銀と協力しながら種々の対策を講じてきた。例えば、金融機能強化法の積極的な活用や、緊急保証を踏まえたリスク・ウェイトの見直し、銀行等保有株式取得機構による株式買い取りの再開などを行った。直近でも、自己株取得の緩和と空売り規制を延長する一方で、企業会計審議会ではゴーイング・コンサーンの前提に関する注記について国際的な整合性を図る観点からの見直しも開始した。これらにより、今期末に関しては、大きな混乱なく乗り越えることができるものではないか。もちろん、今後、仮に何か大きな変動が生じた場合には、それに機動的に対応していくつもりだ。