参議院議員 大塚 耕平 氏

参議院議員 大塚 耕平 氏

円建て米国債発行など推奨を


――金融危機発生後、2回の金融サミットを終え、今後の動きは…。

大塚 微妙な局面だと思う。リーマンショック後の昨年11月、そして今年4月2日の金融サミットで決まったことは、協調して財政出動と金融緩和を行うということだ。国際協調自体は正しい対応だが、もともと今回の金融危機、世界同時不況は、過度の財政出動とそれを支援するための過度の金融緩和に依存した金融資本主義の行き詰まりの結果だ。それにもかかわらず、その対策がまた財政出動と金融緩和では、これが有効に効果を発揮するかどうかよく分からない。誰も確信はないだろう。しかし、他に手段はないというのがG20の結論であり、対策が奏効するか、あるいは効果が出ずに金融危機と不況が深まるのか、微妙な局面だと思う。

――金融サミットにおける各国の姿勢をどのように評価するか…。

大塚 世界経済の枠組みとして、金融資本主義という基本的方向を維持するのか、または少し舵を切って修正するのかという点で、欧州大陸諸国と英米の間で考えに差があった。また、財政出動に関してはドイツ等が慎重姿勢を示し、中国とロシアは金融資本主義の前提にあるドル基軸通貨体制に明確に疑義を呈した。インドや新興国はIMFや世銀における発言力向上を求め、結果として新興国向けの1兆ドルの資金支援を引き出した。金融サミットは一定の成果を上げた一方で、交渉過程での各国の利害対立は激しく、その中で日本の存在感が希薄なのが気になる。今後の展開は過去半年間とは異なる様相となる可能性もあり、日本はよく考えて行動しなければならない。日本の主張は米国追随で独自性や主体性に欠けることから、諸外国はあまり関心を抱いていない。最終的には日米関係を重視して日米協調を尊重すべきであったとしても、交渉過程においては日本独自の自己主張をすべきである。

――具体的に日本が自己主張すべきことは…。

大塚 例えば財政出動を求められても、日本が世界最悪の財政赤字国だということをきちんと主張しなければならない。米国は当初G20各国にGDP対比2%の財政出動を求めたが、欧州諸国の抵抗もあって最終的には総額5兆ドルの財政出動目標で妥協した。もっとも、金融サミットのこうした交渉の一方で、米国自身は今年の予算教書でプライマリーバランスの赤字をオバマ大統領1期目の任期中に半減させることを明言している。また、米国財務省幹部は債務残高対GDP比の目標値をEU基準の60%にすることを公言し、自らは財政再建に取り組んでいる。日本も財政規律維持に言及したうえで、可能な範囲で財政出動に協力するという交渉姿勢を基本とすべきであろう。さらに、ドル基軸通貨体制に対する問題提起も中国に先を越されているのは残念だ。円建て米国債発行などを推奨し、過度の円高対策と円の国際化に資する自己主張をすべきだ。ドルだけに依存することは世界経済を不安定化させるリスクが高まっており、そういうことを率直に意思表示しなくてはならない局面に入ってきたと思う。

――金融対策、経済対策についての民主党と自民党の考え方に違いはあるか…。

大塚 民主党はリーマンショック後にいち早く金融対策チームを立ち上げ、去る4月8日に第4弾の対策を発表した。自民党と民主党は結果的には同じような対策を想定しつつも、そこに至るプロセスでは微妙な違いがある。国際交渉の過程における自己主張のあり方がその一例だ。また、実体経済への対策、つまり財政出動については想定している中身に違いがある。例えば、自民党の案には整備新幹線や道路のミッシングリンクなどの公共事業が必ず入ってくるが、民主党では優先度が低い。日本のGDPギャップは輸出減少が主因であり、公共工事では輸出企業の業績悪化や離職者や関係企業の状況を好転させることはできない。従来型の公共工事はかえって地方経済を疲弊させるリスクさえある。民主党は、公共事業よりも、雇用対策や中小企業の資金繰り対策に財源を投入する方が優先度が高いと考えている。また、贈与税についての認識も異なる。自民党は1400兆円の金融資産を活用するために贈与税軽減を主張しているが、そもそも1400兆円には将来の保険給付金債権等も入っており、実際のキャッシュが存在しているわけではない。さらに、国民が金融資産を使わないのは病気になった時の生活や老後が不安だからであり、そうした実情を鑑みると、贈与税軽減よりも、医療・介護費用の控除制度拡大や老年者控除復活など、将来不安を軽減する措置の方が有効だと考えている。要するに、公共事業の位置づけや国民の行動インセンティブに対する見方に違いがあるということだ。国民の「安心感」「満足度」「幸福感」を倍増させるような対策こそが重要と考えている。


――今後の株価をどのように見ているか…。

大塚 先日の金融サミットでの合意内容等を材料にして、日経平均が一時的に9000円台を回復したことは喜ばしい。しかし、株式市場を巡る基本的な構造や背景が変わったわけではなく、楽観はできない。むしろ、今後は年度末の融資をつないだ銀行が貸出回収に動いたり、決算資金を手当てできない企業が出てくることが予想される。厳しい決算発表も続くことから、ゴールデンウィーク明けから6月にかけて、株価はもう一度厳しい局面を迎える可能性がある。その時に備えて、先の銀行等保有株式取得機構復活を目指した法案採決でも、買入対象資産拡大を提唱した附帯決議をつけた。先週自民党が発表した追加経済対策にそうした内容が含まれていることから、内容を精査したうえで、問題がなければ前向きに対応していきたい。

――国内的には6月にかけて厳しい状況が予想されるということだが、世界的には…。

大塚 オバマ政権の経済政策の効果が4〜6月期に現れるかどうかがポイントだ。はっきりした効果が現れなければ厳しい展開となり、世界経済は秋口に2番底に直面することも考えられる。内外のエコノミスト予想の大勢は、4〜6月期の米国成長率に回復基調が見られれば、それ以降、欧州や日本に波及していく姿を想定しているようだ。また、個人的には日本は米国に2四半期遅れて回復基調が顕現化すると予想しており、米国の4〜6月期が低迷すると、日本は今年あるいは今年度一杯マイナス成長が続く可能性が高い。その場合には、世界経済も秋口の2番底に直面し、今年末あるいは来年3月末は非常に厳しい局面になるだろう。そういう展開にならないように最善を尽くすとともに、万が一悲観的な予想が現実のものとなった場合に備え、その際の衝撃を少しでも和らげられる対策を今から講じておきたい。

――財務省、金融庁、日銀は様々な金融対策を打ち出してきているが、その評価は…。

大塚 財源余力は企業の資金繰り対策と雇用対策に集中投下することが重要と考えている。企業金融が目詰まりする場合には、日銀や政策投資銀行が前例に囚われずに対処しなければならない。関係当局はそうした方向で相応の対策を講じていると思う。日銀は従来の常識に拘らずに随分と非伝統的金融政策の領域に足を踏み込んでいるが、それ自体は現在の経済情勢を考えるとやむを得ないことだ。とは言え、非伝統的金融政策によって日銀のバランスシートが毀損しないように、政府保証をつけることも検討すべきだ。日銀の財務状況が悪化すれば、結果的に財政や通貨に対する信認が低下し、日本経済にとっては大きなダメージとなる。そうした事態を回避する努力をしなければならない。(了)